ボラト (ジョチ家)

ボラト・ハン（生年不詳 - 1410年）は、ジョチ・ウルス（キプチャク・ハン国）のハンの一人です。バトゥ家の断絶後、ジョチの十三男トカ・テムルの子孫であるノムカン王家から現れました。具体的には、トカ・テムルの孫であるノムカンを始祖とする家系に属し、テムル・クトルクの子として生まれています。

生涯

ボラトは、ジョチ・ウルスで大きな影響力を持っていたマングト部のエディゲによって擁立された傀儡ハンでした。当時のジョチ・ウルスは、トクタミシュの没落後、エディゲが実権を握り、複数のハンを擁立・廃位させる状況にありました。

ボラトの家系は、元々オルダ・ウルスでテムル・ベクがハンに即位したことに始まります。しかし、テムル・ベクはトクタミシュに敗れて亡くなり、トクタミシュ自身もティムールとの対立によって没落しました。その後、エディゲが台頭し、テムル・ベクの妹の子であるテムル・クトルクを擁立してバトゥ・ウルスの大部分を支配しました。

テムル・クトルクの死後、エディゲは従兄弟のシャディ・ベクを擁立しましたが、シャディ・ベクがエディゲを排斥しようとしたため、エディゲによって殺害されました。そして、シャディ・ベクの後、エディゲによって擁立されたのがボラト・ハンでした。

記録によれば、ボラト・ハンはヒジュラ暦812年（1409年 - 1410年）にティムール朝のシャー・ルフの下に使者を派遣しています。しかし、翌年のヒジュラ暦813年（1410年 - 1411年）に息子を残さず急逝したため、ハン位は弟のテムル・ハンに移りました。

トカ・テムル系ノムカン王家

ボラト・ハンは、以下の系図に連なります。

ジョチ
トカ・テムル
キン・テムル
アバイ
ノムカン
クトルク・テムル
テムル・ベク・ハン
テムル・クトルク・ハン
ボラト・ハン
テムル・ハン
クチュク・ムハンマド
マフムード・ハン ⇒ アストラハン・ハン国
アフマド・ハン ⇒ 大オルダ
クトル・ベク
シャディ・ベク・ハン

参考文献

赤坂恒明『ジュチ裔諸政権史の研究』（風間書房、2005年）
赤坂恒明「ペルシア語・チャガタイ語諸史料に見えるモンゴル王統系譜とロシア」『北西ユーラシアの歴史空間』（北海道大学出版会、2016年）
川口琢司「キプチャク草原とロシア」『岩波講座世界歴史11』（岩波書店、1997年）
川口琢司「ジョチ・ウルスにおけるコンクラト部族」『ポストモンゴル期におけるアジア諸帝国に関する総合的研究』（2002年）
坂井弘紀「ノガイ・オルダの創始者エディゲの生涯」『和光大学表現学部紀要』（第8号、2007年）

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