ポンサワン・ポープラムック

ポンサワン・ポープラムック（Pornsawan Porpramook）は、1978年 3月10日生まれ、タイ出身の元プロボクサーです。元世界ボクシング協会（WBA）ミニマム級王者として知られています。プロボクサーとしてのキャリアを積む以前からムエタイの選手として活動しており、プロデビューと並行してムエタイのリングにも上がり続けていました。自身によれば、ムエタイでは約300試合を経験し、そのうち約280勝という驚異的な戦績を残しています。

プロキャリアの始まりと地域タイトル

2001年9月20日にプロボクシングデビューを果たし、この試合に初回KO勝ちで白星発進しました。プロ2戦目となる同年11月28日には、モンコン・シンワンチャーの王座返上を受けて行われたパンアジアボクシング協会（PABA）ミニマム級王座決定戦に出場。ジュハルム・シラバンを相手に3回KO勝利を収め、プロ入りわずか2戦目にして地域タイトルを獲得しました。このPABAミニマム級王座を7度にわたり防衛した後、タイトルを返上します。

2004年12月10日にはタイミニマム級王座決定戦に出場し、この日がデビュー戦であったパヤプング・マイムングアコンと対戦。ここでも3回KOで勝利し、タイ国内王座を獲得しましたが、このタイトルは一度も防衛することなく手放しました。

PABAミニマム級王座を返上したポンサワンでしたが、2005年5月17日に行われた自身の王座返上を受けた決定戦で再びこのタイトルに挑みます。ニノ・スエロを相手に3-0の判定で勝利し、PABAミニマム級王座への返り咲きを果たしました。この二度目の在位期間には、タイトルを8度防衛。地域タイトルにおいて確固たる実績を築き上げました。

世界王座への挑戦

地域タイトルでの実績を背景に、ポンサワンは世界の舞台へと目を向けます。2007年9月30日、イヴァン・カルデロンの王座返上に伴う世界ボクシング機構（WBO）世界ミニマム級王座決定戦で、ドニー・ニエテスと対戦し、初めて主要世界王座に挑戦しました。しかし、4回にダウンを喫し、10回にはローブローで減点されるなど苦戦を強いられ、12回0-3の判定で敗れ、王座獲得はなりませんでした。

その後、2008年2月14日にはリチャード・ガルシアとのアジアボクシング評議会（ABCO）ミニマム級暫定王座決定戦に勝利し、5回TKOでタイトルを獲得しましたが、この暫定王座も防衛することなく返上しています。

同年11月27日には、世界ボクシング評議会（WBC）世界ミニマム級王者オーレイドン・シスサマーチャイに挑戦。しかし、試合は終始オーレイドンのペースで進み、判定で大差をつけられ敗北。またしても世界王座獲得は叶いませんでした。

さらに階級をライトフライ級に上げ、2009年4月4日にはメキシコでWBC世界ライトフライ級王者エドガル・ソーサに挑戦。しかし、4回2分32秒TKOで敗れ、キャリア初のKO負けを喫し、3度目の世界挑戦も実りませんでした。

2010年9月3日には、WBC世界ミニマム級王者オーレイドン・シスサマーチャイとの再戦の機会を得ました。この試合では、オーレイドンが脚の痙攣を起こすアクシデントがあり、ポンサワンは初回と6回にダウンを奪うなど、レフェリーストップ寸前まで追い詰め、終始試合を優位に進めているかのように見えました。しかし、結果は12回0-1の判定引き分け。会場からは大きなブーイングが巻き起こり、誤審を指摘する声も聞かれるなど、両者にとって後味の悪い結果となり、この挑戦でも王座獲得はなりませんでした。

念願の世界王座獲得、そして陥落

数々の挑戦を経て、ついにポンサワンに栄光の瞬間が訪れます。2011年7月30日、インドネシアでムハンマド・ラクマンが保持するWBA世界ミニマム級王座に挑戦しました。試合はほぼ互角の展開となり、判定も非常に僅差となりましたが、結果は12回2-0の判定でポンサワンが勝利。念願の世界王座を獲得しました。しかし、相手陣営からは「判定が盗まれた」との不満の声が上がり、物議を醸しましたが、裁定は覆らずポンサワンの勝利が支持されました。

世界王者となったポンサワンは、2011年10月24日に初めて日本のリングに上がり、後楽園ホールで八重樫東を相手に初防衛戦を行いました。しかし、挑戦者である八重樫の果敢な攻めに、ポンサワンの持ち味であるタフネスが徐々に失われ、10回2分38秒TKOで敗北。初めての防衛に失敗し、わずか3ヶ月でタイトルを失いました。もし勝利していれば、ラクマンとの再戦の選択肢もあったとされますが、それも消滅しました。

その後のキャリアと引退

世界王座を失った後も、ポンサワンは再び世界の舞台を目指します。2012年12月31日には、大阪府立体育会館で行われたWBA世界ミニマム級王座決定戦に出場。元OPBF東洋太平洋ライトフライ級王者でWBA世界ミニマム級2位であった宮崎亮と対戦しました。この試合も接戦となりましたが、12回1-2の判定で敗れ、王座への返り咲きはなりませんでした。試合後には、この判定結果に不満を表明しています。

2013年6月18日には、バンコクでジェイソン・ロトニーとPABAライトフライ級暫定王座決定戦を行い、5回3-0の負傷判定により勝利し、PABAライトフライ級暫定王座を獲得しました。しかし、続く同年8月23日、本来予定されていたWBA世界スーパーフライ級暫定王座決定戦が延期となったため、その代替として行われた試合で元PABAライトフライ級スーパー王者レイ・ロリトと対戦。10回0-2の負傷判定で敗れ、このタイトルも初防衛に失敗し失いました。

このタイトルを失った後、ポンサワンは再びミニマム級に階級を戻しましたが、度重なる激闘を経て体力の限界を感じ、プロボクサーとしてのキャリアに終止符を打ち、引退を決意しました。

豊富なムエタイ経験に裏打ちされた粘り強いファイトで、幾度も世界の舞台に挑み、ついに頂点に立ったポンサワン・ポープラムック。その波乱に富んだキャリアは、タイボクシング史の一頁を飾るものと言えるでしょう。

獲得タイトル

第8代・第9代 PABAミニマム級王座
タイミニマム級王座
ABCOミニマム級暫定王座
第11代 WBA世界ミニマム級王座（防衛0）
* PABAライトフライ級暫定王座

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