ミスターヨシゼン

ミスターヨシゼンは、1980年代後半から1990年代初頭にかけて、地方競馬のアラブ系競走で一時代を築いたアングロアラブ種の歴史的名馬です。特に年末のグランプリレースである全日本アラブ大賞典を2年連続で制覇した功績は大きく、その強烈な末脚と粘り強さで多くのファンを魅了しました。

競走馬時代

ミスターヨシゼンの輝かしいキャリアは、1986年11月27日、大井競馬場での3歳新馬戦で幕を開けました。このデビュー戦では、並み居るライバルたちを尻目に、後続に9馬身もの大差をつけて圧勝。その素質の高さを見せつけました。

デビュー後は一頓挫あって休養に入りますが、翌1987年3月に戦列に復帰すると、復帰後すぐに2連勝を飾り、南関東クラシック戦線の有力候補に名乗りを上げます。南関東アラブ三冠の初戦である千鳥賞こそ5着に敗れましたが、続くアラブダービーでは見事な勝利を収め、さらにその後のアラブ王冠賞も制して、南関東アラブ二冠馬の栄誉に輝きました。この年、年末の全日本アラブ大賞典にも挑戦しましたが、ここではローゼンホーマの前に10着と大敗を喫し、課題を残しました。

5歳となった1988年は、年明け緒戦こそ4着、5着と精彩を欠きましたが、6月の渋谷特別を制したことを皮切りに、かつての輝きを取り戻します。この勝利から朝凪賞、そして重賞であるワード賞を連勝。さらに約3ヶ月の休養明けとなった小岩特別までも制し、怒濤の4連勝を達成しました。続く勝島賞では3着となりましたが、満を持して臨んだ2度目の全日本アラブ大賞典では、スタートから果敢にハナを奪う積極的な逃げの戦法を選択。直線でも脚色は衰えることなく、追走してきたオタルホーマーを4馬身突き放す圧巻のパフォーマンスで、待望の全日本アラブ大賞典初制覇を果たしました。

6歳を迎えた1989年は、年初の銀盃を2着に5馬身差をつける圧勝劇でスタート。その強さは健在であることを示しました。船橋記念とワード賞では惜しくも2着に敗れましたが、秋には当時試験的に行われていたサラブレッドとの混合レースに挑戦。9月の東京盃（ダート1200m）では、格上となるサラブレッド相手に3着と健闘し、続く10月のおおとり賞（ダート1800m）では見事に優勝を飾り、アングロアラブの能力の高さを証明しました。

そして、この年の締めくくり、自身の現役最後のレースとして選んだのは、3年連続出走となる全日本アラブ大賞典でした。前年同様、スタートから先頭に立つと、後続に影を踏ませることなく逃げ切り勝ちを収め、史上2頭目となる全日本アラブ大賞典連覇という偉業を達成しました。この歴史的な勝利を花道に、ミスターヨシゼンは現役を引退。この1989年シーズンは7戦4勝という素晴らしい成績を残し、獲得賞金は5606万円に達しました。これは、この年の地方競馬におけるアラブ系競走馬の中で最も多い金額であり、ミスターヨシゼンがまさに当時のアラブ競馬界の盟主であったことを証明するものでした。

引退後

競走馬を引退したミスターヨシゼンは、北海道門別町にて種牡馬として第二の馬生を歩み始めました。2002年までの13年間にわたり種牡馬生活を送り、自身の血を後世に伝えるべく、合計636頭もの産駒を世に送り出しました。産駒の中には、中央競馬のフラワーカップ勝ち馬であるタニノアローラ、地方競馬で楠賞全日本アラブ優駿など重賞を多数制覇したケイエスヨシゼン、そして全日本アラブ争覇を制したタービュレンスなど、活躍する馬を輩出し、種牡馬としてもその影響力を示しました。

ミスターヨシゼンは、競走馬として南関東の主要レースや全日本アラブ大賞典を制し、サラブレッドとも互角以上に渡り合っただけでなく、種牡馬としても成功を収め、日本のアングロアラブ競馬の歴史において、極めて重要な位置を占める名馬としてその名を刻んでいます。

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