カーカティーヤ朝

カーカティーヤ朝の興亡

11世紀初頭から14世紀初頭にかけて、インド南東部（現在のアーンドラ・プラデーシュ州）に存在したヒンドゥー王朝、カーカティーヤ朝。その歴史は、後期チャールキヤ朝からの独立、繁栄、そしてデリー・スルターン朝による滅亡という波乱に満ちたものでした。首都はワランガルに置かれ、その壮大な歴史は今もなお多くの人々の関心を集めています。

後期チャールキヤ朝からの独立

カーカティーヤ朝の歴史は、11世紀にベータ1世という王が登場したことから始まります。彼の息子であるプローラ1世の時代には、勢力を拡大し、後期チャールキヤ朝に仕える有力な封臣となりました。主君であるタイラ3世からハナムコンダの地を与えられ、その基盤を築きます。しかし、プローラ1世の孫であるプローラ2世は、主君ヴィクラマーディティヤ6世の死後、反乱を起こし、ハナムコンダに攻めてきたタイラ3世を捕虜にするという大胆な行動に出ます。これにより、カーカティーヤ朝は独立を達成し、新たな時代を迎えることになります。

カーカティーヤ朝の繁栄

プローラ2世の死後、王朝は一時的に混乱に陥ります。彼の2人の息子、プラターパルドラ1世とその弟マハーデーヴァは、ヤーダヴァ朝との戦いで戦死し、マハーデーヴァの息子であるガナパティ・デーヴァは捕虜になるという屈辱を味わいます。しかし、後に許されて帰国し、王位に就いたガナパティ・デーヴァは、東方のカリンガや南方の地方勢力を服従させ、王朝の勢力を回復させました。また、チョーラ朝の領土を蚕食し、カーンチープラムまでを支配下に置くという大きな躍進を遂げました。これにより、カーカティーヤ朝はホイサラ朝、ヤーダヴァ朝、パーンディヤ朝という強大な王朝と対峙することになります。

ガナパティ・デーヴァの治世下では、シヴァ派が保護され、その布教活動が支援されました。また、新首都ワランガルを築き、海港モートゥパッリでの海外貿易を積極的に推進することで、国力の増強に大きく貢献しました。その後を継いだ娘のルドラマ・デーヴィー（ルドラーンバー）は、ヤーダヴァ朝の侵入や封臣の反乱により南方の領土を失いますが、貿易振興策によって経済的に繁栄させ、その治世はマルコ・ポーロによって「名君」と称えられました。マルコ・ポーロは、カーカティーヤ朝の海港モートゥパッリを訪れ、女王の善政とその繁栄ぶりを記録に残しています。ルドラマ・デーヴィーの孫であるプラターパルドラ2世の時代には、王国の領土を77地区に分け、ナーヤカと呼ばれる領主に統治させる行政システムが導入されました。この制度は、後のヴィジャヤナガル王国のナーヤカ制に大きな影響を与えたと言われています。

デリー・スルターン朝による攻撃と滅亡

カーカティーヤ朝の繁栄も長くは続きませんでした。1309年、デリー・スルターン朝のハルジー朝を率いるアラー・ウッディーン・ハルジーは、名将マリク・カーフールをデカン地方に派遣しました。1310年（または1309年）には、首都ワランガルが陥落しましたが、プラターパルドラ2世は貢納を条件にカーフールと和議を結びました。その後、プラターパルドラ2世は南方に転戦し、ホイサラ朝やパーンディヤ朝を破り、北はゴーダヴァリー川から南はカーヴェーリ川下流のティルチラーパッリまで勢力下に収めましたが、これはハルジー朝が南インドを直接支配しないという条件下のかりそめの繁栄に過ぎませんでした。

1320年、デリー・スルターン朝ではハルジー朝に代わってトゥグルク朝が成立しました。1321年、プラターパルドラ2世は貢納を停止したため、1322年に南インドの直轄領化を目指したトゥグルク朝は、王子ウルグ・ハーンを派遣し攻撃を仕掛けます。プラターパルドラ2世はこれを撃退しましたが、翌1323年、再びウルグ・ハーンの軍勢によってワランガルは陥落し、カーカティーヤ朝は滅亡しました。プラターパルドラ2世は捕らえられ、デリーに送還される途中で死亡しました。カーカティーヤ朝の滅亡後、1336年に成立したヴィジャヤナガル王国の創始者であるハリハラとブッカは、この王朝に仕えていたとされています。

歴代君主

カーカティーヤ朝の歴代君主は以下の通りです。

ベータ1世（Beta I, 在位：1000年 - 1030年）
プローラ1世（Prola I, 在位：1030年 - 1075年）
ベータ2世（Beta II, 在位：1075年 - 1110年）
プローラ2世（Prola II, 在位：1110年 - 1158年）
プラターパルドラ1世（Prataparudra I, 在位：1158年 - 1196年）
マハーデーヴァ（Mahadeva, 在位：1196年 - 1199年）（プラターパルドラ1世の弟）
ガナパティ・デーヴァ（Ganapati Deva, 在位：1199年 - 1262年）
ルドラマ・デーヴィー（Rudrama Devi, 在位：1262年 - 1296年）（ルドラーンバー（Rudramba）とも）
* プラターパルドラ2世（Prataparudra II, 在位：1296年 - 1326年）（ルドラーマ・デーヴィーの孫）

まとめ

カーカティーヤ朝は、その興亡を通して、南インドの歴史に大きな足跡を残しました。初期の独立から、ガナパティ・デーヴァによる勢力拡大、そしてルドラマ・デーヴィーの治世下の経済繁栄、デリー・スルターン朝による滅亡まで、その歴史は激動に満ちていました。この王朝が築き上げた文化、行政システム、そして経済的な発展は、後のヴィジャヤナガル王国にも大きな影響を与えました。カーカティーヤ朝の歴史は、インド史を語る上で欠かせない重要な要素の一つです。

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