AXIA

AXIA（アクシア）：富士フイルムが生んだオーディオブランドの軌跡

AXIAは、富士フイルムイメージング株式会社（現・富士フイルム株式会社）が1985年6月から2006年9月まで展開していた、コンパクトカセット用磁気テープを主力とするブランドです。ブランド名のAXIAは、ギリシャ語で「価値があるもの」を意味し、その名の通り、高品質な製品を提供し続けました。ブランドロゴの下には「Active eXciting Innovator All for you」というキャッチフレーズも併記されました。

ブランドの概要

AXIAは日本国内限定のブランドであり、海外市場では「FUJI」ブランド（後に「FUJIFILM」ブランドに変更）で展開されていました。2006年 9月30日にブランドは終了し、21年の歴史に幕を閉じました。ブランド終了の背景には、2000年代に入ってからのオーディオ録音メディアの需要低迷、携帯型デジタルオーディオプレーヤーの台頭、そしてライフスタイルの変化などがありました。

主な製品

AXIAは、コンパクトカセットやMD、録音用CD-R/RWなどの音響メディアを中心に展開していました。その他にも、VHS/S-VHS用ビデオテープ、DAT（デジタル・オーディオ・テープ）、DCC（デジタルコンパクトカセット）、デジタルカメラ、ポータブルオーディオなど、多岐にわたる製品を発売していました。

ブランド導入の背景と歴史

AXIA以前

富士フイルムは、磁気テープ分野で高い技術力を持ち、1960年には東芝と提携してオープンリール用磁気テープを発売しました。その後、自社開発を進め、1969年には「富士フイルムカセットテープ」でカセットテープ市場に参入しました。1976年には業界初のダブルコーティング技術を採用したカセットテープ「FX-DUO」を、1977年には「Renge2」を、そして1979年にはメタルポジション用カセットテープ「Super Range」を発売するなど、技術革新を重ねました。1980年からは「FUJI CASSETTE」ブランドで展開しましたが、先行する大手3社（TDK、ソニー、日立マクセル）に比べ、販売面で苦戦を強いられていました。

AXIAブランドの誕生

市場調査の結果、「FUJI」ブランドの評価が低いと判断した富士フイルムは、1985年に新たなブランド「AXIA」を立ち上げました。ターゲットを中学生に絞り、徹底的なマーケティング調査を実施し、スケルトンタイプの高精度カセットハーフやカジュアルなパッケージデザインを採用。さらに、当時人気のアイドル、斉藤由貴をイメージキャラクターに起用しました。これらの戦略が功を奏し、市場シェアは大幅に上昇し、大手3社と肩を並べるまでに成長しました。

1989年には、独自の「スリムケース」を開発し、主力製品の「PS」シリーズに採用。ヘッドホンステレオと共に持ち歩くユーザーニーズを捉え、爆発的なヒットを記録しました。その後、競合他社も同様の薄型ケースを開発し、スリムケースが標準的なカセットケースのサイズとなりました。

ビデオテープへの展開

1989年 4月には、VHS用ビデオテープにも「AXIA」ブランドを導入し、ダブルコーティング技術やダブルオリエンテーション技術を駆使した高品質な製品を提供しました。ビデオテープのCMにはロック歌手の矢沢永吉を起用し、話題を呼びました。

カメラへの進出

2001年には、低価格トイデジカメ「IX-1」を発売し、デジタルカメラ市場にも参入しました。2002年には、実売価格が約1万円という低価格の「eyeplate」を発売し、大きな反響を呼びました。

ブランドの終焉

2004年10月に経営統合し、富士フイルムイメージング株式会社に社名変更。その後、新製品の投入は全くなくなり、2006年9月末にすべての記録用メディア製品の生産・販売を終了。46年の歴史に幕を閉じました。その後、富士フイルムイメージングも富士フイルムに吸収され、家庭用磁気記録メディア市場から撤退しました。

オーディション

富士フイルムアクシアは、「AXIAミュージックオーディション」を主催し、多くのアーティストのメジャーデビューを後押ししました。

CMキャラクター

AXIAのCMには、数多くの著名人が起用されました。カセットテープのCMには、斉藤由貴、ブライアン・フェリー、スティング、浅香唯、機動警察パトレイバー、ボン・ジョヴィ、爆風スランプ、矢沢永吉、坂井真紀、LINDBERG、hyde、ともさかりえなどが登場しました。MDのCMには、JUDY AND MARY、ユースケ・サンタマリア、黒澤優が起用されました。また、ビデオテープのCMには矢沢永吉が起用されました。

参考文献

岩井正和『富士写真フイルム『AXIA』に賭けた夢』講談社、1989年、ISBN 4-06-192869-4
ONTOMO MOOK stereo編『カセットテープ完全アルバム僕たちの青春を彩ったカセットテープのすべて』音楽之友社、2023年、ISBN 978-4-276-96368-9