マーチ・86G

マーチ・86G (March 86G)

マーチ・86Gは、イギリスのマーチ・エンジニアリングによって1986年に設計された汎用シャシで、主にグループCやIMSA-GTPのレースに使用されました。この車両は、全体で11台が製造され、そのうちの6台はIMSAに参加するマクラーレン・ノースアメリカのBMW-GTP仕様として制作されました。また、全日本耐久選手権およびル・マン24時間レースに参戦するため、日産が4台を購入しました。残りの1台は、米国のゼネラルモーターズ製エンジンを搭載していました。

様々な仕様のシャシ

日産用、BMW用、ゼネラルモーターズ用のシャシはそれぞれ異なる外観を持ち、特にホイールアーチなどのデザインに違いがあります。日産の116R86Vは、1985年シーズンに「シルビアターボC」と「スカイラインターボC」として活躍したマーチ・85Gに基づいており、1986年シーズンには新たに「日産・R86V」の名前でレースに参加しました。日産自動車の大久保芳美によって命名されたこのモデルには、3.0L V型6気筒ターボエンジンVG30が搭載されています。

日産のレース戦績

日産は86G-5から86G-8の4台を取得、最初はホシノレーシングに一台が提供されましたが、最終的には日産ワークスチームであるニスモにリースされました。1986年4月6日に行われた全日本耐久選手権開幕戦「鈴鹿500km」が最初のレースとなったものの、ホシノレーシングの86G-5はプラクティス中のエンジントラブルで決勝には出場できませんでした。実質的なデビューは第2戦の富士1000kmで、チーム・ルマンのマシンが5位に入賞しました。

この年、86G-5はル・マン24時間レースにも出場しましたが、予選で24位を記録し、決勝ではギアボックスの故障により早々にリタイアしました。帰国後の日産のレース成績は良好でしたが、リタイアが相次ぎ、一度も表彰台に立つことはできませんでした。1987年には新型のマーチ・87Gに切り替えられるものの、86Gはサテライトチームで使用され、依然として好成績を収めました。

BMW GTPでの活動

一方、86Gのシャシー番号86G-1から86G-4は、BMW IMSAチームによって購入されてBMW・GTPという名称で運用されました。これらの車両は、1986年のIMSA GTPクラスにエントリーされ、ドライバーにはデイビー・ジョーンズやジョン・アンドレッティなどが名を連ねました。BMW North Americaはシーズン開始に向けて準備を進めていましたが、テスト中に火災が発生し、初戦を欠場することとなります。

BMW GTPは次のレースであるマイアミグランプリから本格的に運用を開始しました。しかし、最初のシーズンは苦戦が続きました。いくつかのレースで成績を収めたものの、なかなか表彰台には上がれず、最終的にはドライバーズチャンピオンシップでアンドレッティやジョーンズはある程度の成績を残したものの、BMWはシーズン終了後にIMSA GTPからの撤退を決定しました。

まとめ

マーチ・86Gは、日産やBMWといった名だたるメーカーにより発展させられ、多様な仕様や戦績を持ったレーシングカーです。グループCやIMSAシーンでの活躍は、今でもレースファンの記憶に残る重要な存在です。

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