モンケ (オルドス部)

オルドスのモンケ

オルドスのモンケ（モンゴル語: Ордосын Мөнх、中国語: 猛可丞相、? - 1476年）は、15世紀後半にオルドス部で活躍した領侯です。「丞相」という称号をもち、ボルフ・ジノンに仕えていましたが、最終的にはベグ・アルスランらによって暗殺されました。

生涯

1460年代後半、東モンゴルでは有力者であったモーリハイ・オンとモーラン・ハーンが相次いで殺害され、モンゴル全体を統率するハーンが不在という時代が到来していました。エセンによるボルジギン氏の虐殺を逃れたボルフ・ジノンは、黄河を渡ってオルドス地方に入り、現地の有力者であったオロチュ小師と同盟を結びました。モンケもボルフ・ジノンの配下として黄河を渡り、大同の西方に侵攻したため、明朝は大同西方の防備を強化せざるを得なくなりました。

1470年代に入ると、モンゴリアの勢力はボルフ・ジノン、マンドゥールン、ベグ・アルスランという3人の有力者によって再編されることになります。成化11年（1475年）には、ボルフ・ジノン、マンドゥールン、ベグ・アルスランと連名で「モンケ丞相」が明朝に使者を派遣しており、モンゴリアにおける有力な領侯の一人として認められていました。

成化年間の頃、ボルフ・ジノン、マンドゥールン、ベグ・アルスラン、オロチュ、そしてモンケ丞相らは、オルドス地方（河套）を拠点として頻繁に明朝への侵攻を繰り返しました。これにより、オルドス地方に隣接する楡林などの都市は大きな被害を受けました。勢力を拡大したボルフ・ジノンとモンケ丞相は、オロチュ少師を殺害し、オルドス地方の支配権を確立しようとしましたが、オロチュは事前にこの計画を察知し逃亡しました。

その後、勢力を拡大したベグ・アルスランは、ボルフ・ジノンをハーンに擁立しようとしましたが、ボルフ・ジノンがこれを辞退したため、マンドゥールンがベグ・アルスランの支持を受けてハーンに即位しました。しかし、マンドゥールンには男子がいなかったため、早い段階から次期ハーンの候補としてボルフ・ジノンの名前が挙がるようになり、このことがボルフ・ジノンとマンドゥールンの関係を悪化させる原因となりました。成化12年（1476年）、マンドゥールンとベグ・アルスランは、ボルフ・ジノンとその重臣であったモンケ丞相、マンドゥ知院を襲撃して殺害し、その勢力を吸収しました。

モンゴル年代記における記述

モンゴル年代記の一つであるアルタン・トブチには、「オルドスのモンケ」と「カダ・ブカ」の二人がモーラン・ハーンとモーリハイ・オンに偽りの報告をしたために、両者が殺し合うことになったという記述があります。モーラン・ハーンがモーリハイ・オンに殺害された後、モーラン・ハーンの妃であるモングチュイは嘆き悲しみ、この弑逆の原因はモンケとカダ・ブカにあると歌ったとされています。この「オルドスのモンケ」は、明朝の記録に登場する「猛可丞相」と活動時期や所属（オルドス部）が一致するため、同一人物であると考えられています。

参考文献

井上治『ホトクタイ＝セチェン＝ホンタイジの研究』風間書房、2002年
岡田英弘訳注『蒙古源流』刀水書房、2004年
岡田英弘『モンゴル帝国から大清帝国へ』藤原書店、2010年
和田清『東亜史研究(蒙古篇)』東洋文庫、1959年

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