ポール・メロン

ポール・メロン：美術、競馬、そして慈善活動に生涯を捧げた巨富の軌跡

ポール・メロン（1907年-1999年）は、アメリカを代表する資産家、篤志家、そして美術収集家でした。アメリカ合衆国財務長官を務めたアンドリュー・メロンを父に持ち、莫大な財産を受け継いだ彼は、その富を基に、美術界や競馬界、そして慈善事業に多大な貢献をしました。

青年時代と教育

名門チョート・スクール、イェール大学、そしてケンブリッジ大学クレアカレッジと、エリートコースを歩んだポール・メロン。イェール大学時代には学生新聞の副編集長を務め、秘密結社にも所属するなど、学生生活も充実させていました。卒業後はイギリスに渡り、ケンブリッジ大学で文学士号を取得。その後も大学院で修士号を取得し、学問への探究心も持ち合わせていました。

美術収集家としての活動

ポール・メロンの美術収集は、単なる資産家の道楽ではありませんでした。彼はイギリス美術に深い造詣を持ち、数々の名画を収集しました。中でも、ジョージ・スタッブスの「パンプキンと牧童」は、彼にとって最初のイギリス絵画であり、生涯所蔵し続けられた愛蔵品でした。

彼はバジル・テイラーなどの専門家の協力を得ながら、1950～60年代にかけて精力的に作品を収集し、そのコレクションは画商ジェフリー・アグニューをして「アメリカ人がイギリス美術の価値を再認識させた」と言わしめるほどでした。

これらのコレクションは、単に私的に楽しむためのものではなく、社会に還元されることを目的としていました。ポール・メロンは収集した美術品や書籍をイェール大学に寄贈し、「イギリス美術のためのイェールセンター」という美術館の建設を支援しました。この美術館は、イェール大学アートギャラリーと同じ建築家による設計で、その壮大さと美しさは、彼の美術への情熱を物語っています。さらに、ロンドンには「イギリス美術研究のためのポールメロンセンター」を設立するなど、イギリス美術振興に尽力しました。バージニア美術館の建設にも貢献するなど、アメリカ国内でも美術振興に貢献しました。

競馬界への貢献

美術収集家としての顔以外にも、ポール・メロンは情熱的なサラブレッド競馬のオーナーブリーダーでもありました。彼の所有する馬は数々のレースで優勝し、ケンタッキーダービー優勝馬シーヒーローもその一つです。アーツアンドレターズとフォートマーシーという2頭の馬が、連続でアメリカ年度代表馬に選ばれたという偉業も達成しています。アメリカ競馬名誉の殿堂博物館から「模範ホースマン」として選出されるなど、競馬界への貢献は計り知れません。また、グレーソンジョッキークラブ調査財団を設立し、馬の福祉向上にも尽力しました。

慈善活動と財団設立

ポール・メロンの活動は美術と競馬だけに留まりません。彼は人文科学の進歩に貢献するため、オールド・ドミニオン財団やボーリンゲン財団を設立し、数多くの書籍を出版しました。その後、これらの財団は姉のアリサ・メロンが設立したアヴァロン財団と統合され、アンドリュー・メロン財団と改称されました。ケンブリッジ大学のフィッツウィリアム美術館への多額の寄付や、母校イェール大学への多大な寄付、学舎建設など、その慈善活動は多岐に渡ります。

晩年と功績

1992年には自叙伝「Reflections in a Silver Spoon」を出版。1999年に死去するまで、彼は美術、競馬、そして慈善活動に情熱を燃やし続けました。数々の栄誉ある賞を受賞し、その功績は、現代においても高く評価されています。ポール・メロンの生涯は、巨万の富を社会に還元し、文化・芸術、そして人々の生活を豊かにした、稀有な人物の物語です。彼の功績は、これからも長く人々に記憶されるでしょう。

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