メバチ

メバチ（目鉢、目撥）

メバチ（学名：Thunnus obesus）は、スズキ目サバ科マグロ属に属する海水魚で、特に食用として重要な種類です。広範囲にわたる熱帯や温帯の海域に生息し、その特徴的な目が印象的なことから「目鉢」という和名が付けられています。日本では、メバチマグロまたはバチマグロとも呼ばれ、地域によっては「バチ」や「メブト」、「シビ」といった名称でも知られています。若魚は特に「ダルマ」とも称されます。

形態

成魚のサイズは全長250cm、体重は最大で210kgに達することがあります。そのため、同属のマグロの中ではミナミマグロやキハダと並ぶ中型の魚とされています。ただし、日本近海の個体は熱帯地域のものより小型で、通常は2mを超えることは少ないです。

メバチの体型は太く、紡錘形でまるでずんぐりしている印象を与えます。特に目が大きいことが特徴であり、そのため「メバチ」や英名の「Bigeye tuna」もこの特徴に由来しています。胸鰭はクロマグロと比べて少し長く、それでもビンナガほどではありません。体色には藍色の背中と銀白色の体側と腹面が見られます。若魚は成魚に比べて体が細長く、体側には数本の白い横縞模様があり、彼らはキハダの若魚に似ています。

生態

メバチは熱帯および温帯海域の広い範囲で見られ、日本では主に宮城県以南の太平洋側に多く生息しています。一方、地中海や日本海には生息しないことが知られています。主に暖かい海域の中層で群れを作りながら回遊し、日中は比較的深い水深（最大300m）で泳ぎ、夜間には表層に上がってくる習性があります。食性としては、小魚やイカを主に捕食します。

寿命は15年以上とされており、これもまた所属するマグロの中での特徴です。

利用

メバチの身は赤みを帯びていて柔らかく、脂肪分はあまり多くはありませんが、トロとして使える部分も存在します。特に、刺身や寿司などに利用され、春から夏にかけてはクロマグロの需要が落ちるため、メバチの需要が高まります。

遠洋漁業の手法である延縄などを用いて捕獲され、21世紀初頭には年間で約30万トンの漁獲量が記録されています。これらの数字は、マグロの中でもキハダに次いで多く、日本国内での流通量も約3割を占めています。メバチは、鮮やかな赤身ながらもクロマグロに比べてあっさりとした味わいが特徴とされています。

一方で、養殖技術の進展がクロマグロに比べて遅れているため、その価格は国際的な和食の人気も影響し、上昇傾向にあります。近年では、乱獲が進んでおり、IUCNレッドリストでは1994年からVU（絶滅危惧II類）として分類されています。2023年にはインド洋まぐろ類委員会が漁獲量を制限する提案を行うなど、個体数を守るための取り組みも進められています。

食品としての注意

ただし、メバチには微量の水銀が含まれているため、特に妊婦は摂取量に注意が必要です。厚生労働省では、1回の摂取量を約80gとし、週に一度までの摂取を推奨しています。このように、メバチは非常に魅力的な食材ではありますが、健康面での配慮も忘れないことが重要です。

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