ポールスグレイブ・ウィリアムズ
生没年不詳の海賊、ポールスグレイブ・ウィリアムズ（Paulsgrave Williams）は、主にカリブ海、アメリカ東海岸、そして西アフリカ沖の海域で活動したことで知られています。パルスグレイブ、パルグレイブ、あるいは単にポール・ウィリアムズとも呼ばれる彼は、悪名高い海賊たちの拠点であったニュープロビデンス島の海賊共和国の一員でした。特に、同時代の著名な海賊、サミュエル・ベラミーとの密接な関係で語られることが多い人物です。
ウィリアムズは、一般的な海賊のイメージとは異なり、卑しい出自ではありませんでした。ロードアイランド植民地のニューポートで生まれ、銀細工師として生計を立てていた時期があり、妻と二人の子供がいたと記録されています。彼の父は裕福な商人であると同時にマサチューセッツの議員を務め、母もチャールズタウンやブロック島の有力者でした。このような背景を持つ彼が、どのようにして海賊の世界に足を踏み入れたのか、そしてベラミーとどのように知り合ったのかは定かではありません。
海賊としてのキャリアは、1715年にベラミーと共に始まったと考えられています。二人はフロリダ沖に沈んだスペイン船団から財宝を引き揚げようと、共同で船を手に入れました。しかし、翌1716年1月にフロリダ沖に到着した時には、既に多くのイギリス船が財宝目当てに集まっており、彼らはほとんど成果を上げることができませんでした。財宝への望みを捨てきれなかった彼らは、所有していた船を帆走式のカヌーであるピローグに交換し、ヘンリー・ジェニングス率いる海賊一味に加わることを決意します。
ジェニングス一味に加わった彼らは、キューバ北西沖のバイーヤ・ホンダでフランス船「セント・メアリー号」を拿捕します。拷問によって、船員から陸に隠されたという3万枚ものピース・オブ・エイト（スペイン銀貨）の隠し場所を聞き出すことに成功しました。ジェニングスが財宝を積み込んでいる最中、近くを航行する商船「マリアンヌ号」の情報が入ります。ジェニングスはこれを新たな獲物にしようとしましたが、ベンジャミン・ホーニゴールドに先を越されてしまいました。ジェニングスはホーニゴールドを追跡するために旗艦「ベルシェバ号」で出発しますが、その隙を突いて、ベラミーとウィリアムズは「セント・メアリー号」を乗っ取り、大量の銀貨をピローグに積み込んで逃走しました。ジェニングスはホーニゴールドの追跡にも失敗した上、手に入れたはずの財宝までも失う結果となったのです。
バイーヤ・ホンダを離れてしばらく経った後、ベラミーとウィリアムズは、皮肉にもジェニングスが追跡していたホーニゴールドの一味と遭遇します。二人はホーニゴールドの海賊団に加わり、ベラミーはホーニゴールドが拿捕していた「マリアンヌ号」の船長に任じられました。さらに数週間後、彼らはオリビエ・ルバスール（通称ラ・ブーシュ）船長の「ポスティリオン号」と合流し、勢力はさらに拡大します。
しかし、ホーニゴールドは元私掠船員としてイギリス国王への忠誠心が強く、イギリス船を襲うことを拒んだため、他の乗組員たちの間に不満が募りました。1716年8月、再びイギリス船襲撃を巡って意見が対立した際、乗組員たちは投票によってホーニゴールドを解任し、代わりにベラミーを新たな船長に選びました。ホーニゴールドと彼に賛同した26人はスループ船を与えられてナッソーに戻り、ベラミーと彼を支持する200人以上の海賊たちは、何の制約もない新たな航海へと乗り出しました。
ベラミーとラ・ブーシュの一味は、その後数ヶ月で多くの船を拿捕しました。11月にはセントクリストファー島付近で26門の大砲を備えたイギリス船「スルタナ号」を奪い、ベラミーはこれを新たな旗艦としました。ウィリアムズは以前から指揮していた「マリアンヌ号」の船長を引き続き務めます。後にラ・ブーシュは一味から離れ、自らの道を歩むことになります。
1717年4月、一味はウィンドワード海峡で、元バッカニアであるローレンス・プリンス船長が指揮する大型奴隷船「ウィダー号」を捕捉しました。「スルタナ号」と「マリアンヌ号」は3日間かけて「ウィダー号」を追跡し、ついにこれを拿捕してバハマ諸島のロング島まで連行しました。ベラミーたちは「ウィダー号」の大きさと装備を気に入り、これを新たな旗艦とすることに決め、プリンス船長には「スルタナ号」を与えて解放しました。同月、彼らはサウスカロライナ沖でビーア船長のスループ船を襲い、船を沈めました。
ビーア船長の一件の後、一味はバージニアへ向かいますが、濃い霧のために「ウィダー号」と「マリアンヌ号」は離れ離れになってしまいます。ウィリアムズは単独で航行しながら複数の船を襲い、ブロック島に立ち寄って親戚を訪ね、そこで何人かの仲間を加えました。一方、ベラミーもバージニア沖で「アン・ギャレー号」など複数の船を襲撃していました。この地域でベラミーとウィリアムズが海賊行為を働いているという知らせは、地元の商人たちを大混乱に陥れ、貿易や航海は事実上麻痺しました。ベラミーはメイン州へ向かい、ウィリアムズはロングアイランドへ進路を取りました。
