マウルティア

マウルティア(Maultier)：第二次世界大戦のハーフトラック

概要

マウルティアとは、ドイツ語で「ラバ」という意味を持つ言葉で、第二次世界大戦中にドイツ軍が運用したハーフトラックの総称です。このハーフトラックは、既存のトラックを改造して製造され、特定の車両を指すものではなく、広範な用途で使用された簡易型ハーフトラックを指します。

開発と背景

1941年から1942年にかけて、東部戦線におけるドイツ軍は厳しい泥濘期に直面しました。この時期、通常の軍事行動に加え、前線の部隊への物資補給が困難となり、行動可能だったのは装軌式のトラクターやハーフトラックのみでした。しかし、ナチス・ドイツが初めに開発したハーフトラックは高価で、補給任務には適さず、数も不足していました。

この問題を解決するために、多くの部隊は既存の民生用トラックを改造したマウルティアを用いるようになったのです。1942年には、オペル、フォード（ドイツフォード）、マギルス（KHD）の各社に、3トントラックをベースにした車両の生産が発注され、同年末より製造が開始されました。

構造と特徴

マウルティアは基本的にトラックの後部を装軌式に改造したもので、装軌の設計にはいくつかの異なる型式が試みられました。特に3トントラックを基にしたものについては、イギリス軍から鹵獲したユニバーサル・キャリアやカーデンロイド軽戦車から部品を流用し、開発されたものが量産型として採用されました。転輪やサスペンションはカーデンロイドの設計を踏襲し、履帯はI号戦車と同様の型式が使用されました。

オペル製のマウルティアは「ブリッツ」の名で知られる3.6-36Sを基にしたSd Kfz 3a、フォード製はV3000Sを基にしたSd Kfz 3b、マギルス製はS3000を基にしたSd Kfz 3cという型式名で生産されました。これらの型式は合わせて合計で2万両以上生産され、その中でもフォード製が最も多く、約14,000両が製造されました。

さらに、4.5トンのメルセデス・ベンツL4500Sをベースとしたマウルティアもあり、当初はSd kfz 4という型式で呼ばれた後、Sd Kfz 3/5に改名されました。この車両も1943年から1944年にかけて1480両が生産され、主に重国防軍牽引車（sWS）の代替として利用されました。

特殊型と装甲車両

1943年には、オペル製のマウルティアを基にした装甲車両として、ロケットランチャーを搭載したパンツァーヴェルファーも製造されました。さらに、東部戦線では悪路によりハーフトラックでも通行が困難なエリアがあったため、全装軌車両RSOトラクターの開発も行われました。

型式一覧

ここではマウルティアの主要な型式をまとめておきます。

• - Sd.Kfz.3
• - Sd.Kfz.3a - オペル・ブリッツ3.6-36S ベースの2tマウルティア
• - Sd.Kfz.3b - フォード・V3000S ベースの2tマウルティア
• - Sd.Kfz.3c - マギルスKHD・S3000 ベースの2tマウルティア
• - Sd.Kfz.3/5 - L4500Sベースの4.5tマウルティア
• - Sd.Kfz.4 - L4500Sに基づく4.5tマウルティア
• - Sd.Kfz.4/1 - パンツァーヴェルファーのロケットランチャー搭載車両

これらの型式は、いずれもドイツ軍の運用において重要な役割を果たし、戦争の様々な局面で活用されました。

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