ラーシュトラクータ朝
ラーシュトラクータ朝は、8世紀後半から10世紀後半にかけてインドのデカン地方を支配したヒンドゥー王朝です。その版図は、最盛期には北インドからインド亜大陸南端にまで及び、広大な領域を統治しました。
ラーシュトラクータ家は、元々ラージプートに属する家系で、前期チャールキヤ朝の封臣として、7世紀前半からベラール地方を治めていました。733年にダンティドゥルガが家督を継ぐと、主家の衰退に乗じて勢力を拡大し、753年にはチャールキヤ朝の君主を廃して「ラージャーディラージャ（王の中の王）」を称し、デカン地方の支配者となりました。首都は、現在のソーラープルの近く、マーニヤケータ（マールケード）に定められました。
ダンティドゥルガの治世は短く、後継者がいなかったため、叔父のクリシュナ1世が王位を継承しました。クリシュナ1世は、南インドへの軍事遠征を積極的に行い、カーンチープラムのパッラヴァ朝やアーンドラ地方の東チャールキヤ朝を圧迫しました。また、信仰心が厚く、シヴァ神を祀るため、エローラ石窟のカイラーサナータ寺院を建造しました。
クリシュナ1世の死後、息子のゴーヴィンダ2世が即位しましたが、東チャールキヤ朝に敗れるなど不遇が続きました。快楽に溺れたゴーヴィンダ2世は、弟のドゥルヴァによって譲位させられました。
ドゥルヴァは、ラーシュトラクータ朝の偉大な君主の一人です。彼は、領土拡大を目指し、北西インドのプラティーハーラ朝、北東インドのパーラ朝を破り、東チャールキヤ朝やオリッサの西ガンガ朝も攻撃するなど、精力的に軍事活動を行いました。その結果、王朝の版図を大きく拡大しました。ドゥルヴァの息子であるゴーヴィンダ3世も、父の時代から軍事遠征の指揮官として活躍し、800年以降にはプラティーハーラ朝の首都カナウジを陥落させるなど、大規模な軍事行動を展開しました。さらに、南インドのパッラヴァ朝やパーンディヤ朝、ケーララ地方にも進攻し、その支配は一時北インドからインド亜大陸南端のコモリン岬まで及んだとされています。ゴーヴィンダ3世は、軍を遠くスリランカにも遠征させ、その王や宰相を捕虜にして貢納を誓わせるほどでした。
ドゥルヴァとゴーヴィンダ3世の治世は、ラーシュトラクータ朝の最盛期であり、国内には平和が保たれていました。
ゴーヴィンダ3世の死後、息子の アモーガヴァルシャ1世が即位しました。64年にも及ぶ彼の治世は、大きな軍事遠征はあまり行われず、平和が維持されました。マーニヤケータが都として定められたのは、彼の治世だとする説もあります。アモーガヴァルシャ1世は、文芸の保護者としても知られており、彼の治世下では文学が栄え、多くの文学者や詩人が保護されました。アモーガヴァルシャ1世自身もサンスクリット語やカンナダ語で詩を書いています。
アモーガヴァルシャ1世の曾孫であるインドラ3世の時代には、915年から918年にかけての北インド遠征でプラティーハーラ朝を破り、カナウジを破壊しました。しかし、東チャールキヤ朝との戦いでは、決定的な勝利を得ることはできませんでした。
その後、クリシュナ3世は、東チャールキヤ朝との戦いを継続しつつ、勢力を拡大してきた南インドのチョーラ朝との戦いを始めました。949年にはチョーラ王パラーンタカ1世を破り、チョーラ朝の北部を併合しましたが、クリシュナ3世の死後、王朝は衰退に向かいました。
クリシュナ3世の死後、王朝内での内乱や東チャールキヤ朝、チョーラ朝からの攻撃が繰り返され、封臣であったマールワーのパラマーラ朝も反旗を翻しました。972年にはパラマーラ朝が首都マーニヤケータの近くにまで攻めてくるなど、王朝は急速に衰退し、973年に封臣であったチャールキヤ家のタイラ2世によって、最後の王カルカ2世が廃位され、後期チャールキヤ朝が成立しました。
1. ダンテイドゥルガ（Dantidurga, 在位：735年 - 756年）
2. クリシュナ1世（Krishna I, 在位：756年 - 774年）
3. ゴーヴィンダ2世（Govinda II, 在位：774年 - 780年）
4. ドゥルヴァ（Dhruva, 在位：780年 - 793年）
5. ゴーヴィンダ3世（Govinda III, 在位：793年 - 814年）
6. アモーガヴァルシャ1世（Amoghavarsha I, 在位：814年 - 878年）
7. クリシュナ2世（Krishna II, 在位：878年 - 914年）
8. インドラ3世（Indra III, 在位：914 -929年）
9. アモーガヴァルシャ2世（Amoghavarsha II, 在位：929年 - 930年）
10. ゴーヴィンダ4世（Govinda IV, 在位：930年 - 936年）
11. アモーガヴァルシャ3世（Amoghavarsha III, 在位：936年 - 939年）
12. クリシュナ3世（Krishna III, 在位：939年 - 967年）
13. コーッティガ・アモーガヴァルシャ（Khottiga Amoghavarsha, 在位：967年 - 972年）
14. カルカ2世（Karka II, 在位：972年 - 973年）
ラーシュトラクータ朝は、デカン地方を支配した強力な王朝であり、その文化や歴史は、後世のインド社会に大きな影響を与えました。
