マッハの恐怖

『マッハの恐怖』は、ジャーナリスト柳田邦男氏による、一連の航空機事故を追ったノンフィクション作品です。1971年にフジ出版社から刊行され、1972年には第3回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しました。この作品は、単なる事故の記録にとどまらず、当時の社会状況や航空業界の構造的な問題点にまで深く切り込んでいます。

作品の概要

1966年に相次いで発生した全日空羽田沖墜落事故、カナダ太平洋航空機墜落事故、英国海外航空機空中分解事故という、３つの航空機事故を軸に、事故原因と事故調査委員会の在り方、航空会社や製造メーカー、当局の姿勢を詳細に分析しています。

当時の日本では、航空事故を理論的かつ科学的に分析する書籍はほとんどなく、マスコミも一時的な「事故」として感情的に報道する傾向がありました。しかし、柳田氏は、これらの事故を、高度経済成長を続ける日本社会の歪みと関連付け、深く掘り下げて分析しました。

この斬新な視点が読者の支持を集め、当時、ベストセラーとなりました。その後、NHKでラジオドラマ化もされています。

続編について

『マッハの恐怖』の続編では、1971年に発生した東亜国内航空の「ばんだい号墜落事故」や、全日空松山沖墜落事故、そして1972年に相次いで発生した日本航空の事故（羽田空港暴走事故、ニューデリー墜落事故、金浦空港暴走事故、ボンベイ空港誤認着陸事故、シェレメーチエヴォ墜落事故）などを取り上げています。

さらに、デ・ハビランド DH.106 コメット機の連続空中分解事故や、アメリカのイースタン航空のロッキード L-1011 トライスター機墜落事故（イースタン航空401便墜落事故）など、様々な原因による航空事故を多角的に分析しています。これらの分析を通して、航空機事故は単一の原因ではなく、複雑な要因が絡み合って発生しているという事実を浮き彫りにしています。

作品の意義

『マッハの恐怖』は、航空事故の真相を追求するだけでなく、当時の社会情勢や組織のあり方にも深く切り込んだ作品です。柳田氏の徹底的な取材と分析によって、単なる事故報道では見過ごされがちな、事故の背景にある構造的な問題が明らかになりました。この作品は、現代社会が抱える問題点を考える上で、重要な示唆を与えてくれます。

書誌情報

柳田邦男『マッハの恐怖―連続ジェット機事故を追って』フジ出版社、1971年
柳田邦男『マッハの恐怖〈続〉―連続ジェット機事故鎮魂の記録』フジ出版社、1973年
柳田邦男『マッハの恐怖―連続ジェット機事故を追って』フジ出版社、1983年 ISBN 978-4-89226016-2 - 新組版
柳田邦男『マッハの恐怖（続〉―連続ジェット機事故鎮魂の記録 』フジ出版社、1985年 ISBN 978-4-89226027-8 - 新組版
柳田邦男『マッハの恐怖』新潮社〈新潮文庫〉、1986年 ISBN 978-4-10124905-6
柳田邦男『続・マッハの恐怖』新潮社〈新潮文庫〉、1986年 ISBN 978-4-10124906-3
柳田邦男編著「マッハの恐怖」『技術社会の影』文藝春秋〈同時代ノンフィクション選集〉、1992年 ISBN 978-4-16511290-7

関連情報

事故
航空事故
全日空の航空事故およびインシデント
日本航空の航空事故およびインシデント

外部リンク

全日空
* 日本航空

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