マリナー9号

マリナー9号：火星探査の先駆者

マリナー9号は、NASAのマリナー計画において重要な役割を果たした火星探査機です。1971年5月30日に打ち上げられ、同年11月14日に火星軌道に到達しました。これは、他の惑星の周回軌道に乗った初の探査機という歴史的な偉業でした。ただし、ソビエト連邦のマルス2号・3号もほぼ同時期に火星に到着しており、競争が激しかったことが伺えます。

マリナー9号が火星に到着した当時、火星は数ヶ月にも及ぶ砂塵嵐に見舞われていました。このため、当初の計画通りに火星表面の撮影を行うことができませんでした。しかし、この砂塵嵐こそが、マリナー9号が軌道上からの観測という新たなアプローチの重要性を示すこととなりました。地球からの指令により、マリナー9号は砂塵が収まるまで撮影を延期し、その後、驚くほど鮮明な火星表面の画像を地球に送信することに成功しました。

探査の目的と達成

マリナー9号の主な目的は、マリナー6号と7号から始まった大気調査をさらに進め、より詳細な火星の地形図を作成することでした。そのため、これまでの火星ミッションよりも低い高度（約1500km）から、高解像度（1ピクセルあたり1km〜100m）での観測を行うように設計されました。これにより、火星表面の70%以上の地形図を作成することに成功しました。

また、火山活動の証拠を探すための赤外線放射計も搭載しており、火星の2つの衛星（フォボスとダイモス）を観測することも目的としていました。これらの目標はすべて十分に達成され、マリナー9号は火星探査において大きな進歩をもたらしました。

成果と発見

マリナー9号は、火星軌道上で349日間活動し、7,329枚もの画像を地球に送信しました。これらの画像は、火星表面の約80%をカバーしており、それまで知られていなかった様々な地形や現象が明らかになりました。

特に、以下のような発見は注目に値します。

川床の痕跡: かつて火星に水が流れていた証拠となる地形が発見されました。
クレーター: 数多くのクレーターが確認され、過去の隕石衝突の歴史が示されました。
巨大な休火山: 太陽系最大の火山であるオリンポス山をはじめとする巨大な休火山が確認されました。
峡谷: 長さ4,000kmを超えるマリネリス峡谷など、大規模な峡谷が発見されました。
侵食と堆積: 風や水による侵食や堆積の証拠が見つかり、火星の地質学的な歴史が解明されました。
フォボスとダイモス: 火星の2つの衛星であるフォボスとダイモスが撮影され、その形状や表面の様子が明らかになりました。

これらの発見は、その後のバイキング計画など、火星探査における重要な基礎となりました。特に、巨大なマリネリス峡谷は、マリナー9号の功績を記念して名付けられました。

運用終了と現在

マリナー9号は、高度制御ガスの供給が減少したため、1972年10月27日に運用を停止しました。しかし、その遺産は今もなお続いています。マリナー9号は現在も火星の軌道上に存在しており、少なくとも2022年まではその状態を保つと考えられています。その後、火星の大気圏に突入し、最終的には燃え尽きるだろうと予測されています。

その他の情報

* マリナー9号に搭載された紫外線分光計は、コロラド大学ボルダー校の大気宇宙物理学研究所 (LASP) によって製造されました。

まとめ

マリナー9号は、火星探査の歴史において、重要な転換点となった探査機です。その成果は、後の火星探査の発展に大きく貢献し、火星という惑星に対する私たちの理解を大きく深めました。マリナー9号の遺産は、今後も宇宙探査の歴史の中で語り継がれていくでしょう。

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