ムチン

ムチンについて

ムチン（mucin）は、動物の上皮細胞から分泌される重要な粘性物質で、粘液の主要構成成分として知られています。別名では粘素とも呼ばれることがあります。学術的には、ムチンは分子量が100万から1000万の範囲に及ぶ糖タンパク質の集合体で、特に細胞の保護や潤滑の役割を果たすために存在します。食品成分としては水溶性食物繊維に分類されています。

日本においてはオクラや里芋のネバネバ成分もムチンと呼ばれることがあるため、英語圏とは意味の取り方に違いがあります。英語の「mucin」は動物由来の粘液を指すのに対し、植物由来のものは「ムチレージ（mucilage）」と称されます。したがって、日本語の「ムチン」という用語は特定の食品成分を指す際に注意が必要です。

構造

ムチンの構造は、アポムチンと呼ばえるコアタンパク質が多数の糖鎖によって修飾された巨大な分子として説明できます。コアタンパク質の大部分はセリンやトレオニンというアミノ酸からなるペプチドの繰り返し構造で構成されています。これらのアミノ酸の水酸基には、糖鎖の還元末端として存在するN-アセチルガラクトサミンが、特有のムチン型結合で結合しているため、非常に多様な構造を持つことになります。

糖鎖の中にはN-アセチルガラクトサミンやN-アセチルグルコサミン、ガラクトース、フコース、シアル酸などが含まれ、これらはムチンの分子量の半分以上を占めています。糖鎖の構成はムチンの特性を大きく左右し、優れた粘性や水分保持能力、さらにはタンパク質分解酵素への耐性を与えています。

ムチンは、細胞の表面に存在する膜結合型と、分泌される分泌型に分かれます。これらのコアタンパク質は「MUC」と総称され、特定の遺伝子によってコードされ、少なくとも20種類に分類されます。例えば、MUC2、MUC5AC、MUC5B、MUC6は分泌型とされ、MUC1、MUC3A、MUC3B、MUC4、MUC11、MUC12、MUC13は膜結合型に属します。

生体内のムチンの役割

動物が分泌する粘液は、ほぼすべてムチンを含んでおり、特に口腔、胃腸、鼻腔、腟、関節液、目の表面といった粘膜部分はムチンにより保護されています。ムチンは、体内の杯細胞によって放出され、これにより物理的な外的刺激から細胞表面を守るのです。また、一部の魚類、特にウナギに見られる体表のぬめりもムチンが関与しています。

ムチンの特性

ムチンはその粘性が高く、非常に優れた保水能力を備えています。そのため、ムチンが持つ凝集作用によって水中の泥の粒子が沈殿し、水がきれいになる現象も観察されます。

ムチンを含む食品および生物

ムチンは、以下の食品や生物に含まれています：

• - 燕の巣
• - エチゼンクラゲ
• - ウナギ
• - コイ
• - ドジョウ
• - ハタハタとその卵巣（ブリコ）

このようにムチンは、動物や植物を問わず多様な生物に存在し、その卓越した特性から様々な分野で重要な役割を果たしています。

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