ポリネシアン (競走馬)

ポリネシアン：奇跡の復活劇と偉大な血統の父

1940年代、アメリカ競馬界を席巻した競走馬、ポリネシアン。その名は、現代競馬史に燦然と輝くネイティヴダンサーという、世界的な大種牡馬の父として、今なお語り継がれている。

1944年4月、ポリネシアンはピムリコ競馬場でデビュー。しかし、間もなく深刻な病気に見舞われ、激しい痛みで身動きさえ困難になる事態に陥る。予断を許さない状況が続いたが、ある日、スズメバチの襲撃という、思わぬ出来事が転機となった。刺された直後、驚くべきことにポリネシアンの体調は急回復。8月には見事復帰し、初勝利を掴み取る。まさに奇跡の復活劇であった。2歳時は、サガモアステークスを含む4勝を挙げ、将来性を示唆した。

3歳シーズン、ポリネシアンはアメリカ三冠競走への挑戦を決意。しかし、ケンタッキーダービーは回避し、プリークネスステークスに照準を合わせた。ウィザーズステークスを制して臨んだ本番では、ケンタッキーダービー馬フープジュニアを2馬身半突き放し、見事優勝。クラシックホースとしての地位を確固たるものとした。一方、フープジュニアはこのレースで屈腱炎を発症し、惜しまれつつも引退することとなった。

その後も、ポリネシアンはアームド、スタイミー、ギャロレット、アソールトといった強豪古馬たちと幾度となく激戦を繰り広げる。3歳シーズン以降は、プリークネスステークス以外での大勝利こそなかったものの、4歳時にはトボガンハンデキャップなど8勝、そして5歳時には3度のレコードタイム更新を含む9勝を挙げ、その年のアメリカ最優秀短距離馬に選出される栄誉に輝いた。

1948年、華々しい現役生活を終えたポリネシアンは種牡馬となる。そして1950年、彼の産駒の中に、後に伝説となるネイティヴダンサーが誕生した。ネイティヴダンサーとその子孫たちは世界中で活躍し、ポリネシアンの血統は現代競馬の主流血統の一つとして、現在も世界中に広がり続けている。

ネイティヴダンサー以外にも、ポリネシアンは多くの優秀な競走馬を輩出した。例えば、イムブロス（牡馬、1950年生）はデボネアステークスなどを制し、殿堂馬ネイティヴダイヴァー、天皇賞馬ハクズイコウの父となった。また、バルビゾン（牡馬、1954年生）は1956年のアメリカ最優秀2歳牡馬に輝き、アラネシアン（牝馬、1954年生）はスピナウェイステークスで勝利。さらに、ポリラッド（せん馬、1956年生）はナッソーカウンティハンデキャップなどで活躍した。1958年には、アウトリガーが日本に輸入され種牡馬として活躍した。ブルードメアサイアーとしても、ケンタッキーダービー馬シャトーゲイ（母Banquet Bell）など、日本にも影響を与えている。

1959年、17歳という年齢で、疝痛のためポリネシアンは生涯を終えた。その遺体は、レキシントンのギャラハーファームに埋葬され、今もなお、競馬史に名を残す偉大な競走馬、そして種牡馬として人々の記憶に刻まれている。

主な勝鞍

1944年（2歳）：10戦5勝
1945年（3歳）：14戦5勝 (プリークネスステークス、ウィザーズステークス)
1946年（4歳）：20戦8勝 (ローズベンステークス、トボガンハンデキャップ)
1947年（5歳）：14戦9勝 (ロングブランチステークス、カムデンハンデキャップ、オーシャンポートステークス)

受賞

* 1947年：アメリカ最優秀短距離馬

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