ポリュイードス
ポリュイードス（古代ギリシア語: Πολύιδος, Polyīdos）、あるいはポリュエイドス（古代ギリシア語: Πολύειδος, Polyeidos）は、古代ギリシア神話に伝えられる高名な予言者です。その名は長母音を省略してポリュイドスとも表記されます。
出自についてはいくつかの伝承があります。コリントス、アルゴス、あるいはビュザンティオンの出身であると伝えられています。系譜に関しても異説が見られますが、レーロスのペレキューデースによれば、暁の女神エーオースに愛されたクレイトスを父とするコイラノスの子とされます。一方、パウサニアスの伝えるところでは、アバースの子コイラノスの子とされています。しかし、いずれの説においても、彼は伝説的な予言者メラムプースの子孫にあたるとされています。家族としては、ピューレウスの娘エウリュダメイアとの間に、クレイトス、エウケーノール、アステュクラテイア、マントーという四人の子供をもうけました。
ポリュイードスにまつわる神話の中でも特に知られているのは、クレータ島の王ミーノースの子グラウコスを死から蘇らせた物語です。その他にも、英雄ベレロポーンが天馬ペーガソスを捕獲する際に助言を与えたこと、ミューシア王テウトラースの精神的な病を癒したこと、そして自身の息子であるエウケーノールの死を予言したことなどが語られています。特にグラウコスの蘇生譚は広く知られ、この話とほぼ同じ内容の物語が『グリム童話』にも収められているほどです。
グラウコスの蘇生に関する神話は、ポリュイードスの予言者としての能力と神秘的な力を示す代表的なエピソードです。物語は、ミーノース王の幼い息子グラウコスが、ネズミを追いかけている最中に、蜂蜜が満たされた大きな甕に落ちて溺れ死んでしまう出来事から始まります。息子を見失い、必死に捜索を行ったミーノースでしたが、グラウコスを発見することはできませんでした。窮地に立った王は神託に頼ることにしました。
すると、クーレースたち、あるいはアポローン神からの神託がありました。それは、「ミーノースが所有する牛の群れの中に、特別な牝牛が生まれている。その牛の色を正確に表現できた者が、グラウコスを再び生きた姿で戻すだろう」というものでした。王が調べてみると、確かに不思議な牝牛が存在しており、その毛色は一日の間に白、赤、黒と三度変化したのです。ミーノースは直ちに島中の予言者たちを集め、この謎の牛の色を表現させました。その中にいたポリュイードスは、この色の変化を桑の実にたとえました。熟す前の白から、熟しかけの赤、そして完全に熟した黒へと変化する様子が、牝牛の毛色の変化に酷似していたからです。
ポリュイードスの見事な比喩に感銘を受けたミーノースは、彼にグラウコスの捜索を命じました。ポリュイードスは捜索の途中、酒蔵の屋根にフクロウが止まり、ミツバチの群れを追い払っているのを目にしました。彼はこれを重要な前兆と解釈し、その場所を調べた結果、蜂蜜の甕の中で溺死しているグラウコスの遺体を発見したのです。
遺体を発見したポリュイードスでしたが、ミーノース王は彼をグラウコスの遺体とともに地下の墓に閉じ込め、息子を生き返らせることができたら解放すると告げました。絶望的な状況に置かれたポリュイードスでしたが、しばらくすると一匹の蛇が墓室に現れ、グラウコスの遺体に近づこうとしました。遺体が損なわれることを恐れたポリュイードスは、その蛇を殺してしまいました。
すると間もなく、別の蛇が現れました。この蛇は先に死んだ蛇を見つけると、一度どこかへ姿を消しましたが、やがて再び戻ってきました。その口には一枚の葉がくわえられていました。この蛇は、くわえてきた葉を死んだ蛇の遺体にそっと乗せました。すると驚くべきことに、死んでいたはずの蛇が息を吹き返したのです。この光景を目の当たりにしたポリュイードスは、その葉に不思議な薬効があることを悟りました。人間にも効くかもしれないと考えた彼は、同じ葉を探し出し、グラウコスの遺体に乗せてみました。すると、奇跡が起こり、グラウコスは再び生き返ったのです。
息子が蘇ったことに狂喜したミーノースは、ポリュイードスの能力にすっかり感心し、彼に予言の術を自分に教えてほしいと懇願しました。ポリュイードスは当初これを断りましたが、ミーノースは彼が島を離れることを許さなかったため、仕方なく予言の術をグラウコスに教え授けました。しかし、ポリュイードスは島を去る直前、グラウコスに自分の口に唾を吐くように命じました。グラウコスがその通りにすると、不思議なことに彼はポリュイードスから教わった予言の術に関する知識をすべて忘れてしまったと伝えられています。これは、神々から授けられたポリュイードスの能力が、安易に人間に受け継がれることを良しとしなかったためとも解釈されます。
