モーリタニア (客船・初代)

豪華客船「モーリタニア」の生涯

「モーリタニア」（RMS Mauretania）は、イギリスのキュナード・ラインが誇る客船であり、その名声は20世紀初頭に一世を風靡しました。スワン・ハンター造船所で建造され、1906年 9月20日に進水したこの船は、当時としては画期的な蒸気タービンを搭載し、姉妹船「ルシタニア」と共に、大西洋定期船のデザインに大きな影響を与えました。その豪華さ、高速性、そして安全性は乗客から高く評価されました。

船名の由来は、ローマ帝国の属州であったマウレタニアにちなんでいますが、後に国名として使用されるようになったモーリタニア（Mauritania）とは異なります。

誕生の背景

1897年、ドイツ客船「カイザー・ヴィルヘルム・デア・グローセ」がブルーリボン賞を受賞し、キュナード・ラインはそれまで保持していた世界最速の称号を失いました。さらに、アメリカの資産家ジョン・モルガンによる大西洋定期船会社の買収計画が持ち上がり、キュナード・ラインは危機に瀕しました。しかし、イギリス政府の支援により独立を維持し、1903年には政府と2隻の定期船建造で合意。「ルシタニア」と「モーリタニア」の計画が発案されました。政府は、24ノット以上の速力を条件に£2,600,000の資金援助を決定しましたが、有事の際には軍に引き渡すこと、補助金に利子をつけて返済することを求めました。

進水と初期の活躍

1906年に進水した「モーリタニア」は、「ルシタニア」とは通風管の形状や全長が異なり、蒸気タービンも2つ多く搭載されていました。試運転中に船体振動が発生し、補強工事が必要となりましたが、就航後にはすぐにブルーリボン賞を獲得し、蒸気タービンを採用した初の受賞船となりました。1907年 11月16日、ジョン・プリットチャード船長の指揮下で処女航海を行い、数ヶ月後には東回り航路でブルーリボン賞を受賞。さらに1909年には西回り航路でも受賞し、20年以上記録を保持しました。

しかし、1910年 12月には故障により漂流し、大きな損傷を受け、予定されていたクリスマス航海は中止となりました。さらに、1914年 1月26日にはリヴァプールでの作業中にガスシリンダーが爆発し、死傷者を出す事故も発生しました。

第一次世界大戦での役割

第一次世界大戦が勃発すると、「モーリタニア」は当初仮装巡洋艦として徴用されることが検討されましたが、最終的には軍事輸送船として兵士の輸送に従事しました。高速性からUボートの攻撃を避けることができ、その後は病院船としても活躍しました。アメリカが参戦すると、アメリカ兵の輸送にもあたり、終戦までその役割を果たしました。

客船としての復帰と改修

1919年 9月21日、「モーリタニア」は再び客船として運航を開始しました。しかし、1921年の火災をきっかけに、キュナード・ラインは大規模な改修を決定。ボイラーの重油専焼化や蒸気タービンの廃止などの工事が行われました。1924年 5月には大西洋航路に復帰を果たしました。

ブルーリボン賞の喪失と引退

1928年には内装が刷新されましたが、翌年にはドイツ客船「ブレーメン」がブルーリボン賞を奪取し、22年間保持してきた記録に終止符が打たれました。キュナード・ラインは「モーリタニア」での再挑戦を断念し、1929年には鉄道連絡船との衝突事故も発生しました。

1930年代に入ると世界恐慌の影響でクルーズ客船に転用され、1934年にはキュナード・ラインとホワイト・スター・ラインの合併により、他の大型客船が就航。これにより「モーリタニア」の役割は減少し、1934年 9月には最後のニューヨーク-サウサンプトン航海を行いました。この航海では平均速力24ノットを記録し、28年間の運航に幕を閉じました。

解体

1935年 5月には内装の一部がオークションにかけられ、同年7月1日、解体業者へと輸送されました。解体に際しては、多くのファンが反対運動を起こし、フランクリン・ルーズベルト大統領も抗議の手紙を送ったと伝えられています。「モーリタニア」は自身が建造された造船所があるタインアンドウィア州に寄港し、住民に見送られながら解体されました。

内装のその後

オークションに出された内装の一部は、ブリストルのモーリタニア・パブリック・ハウスに移設され、現在も営業を続けています。また、別の1等客室はロンドンのパインウッド・スタジオで使用されました。「モーリタニア」を元にしたテーマ曲も存在します。

出典

モーリタニア、ハンフリー・ジョダン著
大西洋定期船:3姉妹船たち、J・ケント・レイトン

外部リンク

Tyne & Wear Archives Service Mauretania website
Tyne & Wear Archives Service main website
Mauretania Home at Atlantic Liners
* Maritimequest RMS Mauretania Photo Gallery

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