メトロニダゾール

メトロニダゾール：多様な感染症治療薬

メトロニダゾールは、ニトロイミダゾール系に属する抗菌薬、抗原虫薬です。商品名「フラジール」などで広く知られており、当初はトリコモナス感染症の治療薬として開発されました。しかし、その後の研究で、様々な嫌気性菌や原虫に対する有効性が確認され、使用範囲が大幅に拡大しました。

開発から現在まで

トリコモナス感染症治療薬としての開発当初、膣トリコモナス症治療における歯肉炎改善効果の発見がきっかけとなり、嫌気性菌に対する抗菌活性が注目されました。この発見を足掛かりに、他の感染症への効果についても研究が進められ、欧米では早くから嫌気性菌感染症などへの使用が認められていました。日本においては、長らくトリコモナス感染症治療薬としてのみに限定されていましたが、近年ではヘリコバクター・ピロリ菌の除菌療法にも使用されるようになり、さらにランブル鞭毛虫や赤痢アメーバなどの原虫感染症、様々な嫌気性菌感染症にも適応が拡大されました。
現在では、深在性皮膚感染症、外傷・熱傷・手術創の二次感染、骨髄炎、肺炎、肺膿瘍、腹膜炎、骨盤内炎症性疾患、がん性皮膚潰瘍、酒さ、感染性腸炎（偽膜性大腸炎を含む）など、幅広い感染症の治療に用いられています。

歯科領域においては、メトロニダゾール、セファクロム、シプロフロキサシンの3種混合抗菌薬（3MIX）として歯内療法に使用されています。また、獣医学領域では、イヌの腸鞭毛虫症や豚赤痢、イヌやネコの嫌気性細菌感染症の治療にも有効であることが知られています。

作用機序

メトロニダゾールの抗菌作用は、嫌気性菌や原虫が持つニトロ還元酵素によって活性化されることによります。メトロニダゾールは、これらの酵素によって還元され、ニトロソ化合物に変化します。この変化体が、DNA二重鎖切断などの細胞傷害活性を引き起こし、殺菌・殺原虫作用を示すと考えられています。

副作用と薬物相互作用

一般的に副作用は少ないとされていますが、消化器症状（悪心、吐き気、腹部不快感）、金属味、舌苔、暗赤色尿などがみられることがあります。まれに、中枢神経系や末梢神経系の障害（痙攣、小脳症状、末梢神経障害など）が起こる可能性があり、特に肝機能不全のある患者さん、長期・高用量投与の場合には注意が必要です。

重要な薬物相互作用として、アルコールとの併用が挙げられます。メトロニダゾール服用中は、アルコール摂取によって「二日酔い・悪酔い」のような症状（ジスルフィラム様作用）が現れる可能性があります。これは、メトロニダゾールがアルコール代謝に関わる酵素に影響を与えるためと考えられていますが、詳細な機序についてはセロトニン症候群との関連も指摘されています。アルコールを含む薬剤との併用も注意が必要です。また、CYP2C9阻害作用による他の薬剤との相互作用（例：ワルファリンの作用増強）にも注意が必要です。

環境への影響

メトロニダゾールは、下水処理場を通過した後も検出されることがあり、環境中に残留する可能性が指摘されています。バングラデシュのある河川では、環境基準値を大幅に超える高濃度のメトロニダゾールが検出された報告もあります。

まとめ

メトロニダゾールは、幅広い感染症に効果を示す有用な薬剤ですが、副作用や薬物相互作用に十分に注意し、医師の指示に従って服用することが重要です。また、環境への影響についても、今後の研究が必要とされています。

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