ムーロマ族

ムーロマ族：オカ川流域に生きたフィン・ウゴル系部族

ムーロマ族は、1千年紀の中頃からオカ川下流、現在のロシア・ムーロム周辺に居住していたフィン・ウゴル系の部族です。『原初年代記』には、オカ川がヴォルガ川に合流する地域に住み、スラヴ人ではないと記述されています。彼らの起源については、モシチヌィ文化を担っていた部族であるという説があります。

ムーロマ族の生業と交易

ムーロマ族は、農業、漁猟、養蜂、毛皮獣の狩猟、そして工芸などを主な生業としていました。特に、ウラル川流域との交易が盛んだったことが知られています。彼らがどのような物を交易していたのか、詳細な記録は多くありませんが、生活に必要な物資や、彼らの得意とする工芸品などが取引されていたと考えられます。

言語と民族系統

ムーロマ族の言語系統については、いくつかの説が存在します。言語学的見地からは、モルドヴィン人の中の一つの部族であるという説と、メリャ族のようにフィン・ウゴル語派に属する独立した部族であるという説があります。ムーロマ族の居住地が、モルドヴィン人とチェレミス人の居住地の間にくさび形に食い込んでいるという地理的な特徴も、この議論を複雑にしています。

キエフ大公国との関係と同化

10世紀には、ムーロマ族はキエフ大公国に貢税を納めていたという記録があります。しかし、10世紀中頃以降、年代記にはその名が登場しなくなります。これは、ムーロマ族が他の部族よりも早く、12世紀までには東スラヴ人の諸部族に完全に同化したためと考えられています。彼らがどのようにしてスラヴ文化に溶け込んでいったのか、具体的な過程は明らかになっていませんが、交易や婚姻などを通じて徐々に文化的な交流が進み、最終的には言語や習慣を共有するようになったのでしょう。

ムーロマ族は、歴史の表舞台からは姿を消しましたが、その痕跡は地名や文化の中にわずかに残っているかもしれません。彼らの存在は、東ヨーロッパにおける民族の交流と融合の歴史を物語る上で、重要な一例と言えるでしょう。

関連項目

* ムーロマ語

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