1717年4月26日、「ウィダー号」はウェルフリート沖で激しい嵐に遭遇し、海岸から約10マイルの地点で沈没しました。ベラミーを含む100人以上の乗組員が命を落とし、生還できたのはわずか2人だけでした。ウィリアムズもロングアイランド沖で嵐に巻き込まれましたが、何とかこれを乗り切り、メイン州を目指しました。ベラミーとウィリアムズは、メイン州ケープエリザベス沖のリッチモンド島で落ち合う約束をしていたと言われています。しかし、5月にプロビンスタウン近くでセイラムから来たスクーナー船の船長と話した際、ウィリアムズは「ウィダー号」が沈没し、ベラミーが死亡し、財宝も全て失われたという衝撃的なニュースを聞かされました。ウィリアムズはこれに深く失望し、カリブ海に戻ることを決意しました。
プロビデンス島へ南下する途中、ウィリアムズは立ち寄った沖合で多数の船を襲撃し続けました。ニュージャージー、デラウェア、バージニア、カロライナといった植民地の沿岸部に恐怖をもたらしました。また、捕らえた船長が反抗的な態度をとったとして、「冷酷に打ち据える」といった虐待を加えたことも記録されています。ニュージャージー沖では、「マリアンヌ号」に無理矢理乗せられていた乗組員たちが反乱を起こしましたが、ウィリアムズはこれに対し手ひどい報復を行いました。反逆者のうち数人は帆桁に吊るされて殺されたと伝えられています。
ウィリアムズはプロビデンス島に帰還しました。1717年9月にはイギリス国王ジョージ1世による海賊恩赦の布告が出され、翌1718年7月には新バハマ総督に任命されたウッズ・ロジャーズが軍艦を率いて島に到着しました。ウィリアムズはこの時ナッソーにおり、恐らくはこの恩赦を受け入れた海賊の一人であったと考えられています。
しかし、平穏な生活は長く続かなかったようです。1720年には、ウィリアムズはかつて行動を共にしたラ・ブーシュの元で再び海賊行為に手を染めていました。ただし、かつてのように船長として船を任されることはなく、ラ・ブーシュの船の操舵手という立場に落ち着いていました。この降格はウィリアムズにとって不本意だったようで、ラ・ブーシュの捕虜や他の船員たちは、彼の機嫌を取るために「船長」と呼んでおだてることが常だったと伝えられています。ウィリアムズは1723年までには海賊稼業から引退し、結婚して余生を送ったとされています。しかし、具体的にいつ、どこでその生涯を終えたのかは分かっていません。
ウィリアムズは、一般的な海賊のイメージとは異なり、卑しい出自ではありませんでした。ロードアイランド植民地のニューポートで生まれ、銀細工師として生計を立てていた時期があり、妻と二人の子供がいたと記録されています。彼の父は裕福な商人であると同時にマサチューセッツの議員を務め、母もチャールズタウンやブロック島の有力者でした。このような背景を持つ彼が、どのようにして海賊の世界に足を踏み入れたのか、そしてベラミーとどのように知り合ったのかは定かではありません。
海賊としてのキャリアは、1715年にベラミーと共に始まったと考えられています。二人はフロリダ沖に沈んだスペイン船団から財宝を引き揚げようと、共同で船を手に入れました。しかし、翌1716年1月にフロリダ沖に到着した時には、既に多くのイギリス船が財宝目当てに集まっており、彼らはほとんど成果を上げることができませんでした。財宝への望みを捨てきれなかった彼らは、所有していた船を帆走式のカヌーであるピローグに交換し、ヘンリー・ジェニングス率いる海賊一味に加わることを決意します。
ジェニングス一味に加わった彼らは、キューバ北西沖のバイーヤ・ホンダでフランス船「セント・メアリー号」を拿捕します。拷問によって、船員から陸に隠されたという3万枚ものピース・オブ・エイト（スペイン銀貨）の隠し場所を聞き出すことに成功しました。ジェニングスが財宝を積み込んでいる最中、近くを航行する商船「マリアンヌ号」の情報が入ります。ジェニングスはこれを新たな獲物にしようとしましたが、ベンジャミン・ホーニゴールドに先を越されてしまいました。ジェニングスはホーニゴールドを追跡するために旗艦「ベルシェバ号」で出発しますが、その隙を突いて、ベラミーとウィリアムズは「セント・メアリー号」を乗っ取り、大量の銀貨をピローグに積み込んで逃走しました。ジェニングスはホーニゴールドの追跡にも失敗した上、手に入れたはずの財宝までも失う結果となったのです。
バイーヤ・ホンダを離れてしばらく経った後、ベラミーとウィリアムズは、皮肉にもジェニングスが追跡していたホーニゴールドの一味と遭遇します。二人はホーニゴールドの海賊団に加わり、ベラミーはホーニゴールドが拿捕していた「マリアンヌ号」の船長に任じられました。さらに数週間後、彼らはオリビエ・ルバスール（通称ラ・ブーシュ）船長の「ポスティリオン号」と合流し、勢力はさらに拡大します。
