マイトマイシンC

マイトマイシンC（MMC）：抗がん剤としての効果と安全性

マイトマイシンC（MMC）は、抗腫瘍性抗生物質に分類される抗がん剤です。1955年、北里研究所の研究者らによって発見され、その後、協和発酵工業の研究者らによって紫色の結晶として分離されました。現在、協和発酵キリン株式会社から販売されています。ハーバード大学の研究者もその合成に成功しています。

効能・効果

マイトマイシンCは、幅広い種類のがん治療に用いられてきました。主な適応がん種としては、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、胃癌、結腸・直腸癌、肺癌、膵癌、肝癌、子宮頸癌、子宮体癌、乳癌、頭頸部腫瘍などがあります。

2022年10月には、効能・効果、用法用量の一部変更が承認されました。静脈内投与以外の投与経路（動脈内、髄腔内、胸腔内、腹腔内、膀胱内）が削除され、膀胱内投与に伴う膀胱腫瘍の適応も削除されています。ただし、眼科手術における補助用途（マイトマイシン眼科外用液）は残されています。

作用機序

マイトマイシンCは、体内で様々な酵素によって還元され、複数の活性代謝物を生じます。これらの活性代謝物は、DNAに架橋を形成したり、アルキル化を起こしたり、フリーラジカルによってDNA鎖を切断したりすることで、DNAの複製を阻害します。このDNA複製阻害作用が、マイトマイシンCの抗腫瘍効果の基礎となっています。活性代謝物は、N-アルキル化剤であるミトセン誘導体であると考えられています。

副作用

マイトマイシンCの使用には、重大な副作用のリスクが伴います。溶血性尿毒症症候群、微小血管症性溶血性貧血、腎障害（急性腎不全など）、骨髄抑制（汎血球減少、白血球減少、好中球減少、血小板減少、出血傾向、貧血など）、間質性肺炎、肺線維症、ショック、アナフィラキシー様症状、肝・胆道障害（胆嚢炎、胆管壊死、肝実質障害など）などが報告されています。

その他、頻度の高い副作用としては、食欲不振、悪心・嘔吐、倦怠感、体重減少などがあります。膀胱注入時には、5％以上の患者で膀胱炎や血尿が発生する可能性があります。脱毛も起こることがあります。

がん以外の用途

マイトマイシンCは、がん治療以外にもいくつかの用途があります。眼科手術では、緑内障濾過術後の瘢痕化や、屈折矯正手術後の霧視の予防に用いられます。また、斜視手術における瘢痕化の軽減にも効果があります。さらに、気道狭窄や食道狭窄の拡張術後には、再狭窄の防止を目的として粘膜への塗布が行われます。

安全性と自主回収

2019年10月、協和発酵キリンは、マイトマイシン注用2mgおよび10mgについて、原薬の無菌性の確保に影響する可能性のある事実が判明したため、自主回収を発表しました。供給も停止されましたが、2021年を目途に再開が予定され、2023年に供給が再開されました。

まとめ

マイトマイシンCは、強力な抗腫瘍効果を持つ一方で、重大な副作用のリスクも伴う抗がん剤です。使用にあたっては、医師による適切な診断と管理が不可欠です。2019年の自主回収を経て、安全性への更なる配慮がなされているものと考えられます。 医師の指示に従って正しく使用することが重要です。

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