ヤッシーの講和

ヤッシーの講和

ヤッシーの講和（ヤッシーのこうわ）、英称ポリッシュでの呼称は"Treaty of Jassy"は、露土戦争の終結をもたらした重要な条約で、1792年にモルダヴィアのヤッシーにて調印されました。この条約は、ロシア帝国とオスマン帝国の間で結ばれ、両国の国境を再定義し、ロシアの領土的な影響力を拡大したことが特徴です。

戦争の背景

第二次露土戦争（1787年-1792年）は、ロシア帝国とオスマン帝国間の対立が再燃した戦争でした。背景には、すでに形成された敵対関係やロシアの南下政策、そしてクリミア半島の領有権を巡る争いがありました。1768年から1774年にかけて行われた第一次露土戦争において、ロシアはオスマン帝国に対して優位な立場を得ており、1774年のキュチュク・カイナルジ条約により、黒海沿岸への勢力拡大を果たしていました。

この戦争では、ロシアの女帝エカチェリーナ2世の下で進められた軍事行動が大きく影響しました。彼女は、クリミア半島を併合し、オーストリアとの同盟を背景にバルカン半島への進出を図りました。

講和までの経緯

1787年4月、オスマン帝国はロシアに対し宣戦布告を行い、露土は4年以上にわたって戦闘を続けました。この戦争ではロシアの名将アレクサンドル・スヴォーロフが戦局を有利に進めましたが、フランス革命や他国の介入による状況の変化などから、講和に向けた動きが強まりました。1791年に入ると、モルダヴィアでの講和会議が開催され、ロシアとオスマン帝国間の交渉が進展しました。

講和条約の内容

1791年12月29日（ユリウス暦）、ヤッシーにおいて、ウクライナのアレクサンドル・ベズボロドコ公爵とオスマンの大宰相ユスフ・パシャの間で講和条約が締結されました。この条約の主な内容は、1783年に設定されたクリミア・ハン国のロシアへの併合をオスマンが正式に承認し、エディサン地方をロシアに割譲することでした。これによって、両国の国境はドニエストル川に移動し、ロシアの影響力はさらなる拡大を果たしました。

影響とその後の展開

この講和の結果、ロシアは黒海沿岸の制海権を獲得し、貿易都市オデッサやヘルソンなどの港湾都市が発展を遂げました。多くの住民の入植により「新ロシア」と呼ばれる領域は農業地域として著名となり、特に穀物の生産が盛んに行われるようになりました。

一方、オスマン帝国は黒海の海軍力を失い、ロシアの南下政策の進展に直面することになりました。ヤッシーの講和以降も両国は衝突を繰り返しましたが、ロシアはこの後も地中海東部への影響を強め、ブカレスト条約によりモルダヴィアのベッサラビアなどを獲得するなどしていきます。

他国との連携や対立も影響し、東方問題においてはロシアとオーストリアの関係が緊張し、バルカン半島では両国の利害が相反するようになりました。これにより、バルカン地域は新たな力の変動を迎えることになります。

以上がヤッシー講和及びその経緯、影響についての概要です。

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