モンゴル族 (中国)

モンゴル族：中国における多様なモンゴル系民族

モンゴル族は、中華人民共和国を構成する55の少数民族の一つであり、内モンゴル自治区を中心に、新疆ウイグル自治区、青海省、甘粛省など、中国各地に広く分布しています。その人口は、2000年の統計では581万3947人に達し、モンゴル国の人口を大きく上回り、世界最大のモンゴル系民族集団を形成しています。しかし、この「モンゴル族」というカテゴリーは、中華人民共和国の民族識別政策によって形成されたものであり、必ずしも伝統的な部族意識や民族自認と完全に一致するわけではありません。ダウール族やトゥ族などは、歴史的にはモンゴル系民族として認識されてきたにもかかわらず、別個の民族として分類されています。逆に、独自の文語を持つオイラトはモンゴル族に含まれています。この事実は、モンゴル族の定義や構成が必ずしも明確ではないことを示しています。

地理的分布と文化的多様性

モンゴル族の居住地域は、内モンゴル自治区以外にも、新疆ウイグル自治区、青海省、甘粛省、黒竜江省、吉林省、遼寧省などのモンゴル族自治州や自治県に集中しています。さらに、寧夏回族自治区、河北省、四川省、雲南省、北京市などにも散在的に居住しています。四川省や雲南省のモンゴル族は、元朝以降に移動してきた人々で、稲作中心の農業を営む一方で、伝統的なモンゴル文化の要素も残しています。しかし、四川省のモンゴル族はモソ族の言語に近縁な言語を使用し、雲南省のモンゴル族はイ族の言語と同系の言語を使用するなど、言語や文化において多様性が見られます。

言語と宗教

モンゴル族は、アルタイ諸語に属するモンゴル語を話します。内モンゴル、オイラト、バルガ・ブリヤートの3大方言が存在します。中国のモンゴル族は、モンゴル国でキリル文字が使われているのに対し、ウイグル文字を基にした独自のモンゴル文字を使用してきました。しかし近年は、漢語（中国語）の使用が都市部を中心に増加しており、モンゴル語の衰退が懸念されています。新疆ウイグル自治区では、改良されたトドノムという文字も用いられています。

宗教に関しては、チベット仏教を信仰する人が多いものの、宗教観は厳格ではありません。伝統的なシャーマニズムも一部で実践されており、青海省の一部モンゴル族はイスラム教を信仰しています。

歴史と政治

モンゴル族の歴史は、中国の歴史と深く関わっています。文化大革命期には、多くのモンゴル族が迫害を受けました。内モンゴル人民革命党粛清事件では、多数のモンゴル族が処刑されるなど、大きな苦難を経験しています。

現在、モンゴル族は中国国内にいくつかの自治区や自治州、自治県を有しており、一定の自治権を有しています。しかし、中国政府による民族政策の影響下にあることは、常に彼らのアイデンティティと文化の維持に課題を投げかけています。

著名な人物

モンゴル族からは、様々な分野で活躍する著名な人物が輩出しています。大相撲力士の蒼国来栄吉氏、元中華人民共和国副主席のウランフ氏、俳優のバーサンジャブ氏やスーチン・ガオワー氏、バスケットボール選手の巴特爾氏など、多様な分野で活躍する人々がいます。

まとめ

中国のモンゴル族は、歴史、地理、文化、政治といった多様な要素が複雑に絡み合った中で独自のアイデンティティを築き上げてきました。彼らの文化の保存と発展、そして中国社会との共存は、現代中国社会における重要な課題の一つと言えるでしょう。今後、モンゴル族の文化や歴史、そして社会における地位に関する更なる研究と理解が求められます。

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