ミライヘノツバサ

ミライヘノバサ：地方競馬の星から重賞制覇へ

2013年4月27日、青森県の諏訪牧場で誕生した競走馬ミライヘノツバサ。数々の名馬を輩出したこの牧場において、ミライヘノツバサは、G1馬タムロチェリーの孫として期待を背負って生まれた。母タムロブライトは、早世したタムロチェリーの後継として貴重な存在であった。

セレクトセールにて1000万円で落札され、伊藤大士調教師の厩舎に入厩。2歳時にデビューを果たすも、勝ち星を得るには時間がかかった。3歳になると、未勝利戦を制し、さらに山吹賞も勝利。クラシック路線への挑戦権を掴んだ。

皐月賞では11着、菊花賞では13着と結果を残せなかったものの、伊藤調教師にとって初のクラシック出走馬となり、大きな経験となった。4歳時には迎春ステークスを制し、アメリカジョッキークラブカップでは3着と健闘を見せた。日経賞では2着と惜しくも勝利を逃したが、その直後、右前脚の屈腱炎を発症。長期休養を余儀なくされた。

復帰後は脚元の不安を抱えながらも、懸命に走り続けた。オープン戦では苦戦が続いたが、7歳を迎えた時、伊藤調教師はミライヘノツバサの引退後のことを考え始めた。しかし、白富士ステークスで8着と健闘すると、さらなる挑戦を決意。ダイヤモンドステークスへの出走を決めたのである。

ダイヤモンドステークスは、ミライヘノツバサにとって忘れられないレースとなった。16頭中最低人気の325.5倍という圧倒的不人気の中、見事な末脚で優勝。重賞初制覇という快挙は、伊藤調教師にとっても管理馬初、そしてミライヘノツバサの父ドリームジャーニーにとっても産駒初の中央重賞制覇となった。青森県産馬によるJRA重賞制覇は12年ぶりという快挙も成し遂げた。

この奇跡の勝利の後、天皇賞（春）、目黒記念に出走するも、再び屈腱炎を発症。競走馬としての道を終え、6月5日付で競走馬登録を抹消。引退後は東京競馬場で誘導馬として第二の馬生を歩み始めた。

ミライヘノツバサの血統は、G1馬タムロチェリーを祖母に持つ良血。タムロチェリーは、本馬と同じく「父にとって初の中央重賞制覇を最低人気で達成した」という共通点を持つ。4代母の半姉Gay Millyの子孫には、名馬ピルサドスキー、ファインモーション兄妹、ユームザイン、レッドキングダムなどがいる。

ミライヘノツバサは、決して華々しい経歴だけではない、数々の困難を乗り越えてきた競走馬だった。その不屈の精神と、最後に掴んだ奇跡の勝利は、多くの人々に感動を与え、長く記憶に残る物語として語り継がれていくことだろう。

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