ミシシッピ級戦艦

ミシシッピ級戦艦：アメリカ海軍最後の準弩級戦艦

ミシシッピ級戦艦は、アメリカ海軍が第一次世界大戦前に竣工させた、コネチカット級戦艦に続く最後の準弩級戦艦の艦級です。本級は、「低コストで生産できる小型戦艦」というアルフレッド・セイヤー・マハン少将の提案に基づき、近海での使用を前提として設計されました。

概要

コネチカット級が過剰な武装と高コストであった反省から、ミシシッピ級は艦形を圧縮・小型化し、安価での建造を目指しました。結果として、「ミシシッピ」と「アイダホ」の2隻が建造されました。しかし、小型の船体に30.5cm砲、20.3cm砲、17.8cm砲という多種多様な口径の砲を搭載し、日露戦争の戦訓を取り入れた防御設計を行ったため、重武装・重防御である一方、操舵性能と安定性に欠けるという結果となりました。さらに、ドレッドノートの登場により、新造艦でありながら二線級扱いとなってしまいました。

アメリカ海軍は、本級の海外売却を積極的に進め、1914年にはギリシャ海軍に2隻を売却しました。この売却で得た資金は、本来2隻のみ建造予定だった超弩級戦艦「ニューメキシコ級」を1隻追加し、計3隻を建造するのに役立てられ、3番艦には「アイダホ」の名前が与えられました。

艦形

ミシシッピ級は、前弩級戦艦特有の長船首楼型船体を採用し、全長に比べて船体の幅が狭いという特徴がありました。基本デザインは前級を踏襲しており、艦首水面下には衝角（ラム）が設けられ、その下部には水中魚雷発射管が備えられていました。主砲には、新設計の「1906年型30.5cm（45口径）砲」を連装砲塔に1基搭載し、その背後には司令塔を組み込んだ操舵艦橋と円柱状のミリタリーマストが配置されていました。マストには4.7cm砲を備えた二段の見張り台がありました。船体中央部には2本煙突があり、その周囲は艦載艇置き場となっており、運用のため2番煙突の後方にはグースネック型クレーンが片舷1基ずつ設置されていました。後部艦橋の上にはマストが立ち、甲板一段分下がった後部甲板には2番主砲塔が後向きに1基搭載されていました。艦尾には艦長室が設けられました。

舷側甲板上には、中間砲として20.3cm砲を連装砲塔に片舷2基ずつ、計4基搭載しました。さらに、舷側には副砲として17.8cm速射砲を片舷に4基ずつ、計8基搭載しました。この武装配置により、艦首尾方向に最大で30.5cm砲2門、20.3cm砲4門、17.8cm砲2門、左右舷側方向に最大で30.5cm砲4門、20.3cm砲4門、17.8cm砲4門を指向できました。

竣工後の1909年には、後部艦橋上のマストが籠状の後部マストに交換され、1911年には前部ミリタリーマストも同様の籠状マストに更新され、前後対称的な外観となりました。

武装

主砲

主砲には、前級から引き続き「1906年型 Mark 7 30.5cm（45口径）砲」が採用されました。この砲は自由装填方式を採用しており、どの角度からでも装填ができました。仰角は最大15度から－5度まで、旋回角度は左右共に125度でした。動力は電動が主で、非常時には人力も使用できました。揚弾薬機は電動式で、発射速度は2～3分に1発でした。射程は最大仰角15度で18,290m、射距離8,200mで舷側装甲310mm、射距離10,920mで251mmを貫通する能力を持っていました。

その他の備砲・水雷兵装

副砲には、破壊力を重視して「1906年型 Mark 6 20.3cm（45口径）砲」が採用されました。これは当時の列強で装甲巡洋艦の主砲と同等の7～12インチ砲を搭載する流行に倣ったものです。この砲塔も自由装填方式を採用しており、仰角は最大20度から－7度、旋回角度は左右共に135度でした。動力は電動、非常時には人力も使用できました。揚弾薬機は電動式で、発射速度は毎分1～2発でした。射程は最大で20,575mと主砲より長く、射距離8,200mで舷側装甲139mm、射距離10,920mで118mmを貫通する能力を持っていました。この砲を、波浪の影響を受けにくい舷側の最上甲板の上方に連装砲塔で4基搭載しました。

対巡洋艦用には、「1906年型 Mark 2 17.8cm（44口径）速射砲」を採用しました。単装砲架で、仰角は最大15度から－7度、旋回角度は150度でした。射程は最大仰角15度で15,090m、射距離8,200mで舷側装甲109mm、射距離10,920mで81mmを貫通する能力を持っていました。これを最上甲板の舷側下部に片舷4門ずつ計8門搭載しました。

その他、水雷艇迎撃用として「7.6cm（50口径）砲」を単装砲架で片舷6門、計12門、「4.7cm（45口径）砲」を単装砲架で6門、53.3cm水中魚雷発射管を単装で2基搭載しました。

艦体

船体は船首楼型を採用し、舵は主舵のみでした。

機関

公試では、24時間自然通風航走状態で出力13,607psで速力17.11ノットを発揮しました。通常運転では10,000ps、速力17ノットとしました。燃料消費量から計算された航続距離は、速力10ノットで5,750海里でした。艦内電力として出力100kwの蒸気発電機8基を搭載していました。本級は、速力が他の主力艦よりも遅く、船体が小型で凌波性も劣るため、艦隊運動に支障をきたし、将兵から不満が出ました。

艦歴

本級の2隻は、1914年7月にギリシャ政府に購入されました。

同型艦

ミシシッピ (USS Mississippi, BB-23)
アイダホ (USS Idaho, BB-24)

関連項目

アメリカ海軍艦艇一覧
ギリシャ海軍艦艇一覧

外部リンク

Mississippi Class (Battleships 23 & 24) - ミシシッピ級の説明があるページ。（英語）
USS Mississippi (Battleship #23) BB-23 Kilkis - 「ミシシッピ」と「キルキス」の写真があるページ。
* USS Idaho (Battleship #24) BB-24 Lemnos - 「アイダホ」と「レムノス」の写真があるページ。

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