メトロワゴンマッシュ

ロシア連邦のムィティシに本社を置く株式会社（АО）メトロワゴンマッシュ（Метровагонмаш）は、主に地下鉄向け電車やレールバス（気動車）の製造を手がける大手鉄道車両メーカーです。2005年以降、ロシア最大の鉄道車両メーカーグループであるトランスマッシュホールディングの傘下企業となっています。その前身である「ムィティシ機械製造工場（Мытищинский машиностроительный завод）」として、1世紀を超える長い歴史を有しています。

創業からソ連時代まで

メトロワゴンマッシュの起源は、1895年に提案され1896年に認可された輸送機器製造会社の設立計画に遡ります。この計画に基づき、1897年にムィティシに工場が建設され、ロシア北部鉄道向けの客車製造から始まりました。その後、モスクワ市電向け路面電車の製造にも着手し、ロシア有数の鉄道車両工場へと成長。第一次世界大戦前からは軍用機器製造も手がけ、地域経済の発展に貢献しました。

ロシア革命後の混乱を経て、1920年には各地の工場や輸送機器の修理を担うようになります。1924年のソ連技術管理局設立により生産体制が回復・成長すると、輸送機器メーカーとしての性格を強めます。1926年にはソ連初の電化郊外路線向け電車を製造。1932年以降は路面電車と大型鉄道車両の製造に特化し、1935年にはモスクワ地下鉄向けにソ連初の地下鉄車両であるA形電車を生み出しました。

第二次世界大戦中は、軍用機器製造に貢献。激しい空襲から生産設備を守るため、1941年からはウラル地方へ移転し終戦まで生産を継続しました。この間の功績により、戦後に祖国戦争勲章を授与されています。

終戦後は日用品製造も行いましたが、1946年には地下鉄電車の生産を再開。同時にダンプトラックなどの車両用ボディ製造、そして軍用車両生産も継続し、長期にわたりこれら三本柱を持つメーカーへと発展しました。製品はソ連国内のみならず、中国、韓国、トルコなど世界各地へ輸出されました。

1980年代後半からのソ連国内の変革を経て、1992年4月20日、株式会社メトロワゴンマッシュとして新たな体制で再出発しました。

株式会社メトロワゴンマッシュ以降

株式会社化後も、メトロワゴンマッシュは一貫して鉄道車両製造を続けており、特に地下鉄車両は2019年現在、ロシアを含む世界18都市で運行されています。2001年からはローカル線向けレールバスの製造も開始し、ロシア、CIS諸国に加え、チェコやハンガリーなどへも輸出しています。また、従業員のための病院や幼稚園など、社会インフラの管理も行っています。

2005年にトランスマッシュホールディングの傘下に入り、2010年以降は主要株主であるフランスのアルストム主導のもと、工場の近代化や設備更新を進めています。

かつての主要事業の一つであった軍用車両やトラックボディの生産は、2009年に設立された別の企業「公共株式会社ムィティシ機械製造工場」に引き継がれました。これにより、現在のメトロワゴンマッシュは地下鉄電車とレールバスを中心とした鉄道車両専門メーカーとしての性格を強めています。

製品と国際協力

メトロワゴンマッシュは、歴史的なA形から最新形式に至るまで、多岐にわたる地下鉄電車を製造しています。レールバスも主要製品の一つです。

国内外の企業との連携も特徴で、ソ連時代からの国内協力に加え、日立製作所とはブルガリアやハンガリー向け車両への電気機器供給や、2018年の合弁会社「TMHトラクションシステムズ」共同設立など、技術やグローバル展開での協力関係を築いています。

メトロワゴンマッシュは、その長い歴史と専門性、そして国内外の協力関係を通じて、ロシアおよび世界の鉄道輸送に重要な貢献を続けています。

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