ミッドナイトリュート

ミッドナイトリュート (Midnight Lute) は、アメリカ合衆国で活躍した競走馬にして、後に種牡馬となったサラブレッドです。その名を世界に知らしめたのは、何と言っても2007年と2008年、2年連続で制覇したブリーダーズカップ・スプリントでしょう。この輝かしい実績に加え、G1競走で3勝を挙げ、2007年度にはエクリプス賞最優秀スプリンターに選出されるなど、アメリカ競馬史に名を刻む競走馬となりました。

ミッドナイトリュートは1歳時にキーンランドの1歳馬市場で競り落とされ、その後、カリフォルニアを拠点とする名伯楽ボブ・バファート厩舎に所属することになります。2歳時、7月末に行われたメイドンレース（新馬戦）でデビュー。パット・ヴァレンズエラ騎手を背に初陣を飾りました。しかし、その後喘鳴症を発症し、長期の休養を余儀なくされます。

1年後の復帰後、アローワンス（一般戦）を2戦こなした後、ペリーヴィルステークス（G3）で見事重賞初勝利を挙げます。勢いに乗って臨んだ年末のマリブステークス（G1）では3着と健闘し、この年のシーズンを終えました。

2007年、サンフェルナンドブリーダーズカップステークス（G2）で2着に入る好スタートを切りますが、再び喘鳴症の影響が出始め、続くG2競走2戦では4着に敗退。再び喉の治療のため秋まで休養することとなります。休養中は喉軟骨の突起を抑える手術を受けました。

9月、サラトガ競馬場のフォアゴーハンデキャップ（G1）で復帰戦を迎えます。2番人気に支持されたミッドナイトリュートは、第4コーナーから先頭に立ち、そのまま押し切り、G1初制覇を飾りました。この勝利後、バファート調教師は当初、ミッドナイトリュートの距離適性について「6ハロン（約1200メートル）は短すぎる」とコメントしていました。しかし、この年のミッドナイトリュートのベイヤー指数（スピード能力を示す指標）は全米で出走したサラブレッドの中で最高値となる124を記録。調教師はブリーダーズカップ・スプリントを目標に変更します。

前哨戦と目されていたヴォスバーグステークス（G1）を回避し、ブリーダーズカップ・スプリントへ直行。当日は雨で馬場状態が悪化する中、1番人気に応え、イディオットプルーフなどに4馬身以上の差をつけて圧勝。見事G1連勝でブリーダーズカップを制しました。その後もシガーマイルハンデキャップに出走するも2着に終わり、シーズンを終えました。1月には、2007年度エクリプス賞最優秀短距離牡馬に選出されました。

2008年、初戦に向けて調教を進めていた最中に踵を負傷し、休養を余儀なくされます。8月のパットオブライエンハンデキャップで復帰戦を迎えるも10着と大敗。秋まで出走できず、前年同様、ブリーダーズカップ・スプリントに直行することとなります。この年は、G1を2勝しているストリートボスが1番人気でしたが、ミッドナイトリュートは最後の直線で逃げ馬フェイタルブレットを差し切り、見事スプリント史上初の連覇を達成しました。

2008年のブリーダーズカップ・スプリントを最後に競走馬を引退。ケンタッキー州のヒルンデールファームで種牡馬として繋養されています。ミッドナイトリュートは、その優れた遺伝子を受け継ぐ数々の優秀な産駒を輩出しており、種牡馬としても成功を収めています。代表的な産駒には、エイコーンステークスやヒューマナディスタフステークスを制したミッドナイトラッキー、マリブステークスを制したシェイキンイットアップ、そしてサンタアニタオークスやコティリオンステークスなどを制したミッドナイトビスーなどがいます。

ミッドナイトリュートは、喘鳴症というハンデを克服し、類まれなスピードと強靭な精神力で、幾多の激戦を勝ち抜いた伝説的な競走馬です。その偉大な功績は、競馬史に長く語り継がれていくことでしょう。

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