ボルジアの間

ボルジアの間：バチカンの歴史と芸術が息づく空間

ボルジアの間（Appartamento Borgia）は、バチカン宮殿の2階に位置する14の部屋からなる一連の空間です。この場所は、かつて教皇アレクサンデル6世（ロドリーゴ・ボルジア）の私的な居室として使用されていました。現在では、その歴史的な価値と美しいフレスコ画により、多くの人々を魅了する場所となっています。

歴史

15世紀後半、アレクサンデル6世は、自身の住居としてボルジアの間を整備しました。彼は、イタリアの画家ピントゥリッキオことベット・ベルナルディーノに内装のフレスコ画制作を依頼し、1492年から1494年にかけて、中世の博物学的な知識、キリスト教の終末論、そしてボルジア家の系譜を組み合わせた独特の図像が描かれました。アレクサンデル6世の死後、この部屋は教皇ユリウス2世の親族などに使用されましたが、次第に使われなくなり、長い間空き部屋となっていたのです。

19世紀末になると、この空間は再び光を浴びることになります。部屋そのものや内部に施された美術作品が展示されるようになり、一般に公開されました。現在では、バチカン美術館の一部として、貴重な文化遺産として保存されています。

フレスコ画

ボルジアの間の壁面や天井には、ピントゥリッキオによって描かれた数々のフレスコ画があります。漆喰のレリーフも施されており、空間全体が芸術作品として構成されています。主要な5つの部屋には、以下のテーマに基づいたフレスコ画が描かれています。

受胎告知、キリストの降誕、東方三博士の礼拝、キリストの復活
聖カタリナや聖アントニウスなど、聖人たちの生涯を描いた場面
自由七科を象徴する音楽や数論などの寓意画
豪華なアラベスク模様が施された4枚の絵画
* 惑星、1年の各月、その他の象徴的な図像

これらの絵画は、単なる装飾ではなく、当時の教養や信仰、そしてボルジア家の権威を象徴するものでした。また、6番目の部屋は、後にペリーノ・デル・ヴァーガによって描き直されています。

主な部屋

ボルジアの間は、以下の5つの部屋を中心に構成されています。

1. 巫女の間
2. 使徒信条の間
3. 自由七学芸の間
4. 諸聖人の間
5. 奥儀の間

これらの部屋は、それぞれが異なるテーマを持ち、フレスコ画を通じて物語を語っています。アレクサンデル6世の死後、ボルジア家は衰退し、その強権的な政治姿勢から反感を買ったため、ボルジアの間はほとんど顧みられなくなってしまいました。

現在

1889年、教皇レオ13世はボルジアの間を修復し、一般公開しました。現在、ほとんどの部屋はバチカン近代宗教画コレクションの展示室として使用されています。このコレクションには、ポール・ゴーギャン、マルク・シャガール、パウル・クレー、ワシリー・カンディンスキーなど、著名な画家の作品が含まれており、宗教画の新しい側面を提示しています。

ボルジアの間は、歴史と芸術が交錯する場所です。かつて教皇の居室であったこの空間は、今や美術愛好家や歴史に関心を持つ人々にとって、欠かせない場所となっています。フレスコ画の美しさやその背後にある歴史的背景に触れることで、訪れる人々は深い感動を覚えることでしょう。

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