ヤマトシマドジョウ

ヤマトシマドジョウ（Cobitis matsubarae）の概要

ヤマトシマドジョウ（学名: Cobitis matsubarae）は、コイ目ドジョウ科に所属する淡水魚であり、日本固有種の一つです。この魚類は、特にヤマトシマドジョウ種群として知られるグループに分類されます。この種群は異種間交雑に起因する特異な性質を持ち、学術的には非常に重要視されていますが、学名に関する記載に不備があり、命名規約の観点からは無効とされています。それにもかかわらず、過去の多くの文献でこの名称が利用され続けているため、以降の記述ではこの学名が引き続き使用されます。

分布

ヤマトシマドジョウは日本の本州の西部、特に山口県や九州の複数の地域に分布しています。具体的には、福岡県、佐賀県、長崎県北部、大分県、熊本県、宮崎県中部、鹿児島県西部などが含まれ、壱岐島や天草下島でも観察されることがあります。また、同じ生息地にはオオシマドジョウやオンガスジシマドジョウなどの類似の種も共存しています。

形態

本種の全長は約7から9センチメートルで、一般的に雌の方が大きく成長します。口部には三対六本のひげがあり、特徴的な形状をしています。目の大きさに対して、第2口髭は短めであるものの、視覚的には明瞭な印象を与えます。尾鰭の根元には二つの明瞭な斑点が存在し、その上部の斑点がより鮮明です。尾鰭には3から5列の弧状の横帯が見られ、背鰭には3から6列の弓状の模様があります。体側には通常点列状の斑紋が見られますが、一部の河川では繁殖期のオスにおいて縦条模様に変化することも報告されています。

生態

ヤマトシマドジョウは、水流の緩やかな清浄な河川や水路に棲息しており、砂底や砂利の中で生活します。食性は肉食的で、小型の水生生物や藻類を盛んに摂取します。繁殖期は4月から6月にかけてであり、岸近くの植生が生い茂る場所で、約1.1ミリメートルの卵を産みつける習性があります。特に伏流水が流れている場所を好む傾向があります。生後おおむね2年で成熟しますが、飼育環境下では3年以上生存することもあります。

分類

かつて、ヤマトシマドジョウはタイリクシマドジョウと同じ種と考えられていましたが、遺伝的および形態的な研究によって別種として認識されるようになりました。2011年には、宮崎県の個体群が独立した種として分類され、2015年には新たにオオヨドシマドジョウとして名付けられました。同様に、山口県内の特定地域に生息するヤマトシマドジョウも遺伝的な違いが確認され、ヤマトシマドジョウA型として区別されています。

人間との関係

ヤマトシマドジョウは観賞魚として人気があり、ペットとして飼育されることもあります。しかし、保全状況は芳しくなく、環境省のレッドリストでは絶滅危惧II類に指定されています。

地方名と保全状況

地域によっては、ヤマトシマドジョウにはさまざまな呼称が存在します。例として、山口県では「スナドジョウ」と呼ばれたり、福岡県では「カタビラドジョウ」といった呼び名が使われています。保全の観点からは、絶滅の危機にさらされていることから、適切な生息環境の保護が急務です。保全活動が進むことで、この貴重な種が次世代へと引き継がれることが期待されます。

もう一度検索