モクレン科

モクレン科 (Magnoliaceae)

モクレン科は、モクレン目に分類される被子植物の一群で、その多様性は2属230～340種に及ぶとされています。この科には、コブシ、ホオノキ、オガタマノキ、タイサンボク、ユリノキといった、私たちにも馴染み深い樹木が含まれています。

特徴

モクレン科の植物は、常緑または落葉性の木本であり、高木から低木まで多様な形態を示します。これらの植物には、以下のような特徴が見られます。

葉: 単葉で互生し、葉脈は羽状です。多くの場合、葉は枝にらせん状につきますが、ホオノキのように枝先に集まってつくこともあります。ユリノキ属では、葉に特徴的な切れ込みが見られます。
芽: 芽は2枚の托葉からなるキャップ状の芽鱗で覆われており、この托葉は早落性で、枝に托葉痕を残します。
花: 花は大きく、放射相称で、枝の先端または葉腋に単生します。花被片は6～9枚（まれに45枚）で、3枚ずつ2輪以上につきます。雄しべと雌しべは多数、花托にらせん状につきます。モクレン科の花は虫媒花であり、甲虫、ハエ目、ハチ目などによって送粉されます。
果実: 果実は通常、裂開する袋果ですが、ユリノキ属では非裂開性の翼果です。一つの花から複数の果実が集合果を形成し、種子は赤い肉質の種皮で覆われることが多いです。
その他: 植物体は精油を含み、アルカロイドやフラボノイドを含有します。道管の隔壁は階段穿孔です。

分布と生態

モクレン科の植物は、東アジアから東南アジア、南アジアの一部、そして北米東部から南米の一部に隔離分布しています。東南アジアでは、森林の重要な構成要素となることがあります。

人間との関わり

モクレン科の植物は、古くから人々の生活と深く関わってきました。例えば、ハクモクレンやタムシバの花芽は、辛夷（しんい）という生薬として利用され、鼻炎や頭痛、咳などの症状を和らげる効果があるとされています。また、ホオノキやコウボクの樹皮も厚朴（こうぼく）という生薬として用いられます。さらに、ユリノキやホオノキなどの木材は、建築や家具など様々な用途で利用されています。多くの種が観賞用としても栽培され、美しい花や独特な樹形が人々に愛されています。

系統と分類

モクレン科の花は、多数の雄しべと雌しべがらせん状に配置されているという原始的な特徴を持ち、これは被子植物の進化を研究する上で重要な手がかりとなっています。モクレン科は、2つの亜科、ユリノキ亜科とモクレン亜科に分けられることもありますが、近年ではユリノキ属以外の属を全てモクレン属にまとめる考え方が主流になりつつあります。

主な種

ユリノキ属: ユリノキ
モクレン属: タイサンボク、ホオノキ、オオヤマレンゲ、モクレン（シモクレン）、ハクモクレン、タムシバ、コブシ、シデコブシ、オガタマノキ、カラタネオガタマ

参考文献

三河の植物観察, “モクレン科”.
基礎生物学研究所, “陸上植物の進化/モクレン類/モクレン目/モクレン科”.
Angiosperm Phylogeny Website, “Magnoliaceae”.
The Families of Angiosperms, “Magnoliaceae Juss.”.
Plants of the World Online, “Magnoliaceae Juss.”.
GBIF Backbone Taxonomy, “Magnoliaceae”.
東浩司, “モクレン科の分類・系統進化と生物地理: 隔離分布の起源”.
東浩司, “モクレン科の花の匂いと系統進化”.
植田邦彦, “モクレン科の分類・地理概説”.

モクレン科は、その美しい花と多様な生態で、私たちを魅了し続けています。

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