ケーブルモデム

ケーブルモデムとは

ケーブル[モデム]]は、ケーブルテレビ]のインフラを利用し、高周波チャンネルを通じて双方向のデータ通信を可能にするネットワーク機器です。主にブロードバンド[[インターネット接続を提供するために使用され、特にオーストラリア、ヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカで広く普及しています。2009年頃にはアメリカだけでも約3800万台が利用されていました。

ケーブルテレビ網の広帯域幅を活用することで、高速なデータ通信を実現しています。その歴史は1990年代初頭に遡り、複数の企業が独自の技術を開発し、競争を繰り広げました。その後、標準化が進み、現在ではDOCSIS規格が広く採用されています。

歴史

Hybrid Networks

1990年、Hybrid Networksは世界初の高速非対称ケーブルモデムシステムを開発しました。当時、一般家庭でのインターネット利用には下り方向の高速通信で十分だと考えられており、CATVシステムが本来持つ下り方向の広大な通信容量を有効活用する発想でした。また、上り方向と下り方向で異なるプロトコルを採用し、双方向通信を確立した点が重要です。初期のシステムでは上り通信に電話回線を使用するものが多かったのですが、Hybrid Networksの技術はケーブルのみで双方向通信を可能にする道を開きました。

LANcity

LANcityは初期からケーブルモデムを開発した企業の一つで、そのシステムはアメリカで広く採用されました。LANcityはBay Networksに買収され、その後ノーテルに買収されました。ノーテルはケーブルモデム事業をARRISとしてスピンオフさせ、現在に至っています。ARRISはDOCSIS準拠のケーブルモデムと、CATV局側のシステムであるCMTSを製造しています。

Zenith Homeworks

ゼニス・エレクトロニクスは、独自のプロトコルを採用したケーブルモデムZenith Homeworksを1993年に発表しました。このモデムは、アメリカをはじめ海外のケーブルテレビ網で採用されました。

Com21

Com21も初期のケーブルモデム企業で、DOCSISによる標準化以前は独自のシステムで成功を収めていました。CATV局側のブリッジであるComControllerとケーブルモデムであるComPortで構成され、ネットワーク管理にはHP OpenViewを採用していました。上り信号のノイズ問題を解決するためにマルチプレクサを開発するなど、技術的な貢献も大きかったです。Com21のシステムはATMをベースにしていましたが、後にDOCSIS準拠の製品も開発しました。しかし、2003年に倒産し、その資産はARRISが引き継ぎました。

CDLP

モトローラの独自システムであるCDLP（Cable Data Link Protocol）も、かつては広く利用されていました。CDLPのモデムは、上り信号経路として電話回線とケーブルネットワークの両方をサポートしていました。しかし、電話回線の制約から、ケーブルのみで双方向通信を行う方式が主流となりました。ケーブルのみで上り下りを扱えるケーブルモデムは、DSLサービスに対抗しうる技術となりました。現在では、CDLPはほとんど使用されておらず、多くのプロバイダーがDOCSIS規格を採用しています。モトローラのCyberSURFRはCDLP規格を採用したケーブルモデムの一例です。

IEEE 802.14

1990年代半ばには、IEEE 802委員会がケーブルモデムの標準化を目指し、ワーキンググループ（802.14）を設立しました。しかし、北米のケーブルネットワーク業者がDOCSIS仕様を支持したため、IEEEとしての標準化は実現しませんでした。

DOCSIS

1990年代後半、アメリカのケーブルネットワーク各社がMCNSというコンソーシアムを立ち上げ、相互運用可能なケーブルモデム仕様の策定を急ぎました。標準化を迅速に進めるため、当時主流であったCDLPとLANcityの技術を組み合わせる方針となりました。具体的には、物理層にモトローラのCDLPを、MAC層にLANcityのシステムを採用しました。この仕様はCableLabsに託され、CableLabsは仕様の維持管理、標準化団体への提案、準拠試験プログラムの開発、拡張仕様の策定などを行っています。現在、市場に出回っているほぼ全てのケーブルモデムは、DOCSISのいずれかのバージョンに準拠しています。

アナログテレビにはPALとNTSCという規格があるため、DOCSISにもヨーロッパ向けのEuroDOCSISとアメリカ向けのDOCSISがあり、チャネル周波数に違いがあります。

ケーブルモデムとVoIP

VoIP（Voice over Internet Protocol）によるIP電話の登場に伴い、ケーブルモデムもVoIPをサポートするよう進化しました。現在では、ケーブルテレビサービスを提供する会社がIP電話機能も提供することが一般的になり、ケーブル一本でテレビ、インターネット、電話のサービスを利用できる環境が実現しています。

多くのケーブルネットワーク業者は、PacketCableという規格に基づいてVoIPサービスを提供しています。PacketCableは、ケーブル伝送システムで高速インターネットとVoIPの両方を提供できるようにする規格で、伝送路全体でのQoSを保証できるなどの利点があります。また、ケーブルテレビ業者のVoIPサービスを利用する際には、E-MTA（Embedded Multimedia Terminal Adapter）というケーブルモデムとVoIPアダプタを一体化した機器がよく使われています。

ネットワーク機能

ケーブルモデムは、IEEE 802.1Dに準拠したネットワークブリッジとして機能し、イーサネットネットワークとケーブルネットワークの間でデータの橋渡しを行います。OSI参照モデルで言うと、物理層とデータリンク層の役割を担っています。ケーブルモデム自体にIPアドレスを持たせることで、より上位層の機能も持たせることができます。

物理層は、LANインタフェース側のイーサネットPHYと、ケーブル側のDOCSIS PHYで構成されます。ケーブルモデムの本質はケーブル固有のPHYにあります。ネットワーク層では、ケーブルモデムはIPホストとして動作し、ネットワーク運用者が保守に利用します。トランスポート層では、UDPをサポートし、ポート番号に基づいたフィルタリング機能を提供します。アプリケーション層では、DHCP、SNMP、TFTPなどの管理・保守プロトコルをサポートします。

一部のケーブルモデムは、ルーターやDHCPサーバの機能も備えており、LAN上のIPアドレスを決定するサービスを提供できます。しかし、ケーブルモデムとしての機能とルーターとしての機能は、ネットワーク構成の観点から区別する必要があります。ルーター機能は、独自のIPアドレスとMACアドレスを持っています。

主なメーカー

以下は、ケーブルモデムの主なメーカーです。

スリーコム
シスコシステムズ
Dリンク
ファーウェイ
リンクシス
モトローラ
ネットギア
ノーテルネットワークス
フィリップス
RCA
サイエンティフィック・アトランタ
トムソン
東芝
ザイセル
シンクレイヤ
住友電工

関連項目

DOCSIS
HFC (Hybrid fibre-coaxial)
デバイス帯域幅の一覧
HomePNA

外部リンク

Cable Modem Information Network
Cable modem
DOCSIS standard
VelocityGuide Cable Modem Information
* DOCSISHelp.com DOCSIS/CMTS/Cable Modem Support Community

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