出自についてはいくつかの伝承があります。コリントス、アルゴス、あるいはビュザンティオンの出身であると伝えられています。系譜に関しても異説が見られますが、レーロスのペレキューデースによれば、暁の女神エーオースに愛されたクレイトスを父とするコイラノスの子とされます。一方、パウサニアスの伝えるところでは、アバースの子コイラノスの子とされています。しかし、いずれの説においても、彼は伝説的な予言者メラムプースの子孫にあたるとされています。家族としては、ピューレウスの娘エウリュダメイアとの間に、クレイトス、エウケーノール、アステュクラテイア、マントーという四人の子供をもうけました。
ポリュイードスにまつわる神話の中でも特に知られているのは、クレータ島の王ミーノースの子グラウコスを死から蘇らせた物語です。その他にも、英雄ベレロポーンが天馬ペーガソスを捕獲する際に助言を与えたこと、ミューシア王テウトラースの精神的な病を癒したこと、そして自身の息子であるエウケーノールの死を予言したことなどが語られています。特にグラウコスの蘇生譚は広く知られ、この話とほぼ同じ内容の物語が『グリム童話』にも収められているほどです。
グラウコスの蘇生譚
グラウコスの蘇生に関する神話は、ポリュイードスの予言者としての能力と神秘的な力を示す代表的なエピソードです。物語は、ミーノース王の幼い息子グラウコスが、ネズミを追いかけている最中に、蜂蜜が満たされた大きな甕に落ちて溺れ死んでしまう出来事から始まります。息子を見失い、必死に捜索を行ったミーノースでしたが、グラウコスを発見することはできませんでした。窮地に立った王は神託に頼ることにしました。
すると、クーレースたち、あるいはアポローン神からの神託がありました。それは、「ミーノースが所有する牛の群れの中に、特別な牝牛が生まれている。その牛の色を正確に表現できた者が、グラウコスを再び生きた姿で戻すだろう」というものでした。王が調べてみると、確かに不思議な牝牛が存在しており、その毛色は一日の間に白、赤、黒と三度変化したのです。ミーノースは直ちに島中の予言者たちを集め、この謎の牛の色を表現させました。その中にいたポリュイードスは、この色の変化を桑の実にたとえました。熟す前の白から、熟しかけの赤、そして完全に熟した黒へと変化する様子が、牝牛の毛色の変化に酷似していたからです。
ポリュイードスの見事な比喩に感銘を受けたミーノースは、彼にグラウコスの捜索を命じました。ポリュイードスは捜索の途中、酒蔵の屋根にフクロウが止まり、ミツバチの群れを追い払っているのを目にしました。彼はこれを重要な前兆と解釈し、その場所を調べた結果、蜂蜜の甕の中で溺死しているグラウコスの遺体を発見したのです。
遺体を発見したポリュイードスでしたが、ミーノース王は彼をグラウコスの遺体とともに地下の墓に閉じ込め、息子を生き返らせることができたら解放すると告げました。絶望的な状況に置かれたポリュイードスでしたが、しばらくすると一匹の蛇が墓室に現れ、グラウコスの遺体に近づこうとしました。遺体が損なわれることを恐れたポリュイードスは、その蛇を殺してしまいました。
すると間もなく、別の蛇が現れました。この蛇は先に死んだ蛇を見つけると、一度どこかへ姿を消しましたが、やがて再び戻ってきました。その口には一枚の葉がくわえられていました。この蛇は、くわえてきた葉を死んだ蛇の遺体にそっと乗せました。すると驚くべきことに、死んでいたはずの蛇が息を吹き返したのです。この光景を目の当たりにしたポリュイードスは、その葉に不思議な薬効があることを悟りました。人間にも効くかもしれないと考えた彼は、同じ葉を探し出し、グラウコスの遺体に乗せてみました。すると、奇跡が起こり、グラウコスは再び生き返ったのです。
息子が蘇ったことに狂喜したミーノースは、ポリュイードスの能力にすっかり感心し、彼に予言の術を自分に教えてほしいと懇願しました。ポリュイードスは当初これを断りましたが、ミーノースは彼が島を離れることを許さなかったため、仕方なく予言の術をグラウコスに教え授けました。しかし、ポリュイードスは島を去る直前、グラウコスに自分の口に唾を吐くように命じました。グラウコスがその通りにすると、不思議なことに彼はポリュイードスから教わった予言の術に関する知識をすべて忘れてしまったと伝えられています。これは、神々から授けられたポリュイードスの能力が、安易に人間に受け継がれることを良しとしなかったためとも解釈されます。
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