メロエ

メロエ：ナイル川流域に栄えた古代都市文明

メロエは、紀元前6世紀から紀元後4世紀にかけて、ナイル川中流域、現在のスーダンの首都ハルツーム北東に位置した都市であり、そこで栄えた文明を指します。この地は、エジプトの影響を受けつつも、独自の文化を築いた黒人王国でした。

クシュ王国からメロエ王国へ

紀元前10世紀頃、ナパタ（ゲベル・バルカル）周辺でエジプトの影響を受けたクシュ王国が繁栄しました。紀元前7世紀には、アッシリアの侵攻を受け、エジプト第25王朝のタハルカ王がクシュ王国へ落ち延びます。紀元前591年頃、アスペルタ王がメロエへ遷都し、以降のクシュ王国は「メロエ王国」と呼ばれるようになりました。

メロエは、鉱物資源や豊かな農産物に恵まれ、アビシニア（エチオピア）からインド洋へと続く交易路の結節点として発展しました。アッシリアから導入された製鉄技術は高度に発達し、アフリカ大陸全土へと伝播しました。ナイル川とアトバラ川の合流点に近いという地理的条件から、鉄鉱石や樹木が豊富であり、クシュ人は自ら製鉄を行い、アフリカ黒人の歴史上、最初の鉄器製造の中心地となりました。

メロエには、小型のピラミッドが数多く建造され、ヒエログリフを基にしたメロエ文字が発明されるなど、クシュ王国と同様にエジプトの影響を強く受けていました。エルガメネス王の時代（紀元前248～220年）に最盛期を迎えました。

メロエ王国の滅亡と世界遺産

350年頃、アビシニア高原に興ったアクスム王国の侵攻を受け、メロエ王国は滅亡しました。旧首都ナパタが滅ぼされた後、メロエは王の唯一の居住地となっていましたが、その繁栄も終焉を迎えました。現在、都市の様子はメロエ遺跡として残っており、堤防、宮殿、アメン神殿跡などを見ることができます。

メロエ島の考古遺跡群は、2011年にユネスコの世界遺産（文化遺産）に登録されました。登録基準は以下の通りです。

(2): ある期間を通じて、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すものであること。
(3): 現存する、または消滅した文化的伝統や文明の、唯一の、または少なくとも稀な証拠であること。
(4): 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積、または景観の優れた例であること。
(5): ある文化を代表する伝統的集落、または陸上ないし海上利用の際立った例であること。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例であること。

遺跡の保護と課題

メロエ王国時代の遺跡に限った話ではありませんが、21世紀のスーダンにおける遺跡調査は遅れており、盗掘者に先を越されることもあります。2020年には、スーダン奥地の砂漠に位置するメロエ王国時代の古代遺跡ジャバル・マラガが、重機で破壊しつくされるという事態が発生しました。遺跡の保護と調査の推進が急務となっています。

関連項目

アフリカ史
ヌビアのピラミッド
* ヌビア王国

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