ミニカセット

ミニカセットは、1967年にフィリップスによって開発されたオーディオ用磁気記録テープの規格です。オリンパスが開発したマイクロカセットとは異なる規格であり、主にボイスレコーディング用途で使用されました。1980年には家庭用パソコン「Philips P2000」の外部記憶装置としても採用されています。

ミニカセットの最大の特徴は、テープ駆動機構にあります。一般的なコンパクトカセットやマイクロカセットでは、テープの線速度を一定に保つためにキャプスタンとピンチローラーを使用しますが、ミニカセットではこれらが省かれ、巻き取り側リールが直接テープを駆動します。これにより、メカニズムの簡素化とカセットの小型化に成功しました。しかし、テープの線速度が一定でなく、平均2.4cm/sと変動するため、ワウフラッターが発生しやすいという欠点があります。そのため、高音質が求められる音楽録音には適さず、ボイスレコーディングなど、音質よりも信頼性が重視される用途に特化することとなりました。

この機構の簡素さから、テープを小刻みに早送り・巻き戻しするのに適しており、初期の留守番電話機に広く採用されました。また、Hi-Fi品質は必要ないものの、確実な録音が求められる口述や書き起こし用途でも重宝されました。デジタル録音が普及した後も、この用途ではアナログメディアが継続して利用された背景には、その信頼性へのニーズがあったと考えられます。現在では、ミニカセットの機器製造・販売は終了していますが、録音用テープの供給は継続されています。

類似規格として、ヒューレット・パッカードとVerbatimが1982年に発売した「HP82161A」テープドライブがあります。これはHP-41プログラム電卓のデータ保存用として開発されたもので、ミニカセットと互換性はありませんが、キャプスタンとピンチローラーを使用しないという点で共通しています。外見もミニカセットに非常によく似ています。

関連情報

マイクロカセット
デコカセットシステム：データイーストが開発したアーケードゲーム基板で、ミニカセットをベースとした独自の記録媒体を使用しています。

外部リンク

Philips Speech Processing site
Brief description of the Hewlett Packard 82161A tape drive
* Discussion about HP82176A tapes and second-source alternatives

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