マクセル UR

マクセル カセットテープ「UR」の歴史と詳細

「UR」（Ultra Reference）は、1984年3月に電響社マクセル事業本部（旧マクセル コンシューマー事業部、現マクセルホールディングス）から発売された、音楽録音および一般録音用のカセットテープです。マクセルブランドで製造され、日立グローバルライフソリューションズが流通と販売を担当しています。

この記事では、2012年3月から2017年3月まで製造・出荷されたマクセルのエントリーモデルである「UL」（Ultra Low Noise）と、2012年3月から2019年12月まで製造・出荷され、2021年3月までダイソー専売で販売された「音楽用カセットテープ」（UL(H)）についても解説します。

特徴

「UR」と3代目「UL」は、どちらもノーマルポジションのLH（Low-Class Low Noise High-Output）グレードに属します。「UR」は、1982年3月から1984年2月まで販売された2代目「UL」の後継として登場しました。1985年9月には、初代「UR」の派生モデルとして、無色透明のカセットハーフとスリップシートを採用した「UR-F」が発売されました。

3代目「UL」は、2012年3月に予告なく発売され、ダイソー専売の1巻売り「音楽用カセットテープ」を除き、2017年3月に製造を終了しました。ダイソー専売の1巻売り「音楽用カセットテープ（UL(H)）」も2019年12月に製造・出荷を終え、2021年3月までに市場から姿を消しました。

ケースは、スリムではないラウンドPケースを採用し、使いやすさを重視しています。2024年8月現在、テープ（磁性体とベースフィルム）と組み立てはインドネシアで行われています。

2012年7月以降に出荷された製品（UR-L後期ロット）からは、ハーフが4本ねじ止め式に変更されました。以前は遮磁板が使われていましたが、2014年3月以降の製品（UR-L後期仕様）からは製造コスト削減のため省略されました。リーダーテープは、マクセル独自のA/B面と走行方向を示すセルフクリーニングリーダーテープが採用されていましたが、2017年3月の改良後はA/B面の表示がないセルフクリーニングリーダーテープに変更されました。

かつては「UR」とほぼ同じ磁性体を使用した「SOUND」や「My1」「COLOR CLUB（CC）」、ハイポジション版の「My2」なども存在しました。

「UR」と3代目「UL」の違い

「UR」は、スモーク仕上げの半透明ハーフに直接シルク印刷を施し、鉛筆などで直接書き込める「楽がき」タイトルスペースとカラフルなタイトルラベルを採用していました。しかし、2020年3月のリニューアルでこれらは廃止されました。一方、3代目「UL」は製造コストを抑えるため、スリップシートに直接印刷し、無色透明のハーフにはタイトルラベルを使用するか、マジックで書き込む必要がありました。タイトルラベルも簡素化され、全体的に安価な印象でした。

2020年3月のリニューアルでは、2000年代風のパッケージデザインに変更し、より幅広いユーザー層にアピールするデザインとなりました。30分と46分のモデルがラインナップから外れ、マルチパックは従来の10本パック、4本パック（90分除く）、3本パック（90分のみ）から、全て5本パックに統一されました。また、カセットレコーダーやデッキでの検証実験では、リニューアル前のモデルに比べてMOL特性が改善され、1990年代の音楽録音専用標準LH級ノーマルポジション用カセットテープと同等の大入力での録音が可能になりました。

2023年4月以降の製造・出荷ロットからは、製造事業者がマクセル株式会社から株式会社電響社に変更されました。

「UR」は、2025年現在、日本メーカー製のカセットテープの商標として41年を数え、ソニーの「HF」（1970年 - 2015年、シリーズ通算45年）に次ぐ長寿ブランドです。

ラインナップ

「UR」の現在のラインナップは、以下の4種類です。

UR-10N
UR-20N
UR-60N
UR-90N

各1本と5本パックで販売されています。10本パックは一旦販売終了しましたが、後に「UL」の10本パックに代わる形で復活、しかし2020年3月のリニューアルで再び廃止されました。また、4本パック（90分除く）と3本パック（90分のみ）も2020年3月のリニューアルに伴い廃止されました。

2020年3月に一部改良が施されたほか、2022年6月以降に製造・出荷された製品では、磁気テープ本体の品質が見直されました。一部改良前の型番の末尾は「M」です。価格は全てオープン価格です。

初代「UR」の派生モデルである「UR-F」は、以下の4種類のタイムバリエーションでした。

UR-F46
UR-F50
UR-F60
UR-F90

このうち、46分用と50分用は、歴代「UR」シリーズで唯一ラージハブが採用されていました。

1994年から1995年まで販売された「UR-##GK」シリーズ（150分用を除き全て韓国製）は、リニューアルによって短期間で生産終了しました。ラインナップは以下の通りです。

UR-10GK
UR-46GK
UR-60GK
UR-90GK
UR-120GK
UR-150GK

ダイソー専売の1巻売り「音楽用カセットテープ」を含む3代目「UL」は、以下の3種類のタイムバリエーションでした。

UL-10(H)
UL-60(H)
UL-90(H)

量販店向けには4本パック（90分のみ3本パック）、10本パックで販売されていました。価格は全てオープン価格でした。

参考資料

ONTOMO MOOK カセットテープ完全アルバム 僕たちの青春を彩ったカセットテープのすべて（2023年12月1日発行、音楽之友社、ISBN 978-4-276-96368-9）
FUTABASHA SUPER MOOK マクセル・カセットテープ・マニアックス（2024年1月15日発行、双葉社、ISBN 978-4-5754-5960-9）

関連項目

ソニー HF：最末期はUL（UL〈H〉）のOEMとして販売
パナソニック PX：最末期はUR（UR-L）のOEMとして販売
TDK AE：かつての「UR」の競合製品、2011年のタイ大洪水の影響で生産終了
AXIA A1：かつての「UR」の競合製品、富士フイルムグループの事業再編により2006年末までに販売終了

外部リンク

カセットテープ「UR」［個人向け］ - マクセル株式会社

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