歴史
ラーシュトラクータ家は、元々ラージプートに属する家系で、前期チャールキヤ朝の封臣として、7世紀前半からベラール地方を治めていました。733年にダンティドゥルガが家督を継ぐと、主家の衰退に乗じて勢力を拡大し、753年にはチャールキヤ朝の君主を廃して「ラージャーディラージャ（王の中の王）」を称し、デカン地方の支配者となりました。首都は、現在のソーラープルの近く、マーニヤケータ（マールケード）に定められました。
ダンティドゥルガの治世は短く、後継者がいなかったため、叔父のクリシュナ1世が王位を継承しました。クリシュナ1世は、南インドへの軍事遠征を積極的に行い、カーンチープラムのパッラヴァ朝やアーンドラ地方の東チャールキヤ朝を圧迫しました。また、信仰心が厚く、シヴァ神を祀るため、エローラ石窟のカイラーサナータ寺院を建造しました。
クリシュナ1世の死後、息子のゴーヴィンダ2世が即位しましたが、東チャールキヤ朝に敗れるなど不遇が続きました。快楽に溺れたゴーヴィンダ2世は、弟のドゥルヴァによって譲位させられました。
ドゥルヴァは、ラーシュトラクータ朝の偉大な君主の一人です。彼は、領土拡大を目指し、北西インドのプラティーハーラ朝、北東インドのパーラ朝を破り、東チャールキヤ朝やオリッサの西ガンガ朝も攻撃するなど、精力的に軍事活動を行いました。その結果、王朝の版図を大きく拡大しました。ドゥルヴァの息子であるゴーヴィンダ3世も、父の時代から軍事遠征の指揮官として活躍し、800年以降にはプラティーハーラ朝の首都カナウジを陥落させるなど、大規模な軍事行動を展開しました。さらに、南インドのパッラヴァ朝やパーンディヤ朝、ケーララ地方にも進攻し、その支配は一時北インドからインド亜大陸南端のコモリン岬まで及んだとされています。ゴーヴィンダ3世は、軍を遠くスリランカにも遠征させ、その王や宰相を捕虜にして貢納を誓わせるほどでした。
ドゥルヴァとゴーヴィンダ3世の治世は、ラーシュトラクータ朝の最盛期であり、国内には平和が保たれていました。
ゴーヴィンダ3世の死後、息子の アモーガヴァルシャ1世が即位しました。64年にも及ぶ彼の治世は、大きな軍事遠征はあまり行われず、平和が維持されました。マーニヤケータが都として定められたのは、彼の治世だとする説もあります。アモーガヴァルシャ1世は、文芸の保護者としても知られており、彼の治世下では文学が栄え、多くの文学者や詩人が保護されました。アモーガヴァルシャ1世自身もサンスクリット語やカンナダ語で詩を書いています。
アモーガヴァルシャ1世の曾孫であるインドラ3世の時代には、915年から918年にかけての北インド遠征でプラティーハーラ朝を破り、カナウジを破壊しました。しかし、東チャールキヤ朝との戦いでは、決定的な勝利を得ることはできませんでした。
その後、クリシュナ3世は、東チャールキヤ朝との戦いを継続しつつ、勢力を拡大してきた南インドのチョーラ朝との戦いを始めました。949年にはチョーラ王パラーンタカ1世を破り、チョーラ朝の北部を併合しましたが、クリシュナ3世の死後、王朝は衰退に向かいました。
クリシュナ3世の死後、王朝内での内乱や東チャールキヤ朝、チョーラ朝からの攻撃が繰り返され、封臣であったマールワーのパラマーラ朝も反旗を翻しました。972年にはパラマーラ朝が首都マーニヤケータの近くにまで攻めてくるなど、王朝は急速に衰退し、973年に封臣であったチャールキヤ家のタイラ2世によって、最後の王カルカ2世が廃位され、後期チャールキヤ朝が成立しました。
歴代君主
1. ダンテイドゥルガ（Dantidurga, 在位：735年 - 756年）
2. クリシュナ1世（Krishna I, 在位：756年 - 774年）
3. ゴーヴィンダ2世（Govinda II, 在位：774年 - 780年）
4. ドゥルヴァ（Dhruva, 在位：780年 - 793年）
5. ゴーヴィンダ3世（Govinda III, 在位：793年 - 814年）
6. アモーガヴァルシャ1世（Amoghavarsha I, 在位：814年 - 878年）
7. クリシュナ2世（Krishna II, 在位：878年 - 914年）
8. インドラ3世（Indra III, 在位：914 -929年）
9. アモーガヴァルシャ2世（Amoghavarsha II, 在位：929年 - 930年）
10. ゴーヴィンダ4世（Govinda IV, 在位：930年 - 936年）
11. アモーガヴァルシャ3世（Amoghavarsha III, 在位：936年 - 939年）
12. クリシュナ3世（Krishna III, 在位：939年 - 967年）
13. コーッティガ・アモーガヴァルシャ（Khottiga Amoghavarsha, 在位：967年 - 972年）
14. カルカ2世（Karka II, 在位：972年 - 973年）
ラーシュトラクータ朝は、デカン地方を支配した強力な王朝であり、その文化や歴史は、後世のインド社会に大きな影響を与えました。
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