ポリビニルピロリドン

ポリビニルピロリドン（PVP）

ポリビニルピロリドン（PVP、ポビドンとも呼ばれる）は、N-ビニル-2-ピロリドンの重合によって生成される合成高分子化合物です。多くの合成高分子とは異なり、水に非常に溶けやすいという特徴があります。この性質が、PVPの様々な用途の基礎となっています。

PVPの合成

PVPは、アセチレン、アンモニア、ホルムアルデヒドを原料としてN-ビニル-2-ピロリドンを合成し、その後、酸化剤などの存在下で重合させることで製造されます。

PVPの性質と特徴

PVPは白い粉末状で、空気中の水分を容易に吸収します。水に溶かすと粘性のある溶液となり、乾燥させるとフィルム状になります。この水溶性、粘性、成膜性といった特性が、幅広い用途に適している理由です。

PVPの用途

PVPは、その優れた特性から、様々な産業で利用されています。

工業用途

溶解補助剤・分散剤: 水に溶けにくい物質を溶解・分散させるための補助剤として、インクジェットプリンター用インクや、インクジェット紙、OHPフィルムのコーティング剤などに使用されています。
接着剤: スティック状の糊などの接着剤にも配合されています。

化粧品・医薬品・食品用途

賦形剤・結合剤: 化粧品や錠剤（医薬品や食品）の賦形剤や結合剤として使用され、製品の形状や性質を調整します。
消毒薬: ヨウ素と結合させた水溶液は、ポビドンヨードとして消毒薬として広く用いられています。
ソフトコンタクトレンズ: 保水性を生かし、ソフトコンタクトレンズの材料や、コンタクトレンズの保存・洗浄液にも使用されています。

ポリビニルポリピロリドン（PVPP）

PVPと構造の似た化合物に、ポリビニルポリピロリドン（PVPP、架橋ポリビニルピロリドンとも呼ばれる）があります。PVPPは、ピロリドン部分に架橋構造を持つため、PVPとは異なり水に不溶性です。食品添加物として利用されており、食品中には残留しません。

PVPPの特性と用途

PVPPは、ポリフェノールを特異的に吸着する性質があります。この特性を利用して、主に食品や飲料の製造工程で活用されています。

ビール、ワインの清澄化: ビールやワインの濁りや変色の防止に効果があります。
果汁の清澄化: リンゴなどの果汁の清澄化に使用されます。
茶系飲料の渋味低減: 茶系飲料の渋味を低減します。
樽貯蔵酒類の色度調整: 樽貯蔵酒類の色調を調整します。

PVPPは、BASF社（ダイバガン）やISP社（ポリクラール）などから販売されており、日本ではシンワフーズケミカル、大成化学などが販売しています。日本の食品添加物規格は、海外の規格よりも厳しい基準を設定しているため、海外産のPVPPを使用する際には、規格適合性に注意が必要です。また、PVPPは白色の微粉末で、取り扱い時の粉塵に注意が必要です。

東京工業大学池田研究室は、PVPPがウランを高選択的に吸着する性能を持つことを発見し、日本原子力研究開発機構と共同でその特性の解明を進めています。

PVP、PVPPの生産メーカー

日本

第一工業製薬
日本触媒
シンワフーズケミカル（顆粒品）

中国

* 博愛新開源製薬

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