マリア・ブランコヴィチ (ボスニア王妃)

マリア・ブランコヴィチ：ボスニア最後の王妃、波乱の生涯

マリア・ブランコヴィチ（1447年頃 - 1500年頃）は、ボスニア王国の最後の王妃であり、その生涯は激動と波乱に満ちていました。彼女はセルビア専制公ラザル・ブランコヴィチの娘として生まれ、当初はイェレナという名で呼ばれていました。

生い立ちと結婚

マリアは、セルビア専制公ジュラジ・ブランコヴィチの孫娘として、1447年頃に誕生しました。1458年、父ラザルの死後、セルビア専制公国はオスマン帝国の脅威にさらされており、母エレニは政略結婚によって王国を守ろうとしました。そこで、マリアはボスニア王トマシュの息子、スティエパン・トマシェヴィチと結婚することになったのです。1459年、スティエパンとの結婚を機に、イェレナはカトリックに改宗し、マリアと改名しました。

セルビア専制公妃、そしてボスニア王妃へ

しかし、スティエパンのセルビア統治は長くは続きませんでした。オスマン帝国のスルタン、メフメト2世は、スティエパンの即位をオスマン帝国の宗主権への侵害とみなし、1459年にセルビアへ侵攻。セルビア専制公国は滅亡し、スティエパンとマリアはボスニアへと逃れました。

1461年、スティエパンはボスニア王位を継承し、マリアはボスニア王妃となりました。しかし、その治世も長くは続きませんでした。1462年、スティエパンがオスマン帝国への貢納を停止したことがきっかけで、再びオスマン帝国の侵攻を招き、1463年にボスニア王国は滅亡。スティエパンは処刑され、マリアは辛くも捕縛を逃れ、亡命生活を送ることになりました。

放浪の末、オスマン帝国へ

マリアはアドリア海沿岸を転々としながら、ヴェネツィアやハンガリーなどを経て、最終的にオスマン帝国領ギリシアに身を寄せました。叔母であるマラ・ブランコヴィチとカタリナ・ブランコヴィチのもとで一時を過ごした後、コンスタンティノープルへ移り、メフメト2世やバヤズィト2世の庇護を受けました。

訴訟と詐欺、そして晩年

コンスタンティノープルでのマリアは、訴訟や詐欺を繰り返す日々を送りました。ラグサ共和国に対する財産請求や、アトス山の修道院に対する訴訟など、その行動は周囲から「悪女」と評されるほどでした。彼女の訴訟はスルタンの介入を招き、ラグサ共和国や修道院を悩ませました。

マリアが数々の法廷闘争や詐欺をスルタンに支持された理由は定かではありません。1500年頃、マリアはチョルルで亡くなったとされ、母方の叔父マヌエル・パレオロゴスの隣に埋葬されたと考えられています。

ボスニア最後の王妃マリア・ブランコヴィチ。激動の時代を生き抜いた彼女の生涯は、野心と策略、そして生き残るための執念に満ち溢れていました。

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