モンゴルと北朝鮮の関係

モンゴルと朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）の関係は、過去の歴史的背景と現代の政治的状況が複雑に絡み合っています。両国間の関係は、モンゴル帝国の時代から現代に至るまで、様々な要因によって影響を受けてきました。

歴史的背景

モンゴル人の間では、歴史的に朝鮮半島はモンゴル帝国の属国であり、モンゴルの血統によって権威が確立された国であるという認識があります。また、朝鮮は過去に中国の王朝に服属していた歴史も、この認識を強める要因となっています。

元朝時代には、高麗（朝鮮）の王がモンゴル帝室から后を迎え、モンゴルは朝鮮の王位継承に関与することで支配を強めていました。高麗はモンゴルの歓心を得るために、元寇に加担しました。また、貢女として朝鮮の女性がモンゴルの宮廷に送られ、モンゴル支配層との結婚を望むことで、朝鮮国内の発言力を確保しようとしました。しかし、モンゴルは朝鮮の意図を見抜き、モンゴル王族は高麗出身の女性と結婚することを禁じていました。ただし、トゴン・テムルが貢女を后とした結果、宮廷内で権力をふるい、それが元朝滅亡の一因になったとモンゴル人は考えています。これはモンゴルの年代記にも記録されています。

関係史

両国間の外交関係は1948年 10月15日に樹立され、モンゴルはソ連に次いで2番目に北朝鮮を国家承認しました。朝鮮戦争においてモンゴルは直接的な参戦はしなかったものの、中国・北朝鮮連合軍に支援を行い、北朝鮮の戦後復興にも貢献しました。1953年末にはモンゴル政府は北朝鮮に1万頭もの馬を贈りました。

1960年代から1970年代には、モンゴルは400名以上の朝鮮戦争孤児を受け入れ養育しました。しかし、中ソ対立が激化する中で、モンゴルは親ソ連の立場を取り、一方で北朝鮮は中国寄りの立場を取ったため、両国間の協力は妨げられることとなりました。1982年には中ソ関係が改善され、1986年にはモンゴルと北朝鮮の間で最初の友好協力条約が結ばれました。1988年には金日成がモンゴルを訪問しました。

モンゴルの共産主義政権崩壊後、両国関係は緊張しました。1995年には友好協力条約を破棄し、1999年には韓国大統領のモンゴル訪問を機に北朝鮮はウランバートルの大使館を閉鎖しました。モンゴルは、北朝鮮の外交官が偽造米ドル札を流通させたとして国外追放しました。その後、モンゴルは北朝鮮との関係改善を模索し、2002年には北朝鮮の外務大臣が14年ぶりにモンゴルを訪問しました。最近のハイレベルな二国間訪問は2007年に行われ、最高人民会議委員長の金永南が3度目のモンゴル訪問を果たしました。

非公式な訪問では、北朝鮮側がモンゴルの経済改革に強い関心を示しているとされています。モンゴルは、非西欧諸国であり、共産主義の経験を共有していることから、北朝鮮はモンゴルの経済発展を脅威とは見なしていないと考えられています。モンゴルが自由市場資本主義を北朝鮮に広めることは、モンゴル自身の利益にもつながると期待されています。

シベリア鉄道は、韓国からヨーロッパを結ぶ重要な輸送ルートであり、北朝鮮が経済自由化を行えば、鉄道による輸送が可能となり、モンゴルに経済的利益をもたらすと期待されています。

脱北者問題

脱北者（北朝鮮難民）は両国にとってデリケートな問題です。2005年には韓国の慈善団体がモンゴル政府から土地の割り当てを受け、脱北者向けの難民キャンプを開設したとされています。しかし、2006年にはモンゴルの首相が難民キャンプの存在を公式に否定しました。ある研究者の推計では、政府間合意に基づき軽工業やインフラ整備に従事する出稼ぎ労働者に紛れて、毎月500人の脱北者がモンゴルに入国しているとされています。

2013年にはモンゴルの大統領が北朝鮮を訪問し、特に石油精製の分野において経済的な繋がりを強化すると発表しました。

外交使節

過去には両国間で大使が派遣されていましたが、関係の変動に応じて派遣される大使も変動しています。

駐モンゴル北朝鮮大使:

洪奎（ホン・ギュ、2013～2017年）
呉勝虎（オ・スンホ、2017年～、信任状捧呈は2018年1月8日）

駐北朝鮮モンゴル大使:

ジャムスランギーン・サンブー（1950～1952年）
バティーン・ドルジ（1961～1963年）
シャラヴィン・ゴンガードルジ（1992年～）
ジャンチヴドルジーン・ロムヴォ（～2008年）
ソドブジャムツ・フレルバータル（2008～2011年、信任状捧呈は5月13日）
マニバドラフ・ガンボルド（2012～2016年、信任状捧呈は5月7日）
* スレンギン・ツォグゲレル（2016年～、信任状捧呈は5月13日）

まとめ

モンゴルと北朝鮮の関係は、歴史的な背景、政治的な変動、経済的な可能性など、様々な要素が複雑に絡み合っています。両国は過去の共産主義の経験を共有しつつも、その後の政治的な選択や経済的な発展において異なる道を歩んできました。今後の両国関係がどのように展開していくか、注目されます。

もう一度検索