ミニ・リサーチ・モジュール1
ミニ・リサーチ・モジュール1（MRM-1）は、国際宇宙ステーション（ISS）を構成するロシアの区画の一つです。正式名称は「Mini-Research Module 1」、ロシア語では『Малый исследовательский модуль, МИМ-1』と表記されます。「ドッキング装置兼機器搭載区画（Docking Cargo Module, DCM）」とも呼ばれた過去があり、ロシア語の愛称「Рассве́т」（ラスヴェット、夜明けや暁の意味）でも親しまれています。このモジュールは、主にISSで必要となる様々な物資を保管する庫としての機能と、ISSを訪れるロシアのソユーズ宇宙船やプログレス補給船などが安全に結合（ドッキング）するための重要な設備として設計されました。2010年5月、アメリカのスペースシャトル・アトランティス号によるSTS-132ミッションで打ち上げられ、ISSに届けられました。
ISSに到着したMRM-1は、ステーションに備え付けられたロボットアームであるカナダアーム2を用いて、既存のロシア製モジュールであるザーリャの下部ドッキング装置に接続されました。MRM-1の機体の外部には、将来打ち上げられる予定だった多目的実験モジュール（MLM）に設置されるための小型エアロックや熱交換機といった機器、さらには欧州ロボットアーム（ERA）の予備関節部品などが搭載されていました。これは、NASAがシャトルでのMRM-1輸送を引き受ける代わりに、MLM用のロシア側機器を同時に運搬するという取り決めの結果でした。また、MRM-1は二つのアンドロジナスドッキングシステムを備えています。一つはISS本体（ザーリャ）への接続に用いられ、もう一つは訪問する宇宙船（ソユーズやプログレス）が使用するためのドッキングポートとして機能します。これにより、MRM-1はISSの設計初期段階で構想されていた「ドッキング装置兼機器搭載区画（DCM）」としての役割を果たすことになりました。
MRM-1の開発に至るまでには、計画の変遷がありました。当初、ISSのロシア区画には「DSM（Docking and Stowage Module）」と呼ばれるモジュールが結合される予定でした。このDSMは、現在のMRM-1と同様に物資保管とドッキングポートの役割を担うもので、大きさや形状はザーリャに似ており、プロトンロケットで打ち上げられザーリャ下部に結合される計画でした。しかし、ロシア側の予算問題により、このDSM計画は一時的に中止されました。その後、計画はDCM（Docking and Cargo Module）として復活し、現在のMRM-1という名称に変更された上で、当初のDSMと同じくザーリャの下部に結合されることになりました。DSMがキャンセルされていた時期には、同じ場所に「エンタープライズ」という多目的モジュールや、多目的実験モジュール（MLM）を結合すべきだという提案も存在しましたが、「エンタープライズ」案は承認されず、MLMは最終的にズヴェズダ区画の下部ドッキングポートに設置されることになったため、MRM-1がザーリャ下部への結合モジュールとして位置づけられました。
MRM-1の設置は、当時のISS運用において直面していたいくつかの課題を解決する上で非常に有効でした。一つは、NASAがMLM外部機器をISSへ運搬するというロシア側との契約を履行する必要があったことです。MRM-1にこれらの機器を搭載することで、NASAはMLM専用の追加打ち上げミッションを組む必要がなくなりました。もう一つの大きな利点は、ISSロシア区画のドッキングポートの確保でした。プログレス補給船やソユーズ宇宙船、さらには欧州補給機（ATV）といった様々な宇宙船が頻繁にISSを訪れるため、ロシア区画には計4箇所のドッキングポートが必要とされていました。しかし、当初のISS計画では、ザーリャの下部ドッキングポート付近に、ユニティ（ノード1）の下部に結合されるトランクウィリティー（ノード3）が構造的に干渉し、ロシアの宇宙船がドッキングできなくなる懸念がありました。この懸念は、後にトランクウィリティーがユニティの左舷に結合されることで一旦解消されましたが、その後にユニティの下部には恒久的にPMM（加圧結合モジュール）「レオナルド」が設置されることになり、再びザーリャ下部へのドッキング時の干渉問題が発生しました。MRM-1をザーリャ下部に結合することで、その機体分だけドッキングポートの位置が実質的に下方に延長され、ユニティ下部のPMMとの干渉が回避されました。これにより、ISSのロシア区画は、ズヴェズダ後部、ズヴェズダ下部に結合したピアース、ズヴェズダ上部に結合したMRM2「ポイスク」、そしてザーリャ下部に結合したMRM1の計4箇所で、恒常的に利用可能なドッキングポートを確保できるようになったのです。
MRM-1は、ロシアのS.P.コロリョフ社（RSCエネルギア社）によって設計・製造されました。その基礎となったのは、計画が中止された科学電力プラットフォーム（SPP）の構造試験のために製造された与圧構造部でした。機体と地上での整備に使用する機器類は、巨大なアントノフ124輸送機に搭載され、2009年12月17日にアメリカのケネディ宇宙センターに届けられました。到着後、MRM-1はアストロテック社が運営する打ち上げ前整備施設へと運ばれ、そこでRSCエネルギア社の技術者たちの手により、単体での電気系統試験や気密確認などの詳細なチェックが実施されました。また、ハッチや熱交換機といった主要な機器が機体本体に取り付けられる作業もここで行われました。一連の整備が完了したMRM-1は、2010年4月2日にNASAの宇宙ステーション機器組立施設（Space Station Processing Facility）に移送され、最終的な試験を受けました。そして、4月5日にはいよいよスペースシャトル・アトランティス号の貨物室に格納されました。MRM-1を搭載したアトランティス号は、打ち上げに先立ち、4月15日にケネディ宇宙センターの第39発射台に設置され、宇宙への旅立ちの準備を整えたのです。
