ホイサラ朝

ホイサラ朝は、11世紀から14世紀にかけて南インド、現在のカルナータカ州中南部のマイソール地方を中心に栄えたヒンドゥー王朝です。初期の首都はベールール、後にドーラサムドラ（現在のハレービードゥ）に移されました。

歴史

起源と後期チャールキヤ朝の封臣時代

ホイサラ朝の始祖とされるヌリパ・カーマは、マイソール地方の山間部族の長でした。11世紀に平野部へ進出し、マイソール地方に侵入してきたチョーラ朝との戦いで、西ガンガ朝と後期チャールキヤ朝を支援し、後期チャールキヤ朝の封臣となりました。ヌリパ・カーマの息子ヴィナヤーディティヤも後期チャールキヤ朝に仕え、カーヴェーリ川上流のドーラサムドラを拠点に勢力を拡大しました。

ヴィナヤーディティヤの孫ヴィシュヌヴァルダナの時代には、後期チャールキヤ朝の王位継承争いによりホイサラ家の勢力が強大化し、事実上の独立を果たします。ヴィシュヌヴァルダナは、チョーラ朝からタラカードを奪い、チャールキヤ朝の領土併合も試みました。また、宗教哲学者ラーマーヌジャに師事しヴィシュヌ派に改宗、首都にホイサレシューヴァラ寺院などを建設しました。

ホイサラ朝の独立とカーヴィリ川下流域への介入

ヴィシュヌヴァルダナの孫バッラーラ2世の時代、後期チャールキヤ朝は封臣のカラチュリ家に首都を占領されるなど弱体化しました。バッラーラ2世は、1189年に後期チャールキヤ朝を滅ぼし、ヤーダヴァ朝の南進も阻止して、旧チャールキヤ領の南半分を獲得し、独立を確立しました。この結果、後期チャールキヤ朝の版図は、北西部をヤーダヴァ朝、南西部をホイサラ朝、東側をカーカティーヤ朝が分割する形となりました。

13世紀には、チョーラ朝とパーンディヤ朝の抗争が激化し、バッラーラ2世の息子ナラシンハ2世はチョーラ朝と同盟し、カーヴェーリ川下流域に進出しました。ナラシンハ2世の息子ソーメーシュヴァラは、カーヴェーリ川下流のカンナヌールを拠点にパーンディヤ朝やカーカティーヤ朝と戦い、ホイサラ朝はドーラサムドラとカンナヌールの二つの中心を持つこととなりました。これにより、後の王位継承争いの要因となりました。

再統一から滅亡

1264年のソーメーシュヴァラの死後、ナラシンハ3世とラーマナータは対立し、ドーラサムドラとカンナヌールは争いを繰り広げました。しかし、1300年前後にはナラシンハ3世の息子バッラーラ3世がカンナヌールを滅ぼし、王国を再統一しました。しかし、北インドではハルジー朝が台頭し、アラー・ウッディーン・ハルジーの将軍マリク・カーフールによって1310年には首都ドーラサムドラも陥落し、莫大な財宝を奪われ、貢納を強いられました。

ハルジー朝滅亡後、一時独立を回復しましたが、1323年にトゥグルク朝の侵攻により再び屈服しました。その後、トゥグルク朝に対する反乱に呼応するも、ヴィジャヤナガル王国と敵対しました。1342年、バッラーラ3世はマドゥライ・スルターン朝との戦いで戦死し、子のバッラーラ4世も抵抗を続けましたが、1346年にヴィジャヤナガル王国との戦いで戦死し、ホイサラ朝は滅亡しました。

行政機構

ホイサラ朝の行政機構については、碑文からマハープラダーナ（高官）、ダンダナーヤカ（地方長官）、サルヴァーディカーリ、セーナーパティなどの官職や称号があったことがわかっていますが、具体的な統治機構の詳細は不明です。

ホイサラ様式

ホイサラ朝時代には、独特な建築様式であるホイサラ様式の寺院が建てられました。壁面には細かなレリーフが施され、平面プランは星型で、３つの聖堂が一組となるのが特徴です。代表的な寺院として、ヴィシュヌヴァルダナが建設したホイサレシューヴァラ寺院（ドーラサムドラ）や、チェンナケーシャヴァ寺院（ベールール）、ケーシャヴァ寺院（ソーマナータプラ）があります。これらの寺院は2023年にユネスコの世界遺産に登録されました。

寺院の基部には、象の列、馬の列、神話的な動物、唐草模様、神話的な場面が細かく彫り込まれています。屋根の平面プランは星型ですが、横から見ると釣り鐘状に見えます。

世界遺産の登録基準

ホイサラ朝の寺院群は、以下の登録基準を満たし、世界遺産に登録されました。

(1) 人類の創造的才能を表現する傑作である。
(2) ある期間を通じて、またはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すものである。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積、または景観の優れた例である。

歴代君主

ヌリパ・カーマ（Nripa Kama, 在位：1022年 - 1047年）
ヴィナヤーディティヤ（Vinayaditya, 在位：1047年 - 1098年）
イェレヤンガ（Ereyanga, 在位：1098年 - 1100年）
バッラーラ1世（Ballala I, 在位：1098年 - 1111年）
ヴィシュヌヴァルダナ（Vishnuvardhana, 在位：1110年 - 1152年）
ナラシンハ1世（Narasimha I, 在位：1152年 - 1173年）
バッラーラ2世（Ballala II, 在位：1173年 - 1220年）
ナラシンハ2世（Narasimha II, 在位：1220年 - 1238年）
ソーメーシュヴァラ（Someshvara, 在位：1238年 - 1262年）
ナラシンハ3世（Narasimha III, 在位：1254年 - 1292年）
バッラーラ3世（Ballala III, 在位：1292年 - 1342年）
バッラーラ4世（Ballala IV, 在位：1342年 - 1346年）

カンナヌール王統

ラーマナータ（Ramanatha, 在位：1254年 - 1295年）
ヴィシュヴァナータ（Vishvaanatha, 在位：1295年 - 1300年）

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