ムーラ県

トルコ南西部の楽園:ムーラ県



トルコ南西部、エーゲ海に面したムーラ県は、その壮大な海岸線と豊かな歴史、そして活気ある産業で知られています。エーゲ海沿岸には、ボドルム、オルデニズ、マーマリス、フェティエといった世界的に有名な観光地が点在し、年間を通して多くの観光客が訪れます。

変化に富む地形



ムーラ県の海岸線は、トルコ国内でも最長の1,100kmにも及びます。海岸沿いのポット型の小さな平野は、山々に囲まれ、新第三紀の地層の沈下によって形成されたと考えられています。ムーラ市をはじめ、イエシリュルト、ウラ、ギュラグズィ、イェルケシク、アッカヤ、チャムコイ、イェニチェなど、県内各地で見られるこの独特の地形は、交通の発達以前は、外部との交流を困難にしていました。北西のミラスを経由するルート、北のメンデレス平野からゴクベルを経由するルート、北東のデニズリ県のタヴァス地域を経由するルートなど、険しい山道を通らなければならなかったためです。この地理的要因が、各地域独自の文化を育んできたと言えるでしょう。近年は高速道路網の整備が進み、交通の利便性が向上しています。

多様な産業



ムーラ県の経済は、観光業、農業、林業、大理石生産を主要産業として支えられています。

農業は非常に盛んで、多様な作物が栽培されています。特に蜂蜜の生産量はトルコ最大級を誇り、松林から採取される蜂蜜が有名です。柑橘類はオータカ、フェティエ、ダラマン、ダリャンなどで多く生産されています。

大理石生産は、アフィヨンカラヒサルに次ぐトルコ第二の規模を誇り、質・量ともに豊富な大理石が産出されています。この他にも、ヤタゲーン周辺での石炭生産、フェティエでのクロム生産など、様々な鉱物資源が産出されています。近年では、ミラス近郊の炭鉱拡張に伴う森林伐採が環境保護団体から批判されるなど、環境問題も課題となっています。

工業は、ダラマンのSEKA製紙工場や、ヤタゲーン、エニカイ、ケメルコイの電力生産などがありますが、大規模な工業地帯とは言い難い状況です。

便の良い交通網



ダラマン空港とミラス=ボドルム空港は、国内外の観光客の空の玄関口として機能しています。ボドルム、マーマリス、フェティエ、ガラックにはヨット係留所があり、海路でのアクセスも容易です。高速道路網を利用したバス路線は、イズミルアンタルヤアンカライスタンブールなど、トルコ各地とムーラ県を結んでいます。

悠久の歴史



古代アナトリアにおいて、メンデレス川とダラマン川の間の地域はカリアと呼ばれていました。ホメロスの「イリアス」にも登場するカリア人は、ギリシャ神話においてトロイア戦争で重要な役割を果たしたとされています。ムーラを含むカリア地域は、エジプト、アッシリア、スキタイなど様々な勢力の支配下に置かれた後、古代ギリシャ人の植民地となります。ギリシャ人はクニドスなどの都市を築き、海岸沿いに定住しました。ダッチャ半島やボドルム半島には小さな町が点在し、内陸部のフェティエ付近には、テルメソス、クサンテオス、パタラ、トロスなどの都市が栄えました。その後、アレクサンダー大王によって征服されます。

1261年頃、メンテス・ベイはミラスを首都とするベイリーク(首長国)を建国し、この地域に秩序をもたらしました。1390年までの約130年間、このベイリークはエーゲ海周辺諸国やクレタ島、ヴェニス、エジプトなどとの活発な交易を行い、シーパワーとしての役割を果たしました。この時代、キュタイヤとタヴァス間の地域にトルコ人の移住が進みました。

1430年、ムーラはオスマン帝国の支配下に置かれますが、12年後、ティムール帝国のアンカラの戦いでオスマン帝国が敗北したことにより、一時的にメンテス家に戻りましたが、1451年にはメフメト2世によって再びオスマン帝国の支配下に置かれました。オスマン帝国時代には、スレイマン1世によるロドス島の征服など重要な出来事が起こりました。1912年のイタリア占領まで、この地域はオスマン帝国の一部として存在しました。

ムーラ県には、古代から続く多くの遺跡が残っており、フェティエ近郊のレトーン遺跡など、100以上の地域がユネスコの世界遺産に登録されています。2012年には、ムーラ県全体がムーラ大都市自治体に指定され、旧ムーラ市はメンテシェと改称されました。

行政区分



ムーラ県は、ボドルム、ダラマン、ダトチャ、フェトヒイェ、カヴァクルデレ、キョイジェイズ、マルマリス、メンテシェ、ミラス、オルタジャ、セイディケメル、ウラ、ヤタアンの13の下位自治体で構成されています。また、隣接する県は、アイドゥン県、デニズリ県、ブルドゥル県、アンタルヤ県です。

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