ヤマシギ

ヤマシギの概要

ヤマシギ（山鷸、学名: Scolopax rusticola）は、チドリ目シギ科に分類される鳥です。この種はその独特な姿や生態から、多くの人々の関心を集めています。

分布

ヤマシギはユーラシア大陸の中緯度地域で夏に繁殖し、冬になるとヨーロッパやアフリカの地中海沿岸、インド、さらには東南アジアに渡り越冬します。日本では、主に北海道で夏鳥として観察されるほか、本州中部以北や伊豆諸島では留鳥として存在しています。一方、西日本や南西諸島では冬鳥として見かけられることが多いです。

形態

この鳥の体長は約35cmで、ハトに似た大きさをしています。特徴的なのは、その長くてまっすぐなくちばしと、目が頭の中央よりも後方上部に位置していることです。このため、ヤマシギはほぼ360度の視界を持っています。また、首や尾、足は他のシギと比べて短いのが特徴です。

生態

ヤマシギは主に森林、草地、農耕地、湿地に生息しており、水辺でも見られることがありますが、主な棲息場所は森林の中です。このため、羽毛の色合いは灰色、黒、赤褐色が交じり合っており、特にじっとしていると非常に見つけにくい特性を持っています。さらに、ヤマシギは夜行性であり、その姿を見ることが難しい鳥と言えるでしょう。

食性は動物食で、主に土にくちばしを差し込み、地中にいるミミズなどの小動物を捕獲して食べています。繁殖は地面で営巣し、通常4つの卵を産む雌が抱卵し、20日から24日かけて孵化します。

狩猟

ヤマシギは狩猟鳥として指定されており、食用としても好まれる存在ですが、地域によっては数が減少しており、そのため狩猟に対して批判的な意見も存在します。京都府では2003年以降、法律によりヤマシギの捕獲が禁止されています。他の地域でも、狩猟者に対して自粛を促す声が挙がっています。

国外での状況

フランスではヤマシギが希少価値の高いジビエとして人気を博しましたが、乱獲によって数が減り、禁猟となった経緯があります。そのため、イギリスなどからの輸入が行われています。また、料理においては内臓が特に重宝され、付けたままで調理することが一般的です。さらに、ヤマシギを狩るために使われる犬がアメリカン・コッカー・スパニエルの祖先となっています。

近縁種

アマミヤマシギ（奄美山鷸、学名: Scolopax mira）は、日本の奄美大島や沖縄本島にのみ生息する固有種です。この種はヤマシギよりも赤褐色が少なく、くちばしがやや短くて太いのが特徴です。生息地が非常に限られているため、国内希少野生動植物種や、鳥類レッドリストの「絶滅危惧II類 (VU) 」にも指定されています。

人との関係

アイヌの文化では、ヤマシギは「トゥレプタチリ」として知られ、「ウバユリを掘る鳥」と称されています。これは、アイヌのオオウバユリを掘る道具に似た姿から名付けられたとされます。また、カムイユーカラにおいては、ヤマシギが女の子にたとえられ、山菜採りが女性の仕事であることを示唆しています。一方、ヤマシギの「彼氏」とされるのは「チプタチリ」（舟を彫る鳥）と称されるクマゲラで、木の幹に巣穴を作る様が、男性の仕事である舟の形に例えられています。

参考文献

• - 高野伸二他 山渓カラー名鑑『日本の野鳥』、山と渓谷社 、1985年
• - 桐原政志 『日本の鳥550 水辺の鳥』、文一総合出版、2000年

関連項目

• - 日本の野鳥一覧
• - シギ科

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