モーリス・センダック

モーリス・センダック：現代絵本界の巨匠

モーリス・センダック (1928年 - 2012年) は、アメリカ合衆国を代表する絵本作家であり、世界中に計り知れない影響を与えた人物です。ニューヨークのブルックリンで、ポーランドからのユダヤ系移民の両親のもとに生まれました。幼少期は病弱で、母親のいる台所が主な遊び場だったといいます。センダックの兄は児童文学作家として活躍しており、兄弟揃って文学に携わった家系と言えるでしょう。

センダックの創作活動に大きな影響を与えたのは、幼少期の体験です。1928年生まれであるセンダックは、ミッキーマウスが登場した年に誕生しました。このため、彼は大のミッキーマウスファンとなり、ディズニー映画『ファンタジア』の上映を両親と観た体験も、後々の創作活動の土台となりました。

高校卒業後、ニューヨーク市のF.A.O.シュワーツ玩具店でウィンドウ装飾の仕事をしながら、アート・ステューデンツ・リーグ夜間部でデザインを学びました。この頃、19世紀イギリスの古典絵本や20世紀スイスの絵本などに触れ、強い感銘を受けたとされています。23歳で絵本挿絵の仕事に携わるようになり、やがて自身で絵本を制作するようになりました。

1952年、『あなはほるもの おっこちるとこ』でニューヨーク・タイムズ年間最優秀図書に選ばれるなど、早くから才能を発揮しました。しかし、彼の名を世界に知らしめたのは、1964年に発表された『かいじゅうたちのいるところ』です。この作品はコールデコット賞を受賞し、世界中で2000万部以上も売れるベストセラーとなりました。

『かいじゅうたちのいるところ』は、当初は子供への悪影響を懸念する親からの批判もありました。しかし、夢想的で自由な視点で描かれた物語は、子供たちから熱烈な支持を受けました。この作品は、親しみやすさと芸術性を融合させた、傑作として広く評価されています。

センダックの画風は、ランドルフ・コールデコットなどの19世紀の古典絵本の影響を受けつつも、ディズニー作品からインスピレーションを得た独自のスタイルです。そこに幼少期の体験が重ね合わさり、独特の世界観が表現されています。

センダックは、『かいじゅうたちのいるところ』以外にも多くの絵本作品を発表しました。『まよなかのだいどころ』『まどのそとのそのまたむこう』と合わせて、「三部作」と称されることもあります。また、『とおいところにいきたいな』『きみなんかだいきらいさ』『おふろばをそらいろにぬりたいな』など、数多くの作品が翻訳され、世界中で愛読されています。

絵本作家としての活動に加え、センダックはアニメーション映画や舞台美術にも携わっていました。彼の脚本を基にしたオペラ『かいじゅうたちのいるところ』『ヒグレッティ・ピグレッティ・ポップ!』は、高く評価されています。

2007年に長年のパートナーが亡くなったことをきっかけに、公にゲイであることを発表しました。そして、2012年、脳卒中の後遺症により83歳で亡くなりました。センダックの功績は、数々の受賞歴にも表れています。国際アンデルセン賞画家賞、全米図書賞（児童文学部門）、ローラ・インガルス・ワイルダー賞、アストリッド・リンドグレーン記念文学賞など、多くの栄誉に輝きました。

モーリス・センダックは、独自の画風と深い洞察力で、現代絵本界に革命をもたらしたと言えるでしょう。彼の作品は、時代を超えて子供たちの心を捉え続け、多くの読者に感動と勇気を与え続けています。彼の残した作品は、これからも多くの人々に愛され、読み継がれていくことでしょう。

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