ミナミツチクジラ

ミナミツチクジラとは

ミナミツチクジラ（学名: Berardius arnuxii）は、ハクジラの一種で、アカボウクジラ科に属します。ツチクジラやクロツチクジラとともにツチクジラ属を構成しています。

名前の由来

ツチクジラ属の学名「Berardius」は、本種の頭骨をニュージーランドからフランスへ持ち帰ったAuguste Bérardと、スペンサー・フラトン・ベアードに由来します。種小名の「arnuxii」は、ホロタイプとなる頭骨を採取した船医モーリス・アルヌーにちなんでいます。また、英語では「Southern four-toothed whale」と呼ばれることもあります。

形態

外見はツチクジラによく似ていますが、体長は最大で約9.75メートルと、ツチクジラの約13メートルよりも大幅に小型です。雄の体表には、他の雄との競争でできた歯の傷跡が見られます。ただし、生きた個体の観察や死骸の計測機会が限られているため、最大体長についてはまだ不明な点が多く残っています。子供の体長は4メートル前後です。

生態

行動様式はツチクジラと似ていますが、ミナミツチクジラは人間を避ける傾向が強いとされています。これは、積極的な捕鯨の対象とならなかったにも関わらず、より警戒心が強いことを示唆しています。生態に関する調査はほとんど進んでおらず、謎が多いです。群れで行動することが多く、通常は10頭以下の群れですが、80頭に達する大規模な群れも確認されています。また、ブリーチングなどの活発な海面行動も行います。

分布

主に南半球の南極海から温帯に分布しており、亜熱帯や熱帯に達することもあります。特筆すべきは、極海にも適応している点で、海氷が多い海域や流氷の近くでも生息しています。基本的には深海性ですが、沿岸の陸近くに現れることもあります。目撃情報が多いのは、タスマン海や東太平洋海嶺です。ストランディングのほとんどはニュージーランドで発生しています。

人間との関わり

ミナミツチクジラは、「ボン条約」によって保護対象種に指定されています。商業捕鯨の対象とならなかったため、個体数が減少しているわけではありませんが、生息数は不明です。生態調査もほとんど進んでおらず、脅威となる要素も十分に解明されていません。他の鯨類と同様に、混獲や船舶との衝突、地球温暖化の影響を受ける可能性があります。目撃情報が少なく、ホエールウォッチングの対象ともなっていません。

ミナミツチクジラは、その生態や分布においてまだ多くの謎を秘めたクジラです。今後の調査によって、この珍しいクジラの生態がより深く理解されることが期待されます。

もう一度検索