ヤマコウバシ

ヤマコウバシ（山香ばし）

ヤマコウバシ（学名: Lindera glauca）は、クスノキ科クロモジ属に分類される落葉性の低木です。山地の森林の縁などに生育しており、その香りの良さから、古くから人々に親しまれてきました。

特徴

樹高: 3〜5メートル程度に成長する落葉広葉樹の低木です。
雌雄異株: 雌株と雄株が存在しますが、日本には雌株のみが生息しています。これは、日本のヤマコウバシが単一の株からクローンとして広がったためであることが、研究によって明らかにされています。
樹皮: 樹皮は淡褐色から茶褐色をしており、滑らかな質感です。
枝: 枝は褐色で、クロモジと似ていますが、色が異なります。
葉: 葉柄は短く、葉や枝にはショウブのような独特の香りがあります。秋には黄色や橙色、時にはくすんだ赤色に紅葉し、冬になっても枯葉が枝に残るのが特徴です。
冬芽: クロモジ属の中では唯一、葉と花が一緒に入った混芽を持つことが特徴です。芽鱗は7〜9枚で構成され、枝先には仮頂芽、側芽が互生します。葉痕は半円形です。
果実: 果実は初冬まで枝に残ることが多く見られます。

分布と生育環境

ヤマコウバシは、中国、朝鮮半島、そして日本では関東地方以西の本州、四国、九州の低地や山地に分布しています。

香りの由来

和名の由来は、葉や枝を折ると、クロモジと同様の芳香を放つことにあります。また、別名としてヤマコショウ（山胡椒）と呼ばれることもあります。

利用

ヤマコウバシは、その香りの良さから、庭木として利用されることがあります。また、葉や枝を乾燥させて、香りを楽しむこともあります。

その他

ヤマコウバシは、その美しい紅葉や、冬に枯葉が残る姿、そして独特の香りなど、一年を通して様々な魅力を持つ植物です。その生態や特徴を理解することで、より深く自然を楽しむことができるでしょう。

参考文献

鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年。
茂木透 写真『樹に咲く花 離弁花1』高橋秀男・勝山輝男 監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2000年。
林将之『紅葉ハンドブック』文一総合出版、2008年。
林将之『葉で見わける樹木 増補改訂版』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、2010年。
広沢毅解説、林将之写真『冬芽ハンドブック』文一総合出版、2010年。
尼川大録、長田武正『検索入門樹木 : 総合版』保育社、2011年

外部リンク

National Center for Biotechnology Information（NCBI）（英語）
Encyclopedia of Life（英語）
岡山理科大学　植物雑学事典

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