ISSに到着したMRM-1は、ステーションに備え付けられたロボットアームであるカナダアーム2を用いて、既存のロシア製モジュールであるザーリャの下部ドッキング装置に接続されました。MRM-1の機体の外部には、将来打ち上げられる予定だった多目的実験モジュール（MLM）に設置されるための小型エアロックや熱交換機といった機器、さらには欧州ロボットアーム（ERA）の予備関節部品などが搭載されていました。これは、NASAがシャトルでのMRM-1輸送を引き受ける代わりに、MLM用のロシア側機器を同時に運搬するという取り決めの結果でした。また、MRM-1は二つのアンドロジナスドッキングシステムを備えています。一つはISS本体（ザーリャ）への接続に用いられ、もう一つは訪問する宇宙船（ソユーズやプログレス）が使用するためのドッキングポートとして機能します。これにより、MRM-1はISSの設計初期段階で構想されていた「ドッキング装置兼機器搭載区画（DCM）」としての役割を果たすことになりました。
MRM-1の開発に至るまでには、計画の変遷がありました。当初、ISSのロシア区画には「DSM（Docking and Stowage Module）」と呼ばれるモジュールが結合される予定でした。このDSMは、現在のMRM-1と同様に物資保管とドッキングポートの役割を担うもので、大きさや形状はザーリャに似ており、プロトンロケットで打ち上げられザーリャ下部に結合される計画でした。しかし、ロシア側の予算問題により、このDSM計画は一時的に中止されました。その後、計画はDCM（Docking and Cargo Module）として復活し、現在のMRM-1という名称に変更された上で、当初のDSMと同じくザーリャの下部に結合されることになりました。DSMがキャンセルされていた時期には、同じ場所に「エンタープライズ」という多目的モジュールや、多目的実験モジュール（MLM）を結合すべきだという提案も存在しましたが、「エンタープライズ」案は承認されず、MLMは最終的にズヴェズダ区画の下部ドッキングポートに設置されることになったため、MRM-1がザーリャ下部への結合モジュールとして位置づけられました。
MRM-1の設置は、当時のISS運用において直面していたいくつかの課題を解決する上で非常に有効でした。一つは、NASAがMLM外部機器をISSへ運搬するというロシア側との契約を履行する必要があったことです。MRM-1にこれらの機器を搭載することで、NASAはMLM専用の追加打ち上げミッションを組む必要がなくなりました。もう一つの大きな利点は、ISSロシア区画のドッキングポートの確保でした。プログレス補給船やソユーズ宇宙船、さらには欧州補給機（ATV）といった様々な宇宙船が頻繁にISSを訪れるため、ロシア区画には計4箇所のドッキングポートが必要とされていました。しかし、当初のISS計画では、ザーリャの下部ドッキングポート付近に、ユニティ（ノード1）の下部に結合されるトランクウィリティー（ノード3）が構造的に干渉し、ロシアの宇宙船がドッキングできなくなる懸念がありました。この懸念は、後にトランクウィリティーがユニティの左舷に結合されることで一旦解消されましたが、その後にユニティの下部には恒久的にPMM（加圧結合モジュール）「レオナルド」が設置されることになり、再びザーリャ下部へのドッキング時の干渉問題が発生しました。MRM-1をザーリャ下部に結合することで、その機体分だけドッキングポートの位置が実質的に下方に延長され、ユニティ下部のPMMとの干渉が回避されました。これにより、ISSのロシア区画は、ズヴェズダ後部、ズヴェズダ下部に結合したピアース、ズヴェズダ上部に結合したMRM2「ポイスク」、そしてザーリャ下部に結合したMRM1の計4箇所で、恒常的に利用可能なドッキングポートを確保できるようになったのです。
MRM-1は、ロシアのS.P.コロリョフ社（RSCエネルギア社）によって設計・製造されました。その基礎となったのは、計画が中止された科学電力プラットフォーム（SPP）の構造試験のために製造された与圧構造部でした。機体と地上での整備に使用する機器類は、巨大なアントノフ124輸送機に搭載され、2009年12月17日にアメリカのケネディ宇宙センターに届けられました。到着後、MRM-1はアストロテック社が運営する打ち上げ前整備施設へと運ばれ、そこでRSCエネルギア社の技術者たちの手により、単体での電気系統試験や気密確認などの詳細なチェックが実施されました。また、ハッチや熱交換機といった主要な機器が機体本体に取り付けられる作業もここで行われました。一連の整備が完了したMRM-1は、2010年4月2日にNASAの宇宙ステーション機器組立施設（Space Station Processing Facility）に移送され、最終的な試験を受けました。そして、4月5日にはいよいよスペースシャトル・アトランティス号の貨物室に格納されました。MRM-1を搭載したアトランティス号は、打ち上げに先立ち、4月15日にケネディ宇宙センターの第39発射台に設置され、宇宙への旅立ちの準備を整えたのです。
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