ムーンダスト

ムーンダスト：青紫色のカーネーション

ムーンダストは、サントリーフラワーズとオーストラリアの植物工学企業であるFlorigene（旧カルジーンパシフィック）との共同研究によって、遺伝子組み換え技術を用いて開発された、世界初の青紫色のカーネーションです。カーネーションには本来存在しない青色色素を、ペチュニアやビオラから遺伝子を導入することで実現しました。

経緯

これまで存在しなかった青いカーネーションは、ペチュニアやビオラからデルフィニジン系の色素合成遺伝子をカーネーションのゲノムに組み込むことで誕生しました。1997年から「ムーンダスト」として販売が開始されましたが、当初は一部の生花店や特別なイベントでのみ扱われ、一般にはあまり知られていませんでした。その後、品種改良が進み、2005年2月に全国発売が開始され、現在では比較的入手しやすくなりました。

2004年には、青いバラと共にグッドデザイン賞金賞を受賞しています。主な生産地はコロンビアやエクアドルで、温室栽培されています。収穫されたムーンダストは航空便で世界各国に出荷され、切花市場で販売されています。花持ちが良く、品種によっては最長で1ヶ月程度咲き続けるものもあります。

カルタヘナ法に基づき、遺伝子拡散防止措置を講じた切花のみの形態で流通しています。サントリーの発表によると、2005年には約1800万本が販売されました。花言葉は「永遠の幸福」です。

種類

現在、ムーンダストには6つの品種があります。

スタンダードタイプ（大輪一輪咲き）

ベルベットブルー: 濃紫色
プリンセスブルー: 濃い青紫色
ライラックブルー: 桃色に近い青みがかった色
アクアブルー: 大輪4色の中で一番淡い色

スプレータイプ（枝分かれ多花性）

アメジストブルー: 青紫色
パールブルー: 桃色に近い青みがかった色

これらの品種は、流通量が限られており、特別なイベントや結婚式、贈答用のフラワーアレンジメントなどに用いられています。

原理

アントシアニンは、赤から青までの色調を示すフラボノイド系の色素群です。ムーンダストは、アントシアニンの種類を変化させることで青色を発色させています。デルフィニジン系のアントシアニンは、比較的酸性側でも青色を呈する性質を利用しています。

カーネーションは、フラボノイド生合成に必要なフラボノイド-3',5'-ヒドロキシラーゼ(F3′5′H)を持たないため、デルフィニジン系のアントシアニンを合成できません。そこで、ペチュニアやパンジーからF3′5′HのcDNAを導入し、カーネーションでもデルフィニジン系のアントシアニンを合成できるようにしました。

青紫色カーネーション11363（FLO-11363-1）には、パンジー由来のF3′5′HのcDNAに加え、ペチュニア由来のDFR遺伝子、スルホニルウレア系除草剤であるクロルスルフロンへの耐性を与えるタバコ由来アセト乳酸合成酵素 (ALS) の遺伝子が導入されています。

ペチュニア由来のDFR遺伝子が導入された理由は、カーネーションの内在性DFRがペラルゴニジン生合成にも関与するためです。パンジー由来のDFRはジヒドロケンペロールを基質として利用できないため、ペラルゴニジン生合成に関与しません。カーネーションの母本としては、DFRを欠失し、アントシアニンを合成できない白色花の品種が選ばれました。

歴史

1980年代: サントリーが花の開発を開始。
1989年: サフィニアが発売。
1990年: サントリーと現フロリジーン社が青いバラを目指し、開発開始。
1995年: ムーンダストが誕生。
1997年: 日本でムーンダストが一部地域で発売開始。「パールブルー」発売開始。
1999年: 「スプレータイプ」の「アメジストブルー」発売開始。
2001年: 「ライラックブルー」「プリンセスブルー」発売開始。
2002年: サントリーから花部門が分離し、サントリーフラワーズとなる。「ベルベットブルー」発売開始。
2004年: 農林水産省のカルタヘナ法第一種に認可。
2005年: 全国で発売開始。
2009年: 「アクアブルー」発売開始。

関連項目

サントリーフラワーズ
青いバラ (サントリーフラワーズ)
カーネーション
Matt - アンバサダー就任（2020年、2021年）

外部リンク

ムーンダスト公式サイト

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