ヤーダヴァ朝

ヤーダヴァ朝の興亡

ヤーダヴァ朝は、12世紀末から14世紀初頭にかけて、インドのデカン地方、現在のマハーラーシュトラ州を中心に存在したヒンドゥー王朝です。9世紀から12世紀まではセーヴナプラを本拠としていたため、セーヴナ朝とも呼ばれています。首都はセーヴナプラ、後にデーヴァギリ（デーオギリとも）に移されました。

後期チャールキヤ朝からの独立

ヤーダヴァ朝は、月種族ヤドゥの子孫を意味する「ヤーダヴァ」を名乗りますが、同時代の史料では家名の「セーヴナ」で呼ばれることが一般的でした。もともとはラーシュトラクータ朝、後期チャールキヤ朝の封臣（諸侯）であり、9世紀から12世紀にかけてセーヴナプラを拠点としていました。12世紀末、ビッラマ5世は後期チャールキヤ朝が王位継承争いで衰退しているのを見て、デーヴァギリを都に定め、勢力を拡大します。1185年頃には、後期チャールキヤ朝のソーメーシュヴァラ4世をカリヤーニから追放し、独立を達成しました。

強大化と近隣諸国との争い

独立後、ヤーダヴァ朝は勢力を拡大していきます。しかし、後期チャールキヤ朝を滅ぼしたホイサラ朝とは激しく争い、後期チャールキヤ朝の南側領土を確保することはできませんでした。ビッラマ5世は、北方ではマールワーやグジャラートに軍を送り込みましたが、次のジャイトゥギの時代には東方のカーカティーヤ朝にも遠征を行いました。

シンガナ2世の治世で、ヤーダヴァ朝は全盛期を迎えます。デカン地方一帯を支配するだけでなく、南はホイサラ朝との戦いを繰り返し、カーヴェーリ川上流域までを蹂躙、北西はグジャラート、西はゴアを制圧しました。しかし、東南部ではカーカティーヤ朝の勢力拡大を阻止され、勢力均衡が保たれました。シンガナ2世の曾孫ラーマチャンドラ（ラーマデーヴァ）は、ホイサラ朝の首都ドーラサムドラを包囲しましたが、反撃により大敗を喫しました。

ハルジー朝による属国化と滅亡

1294年、ハルジー朝のアラー・ウッディーン・ハルジーがデーヴァギリを攻撃し、ラーマチャンドラはハルジー朝に貢納を約束させられました。この際、ハルジー朝は多くの戦利品を得て、後の王朝簒奪に役立てました。貢納を怠るようになったラーマチャンドラに対し、1307年にアラー・ウッディーンはマリク・カーフールを派遣し、デーヴァギリを陥落させます。ラーマチャンドラは捕虜としてデリーへ連行されましたが、アラー・ウッディーンに臣従を誓ったことで、帰国を許され、グジャラートの一地区を与えられました。

これにより、ヤーダヴァ朝は事実上ハルジー朝の属国となり、デーヴァギリはハルジー朝の拠点として使われるようになりました。ラーマチャンドラが亡くなると、息子のシャンカラデーヴァはハルジー朝に反抗しますが、1313年にマリク・カーフールに敗れて戦死します。その後、ラーマチャンドラの娘婿であるハラパーラデーヴァが王位を継承し独立を宣言しますが、1317年にハルジー朝によって完全に滅ぼされ、領土は併合されました。

ヤーダヴァ朝滅亡後、1327年にトゥグルク朝のムハンマド・ビン・トゥグルクはデーヴァギリを「ダウラターバード」と改称し、デリーから遷都しています。

文化

ヤーダヴァ朝は、学芸の保護に力を入れていました。特にシンガナ2世の孫マハーデーヴァの時代には、有力な大臣ヘーマードリが経典の注釈を著し、多くの寺院を建てました。ヘーマードリ様式と呼ばれる、荘重で外面に彫刻を施さない建築様式が特徴的です。

歴代君主

ビッラマ5世（1173年 - 1192年）
ジャイトゥギ（1192年 - 1200年）
シンガナ2世（1200年 - 1247年）
クリシュナ（1247年 - 1261年）（シンガナ2世の孫）
マハーデーヴァ（1261年 - 1270年）（クリシュナの弟）
アーマナ（1271年）
ラーマチャンドラ（1271年 - 1311年）（クリシュナの子、ラーマデーヴァとも）
シャンカラデーヴァ（1311年 - 1313年）（シンガナ3世とも）
* ハラパーラデーヴァ（1313年 - 1317年）（ラーマチャンドラの娘婿）


この解説は、ヤーダヴァ朝の歴史、文化、そして歴代の君主について理解を深めることを目指しています。

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