メイフラワー (哨戒ヨット)

USS メイフラワー：激動の時代を駆け抜けた軍艦の生涯

USS メイフラワー (USS Mayflower (PY-1)) は、その長い生涯において、様々な役割を担ったことで知られるアメリカの軍艦です。当初は豪華な汽船ヨットとして建造されましたが、米西戦争を契機にアメリカ海軍に徴用され、哨戒ヨットや大統領専用ヨットとして活躍しました。その後、第二次世界大戦では沿岸警備隊に所属し、戦後はユダヤ人難民の輸送にも従事するなど、激動の時代を象徴するような、波瀾万丈な生涯を送りました。

建造と米西戦争

メイフラワーは、1896年にスコットランドのクライドバンクで、富豪のオグデン・ゴーレットの注文により建造されました。しかし、米西戦争の勃発によりアメリカ海軍が増強を急ぐ中で、ゴーレット家から買い上げられ、1898年に哨戒ヨットとして就役しました。米西戦争では、キューバの海上封鎖に参加し、スペイン船籍のスクーナーなどを拿捕する戦果を挙げました。

カリブ海での活動と大統領専用ヨットへの転換

米西戦争後、メイフラワーはプエルトリコ周辺海域での任務に従事し、1902年にはジョージ・デューイ少将の旗艦を務めました。1903年には、パナマ運河建設をめぐるパナマ独立革命の際にパナマ沖に展開。その後、アメリカ陸軍長官の西インド諸島視察に用いられた後、1904年に大統領専用ヨットに転用されました。

大統領専用ヨットとしての華麗なる日々

1905年、メイフラワーはセオドア・ルーズベルト大統領により、日露戦争の講和会議の舞台として使用されました。ルーズベルト大統領は、メイフラワー艦上でロシアと日本の代表団を会見させ、講和交渉を支援しました。その後も、メイフラワーは大統領専用ヨットとして、数多くの外交交渉や社交の場として利用され、各国の王族や要人が乗船し、ゲストブックには数多くの著名人の署名が残されました。ウッドロウ・ウィルソン大統領は、後の再婚相手であるイーディス・ボリング・ガルトとの交際の場として、メイフラワーをしばしば用いました。

民間所有と第二次世界大戦

1929年、ハーバート・フーヴァー大統領は、メイフラワーの維持費削減のため退役させ、競売にかけましたが落札者は現れませんでした。その後、民間人の手に渡り、様々な活用策が検討されましたが、世界恐慌の影響もあり実現しませんでした。第二次世界大戦が勃発すると、アメリカ海軍はメイフラワーを買い戻し、艦名をバット (USS Butte) と改めました。その後、沿岸警備隊に移管され、メイフラワー（USCGC Mayflower (WPE-183)）として再就役。ドイツのUボートから大西洋岸を警備する任務などに従事しました。

戦後とユダヤ人難民輸送

第二次世界大戦終結後、メイフラワーは再び退役し、アザラシ猟の船として売却されましたが、火災により断念。その後、パナマ船籍のマッラ (Malla) として登録され、地中海で活動しました。1948年には、マルセイユから密かに出港し、パレスチナにユダヤ人難民を輸送する任務に従事しました。

多様な経歴と遺産

メイフラワーは、アメリカ合衆国の大統領専用ヨットとして、ルーズベルト、タフト、ウィルソン、ハーディング、クーリッジといった歴代大統領に使用された一方で、米西戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦のすべてで実戦配備された、数少ない軍艦の一つでもあります。その多様な経歴は、船舶の歴史の中でも特筆すべきものであり、激動の時代を生き抜いた象徴として、その名は記憶されるでしょう。

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