モロコシ属

モロコシ属（Sorghum）について

モロコシ属（Sorghum）は、イネ科に属する植物群であり、約30の種が分類されています。これらの種は、穀物として、または飼料として、世界中で広く栽培されています。特に、温暖な気候を好み、熱帯や亜熱帯地域に自生しています。

特徴と分布

モロコシ属の植物は、乾燥に非常に強く、アフリカのサバンナやステップ地帯で主要な穀物として栽培されています。原産地はアフリカやユーラシアの低緯度地域で、特にアフリカのサバンナ地帯が栽培化の中心地と考えられています。その歴史は古く、約5000年前にSorghum arundinaceumとスーダングラスの交配により、現在の栽培種であるSorghum bicolor（モロコシ）が誕生したとされています。

栽培化後も、他の野生種との交雑が進み、様々な変種や雑草種が生まれました。栽培種はアフリカ全土や古代エジプト、メソポタミア文明へと伝播し、紀元前7世紀にはアッシリア帝国で、紀元前4世紀にはインドで、4世紀には中国で栽培が確認されています。日本へは平安時代までに伝来しました。さらに、18世紀には奴隷貿易に伴い南米へ、1853年にはアメリカへも導入され、世界中に広がりました。

野生種や雑草種は、食用としても利用されることがありますが、栽培種とは異なり、脱粒性が高いため収穫は困難です。一方で、栽培種との交雑が容易であるため、強害雑草として扱われることも多く、特にセイバンモロコシ（ジョンソングラス）は世界最悪の雑草の一つとして知られています。日本でも1945年ごろに侵入し、帰化植物として各地で繁茂しています。

利用

最も利用されている種はモロコシ（Sorghum bicolor）で、世界で5番目に多く栽培される穀物です。アフリカやインドなどでは主食として粥やパンに使われるほか、醸造にも利用されます。ただし、タンニンを含むため、先進国では主に飼料として利用されます。また、デンプンや糖、アルコール製造の原料としても重要です。

モロコシ属の植物は、飼料としても広く使われ、茎や葉も牧草として利用されます。しかし、成長初期にはシアン化水素などの有毒物質を含むことがあり、注意が必要です。特に、セイバンモロコシやスーダングラスは、この毒性によって飼料としての利用が制限されることがあります。ただし、これらの毒素は乾燥させることで減少するため、干し草として利用する際には危険性が少なくなります。

様々な名称

モロコシは、日本国内で様々な名前で呼ばれています。最も古い呼称は「モロコシ」で、これは「中国から来た穀物」を意味します。後にトウモロコシが伝来した際、区別のため「唐モロコシ」と呼ばれるようになり、現在のトウモロコシの語源となりました。

「ソルガム」は英語名、「コーリャン」は中国語名に由来します。「タカキビ」は、キビに似ていて、背が高いことから名付けられました。このように、多様な呼び名が存在するのは、モロコシが長い歴史の中でさまざまな文化と関わりを持ってきた証と言えるでしょう。

種のリスト

以下に、モロコシ属の主な種を列挙します。

Sorghum almum - コロンバス・グラス。アルゼンチンにおいて飼料として使用される
Sorghum amplum
Sorghum angustum
Sorghum arundinaceum
Sorghum bicolor - 主要な栽培種であるモロコシを含む。
Sorghum brachypodum
Sorghum bulbosum
Sorghum burmahicum
Sorghum controversum
Sorghum drummondii - bicolor種の亜種。スーダングラス。
Sorghum ecarinatum
Sorghum exstans
Sorghum grande
Sorghum halepense - セイバンモロコシ（ジョンソングラス）
Sorghum interjectum
Sorghum intrans
Sorghum laxiflorum
Sorghum leiocladum
Sorghum macrospermum
Sorghum matarankense
Sorghum miliaceum
Sorghum nitidum
Sorghum plumosum
Sorghum propinquum
Sorghum purpureosericeum
Sorghum stipoideum
Sorghum timorense
Sorghum trichocladum
Sorghum versicolor
Sorghum virgatum
* Sorghum vulgare

結論

モロコシ属は、乾燥に強く、多様な用途を持つ重要な植物です。その栽培は古代から行われ、現在も世界中で広く利用されています。多様な名称を持つことからも、その歴史と文化における重要性が伺えます。しかし、一方で雑草としての側面も持ち合わせており、その管理には注意が必要です。

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