しかし、ホーニゴールドは元私掠船員としてイギリス国王への忠誠心が強く、イギリス船を襲うことを拒んだため、他の乗組員たちの間に不満が募りました。1716年8月、再びイギリス船襲撃を巡って意見が対立した際、乗組員たちは投票によってホーニゴールドを解任し、代わりにベラミーを新たな船長に選びました。ホーニゴールドと彼に賛同した26人はスループ船を与えられてナッソーに戻り、ベラミーと彼を支持する200人以上の海賊たちは、何の制約もない新たな航海へと乗り出しました。
ベラミーとラ・ブーシュの一味は、その後数ヶ月で多くの船を拿捕しました。11月にはセントクリストファー島付近で26門の大砲を備えたイギリス船「スルタナ号」を奪い、ベラミーはこれを新たな旗艦としました。ウィリアムズは以前から指揮していた「マリアンヌ号」の船長を引き続き務めます。後にラ・ブーシュは一味から離れ、自らの道を歩むことになります。
1717年4月、一味はウィンドワード海峡で、元バッカニアであるローレンス・プリンス船長が指揮する大型奴隷船「ウィダー号」を捕捉しました。「スルタナ号」と「マリアンヌ号」は3日間かけて「ウィダー号」を追跡し、ついにこれを拿捕してバハマ諸島のロング島まで連行しました。ベラミーたちは「ウィダー号」の大きさと装備を気に入り、これを新たな旗艦とすることに決め、プリンス船長には「スルタナ号」を与えて解放しました。同月、彼らはサウスカロライナ沖でビーア船長のスループ船を襲い、船を沈めました。
ビーア船長の一件の後、一味はバージニアへ向かいますが、濃い霧のために「ウィダー号」と「マリアンヌ号」は離れ離れになってしまいます。ウィリアムズは単独で航行しながら複数の船を襲い、ブロック島に立ち寄って親戚を訪ね、そこで何人かの仲間を加えました。一方、ベラミーもバージニア沖で「アン・ギャレー号」など複数の船を襲撃していました。この地域でベラミーとウィリアムズが海賊行為を働いているという知らせは、地元の商人たちを大混乱に陥れ、貿易や航海は事実上麻痺しました。ベラミーはメイン州へ向かい、ウィリアムズはロングアイランドへ進路を取りました。
1717年4月26日、「ウィダー号」はウェルフリート沖で激しい嵐に遭遇し、海岸から約10マイルの地点で沈没しました。ベラミーを含む100人以上の乗組員が命を落とし、生還できたのはわずか2人だけでした。ウィリアムズもロングアイランド沖で嵐に巻き込まれましたが、何とかこれを乗り切り、メイン州を目指しました。ベラミーとウィリアムズは、メイン州ケープエリザベス沖のリッチモンド島で落ち合う約束をしていたと言われています。しかし、5月にプロビンスタウン近くでセイラムから来たスクーナー船の船長と話した際、ウィリアムズは「ウィダー号」が沈没し、ベラミーが死亡し、財宝も全て失われたという衝撃的なニュースを聞かされました。ウィリアムズはこれに深く失望し、カリブ海に戻ることを決意しました。
プロビデンス島へ南下する途中、ウィリアムズは立ち寄った沖合で多数の船を襲撃し続けました。ニュージャージー、デラウェア、バージニア、カロライナといった植民地の沿岸部に恐怖をもたらしました。また、捕らえた船長が反抗的な態度をとったとして、「冷酷に打ち据える」といった虐待を加えたことも記録されています。ニュージャージー沖では、「マリアンヌ号」に無理矢理乗せられていた乗組員たちが反乱を起こしましたが、ウィリアムズはこれに対し手ひどい報復を行いました。反逆者のうち数人は帆桁に吊るされて殺されたと伝えられています。
ウィリアムズはプロビデンス島に帰還しました。1717年9月にはイギリス国王ジョージ1世による海賊恩赦の布告が出され、翌1718年7月には新バハマ総督に任命されたウッズ・ロジャーズが軍艦を率いて島に到着しました。ウィリアムズはこの時ナッソーにおり、恐らくはこの恩赦を受け入れた海賊の一人であったと考えられています。
しかし、平穏な生活は長く続かなかったようです。1720年には、ウィリアムズはかつて行動を共にしたラ・ブーシュの元で再び海賊行為に手を染めていました。ただし、かつてのように船長として船を任されることはなく、ラ・ブーシュの船の操舵手という立場に落ち着いていました。この降格はウィリアムズにとって不本意だったようで、ラ・ブーシュの捕虜や他の船員たちは、彼の機嫌を取るために「船長」と呼んでおだてることが常だったと伝えられています。ウィリアムズは1723年までには海賊稼業から引退し、結婚して余生を送ったとされています。しかし、具体的にいつ、どこでその生涯を終えたのかは分かっていません。
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