ユミ・シャロー

ユミ・シャロー（Yumi Charraut）は、1938年8月1日、東京都港区麻布の鳥居坂で生まれた日本人ファッションデザイナーであり、多才な活動で知られる人物です。本名を高木弓といい、日本の近代史に名を残す高木家の一員として育ちました。父は建築家の高木秀寛、祖父は医学者で貴族院議員を務めた高木喜寛、そして曽祖父は東京慈恵会医科大学の創設者である高木兼寛です。

また、母方の祖母シマは、作家・画家として知られる有島武郎、有島生馬の妹にあたり、同じく作家である里見弴の姉という、白樺派に連なる芸術家一族とも縁を持つ家系です。このような文化的・学術的な環境で育ったユミ・シャローは、学習院幼稚園から田園調布雙葉小学校・中学校・高等学校を経て、女子美術大学油絵科に進学しました。

大学在学中からファッションの世界に足を踏み入れ、セツ・モードセミナーで学びつつ、ファッション誌「装苑」でスタイル画の仕事を手がけるなど、早くからその才能を発揮していました。

1967年、ファッションの中心地であるフランス・パリへ渡り、当時まだ若手であった高田賢三らとともに活動を開始します。フリーランスとして「ELLE」「ジャルダン・デ・モード」といった著名なファッション誌でデザインを手がける傍ら、ファッション・ジャーナリストとしても活躍。その後、デザイン会社レラシオン・テキスタイルでの勤務やスタイリスト経験を経て、1985年には東京ブラウスからレディーストータルブランド『カランドリエ』を立ち上げ、自身の名を冠したデザインを展開しました。

1969年にはフランス人エンジニアのジャン・クロード・シャロー氏と結婚し、以降、日仏を拠点とした活動を続けます。東京ブラウスのパリオフィス設立にも参加するなど、両国の架け橋となる存在でした。ファッションジャーナリストとしても、雑誌「anan」の編集後記「au cafe」、「エル・ジャポン」、「マリ・クレール」など、多くのメディアで健筆をふるいました。

活動分野はファッションデザインに留まらず、1996年以降は、ジュエリーメーカーであるヴァンドーム青山のブランド『VdeB』のイメージアイコンとして、アクセサリーや小物のデザイン監修も手がけるなど、活動の幅を広げていきました。また、チャリティ活動にも積極的に参加し、NHKハート展には他の著名アーティストらと共に絵画作品を提供しています。

第一線でのデザイナーやイラストレーターとしての活動から退いた後も、創作意欲は衰えず、夫とともに欧米各地を旅しながら油絵を描く新たなライフスタイルを確立。画家としては、2010年10月に表参道のGallery80で静物画を中心とした油絵個展を開催し、その才能を披露しました。個展開催に合わせて、女性経営者を対象とした講演活動も行いました。2016年10月には、虎ノ門のギャラリー樋口文庫にて、自身のデザイナー・画家としてのキャリアを集約した絵画とアクセサリーの個展を開催し、長年にわたる創作活動の軌跡を紹介しています。

近年は文筆活動にも力を入れており、自身の経験や哲学に基づいたライフスタイルや生き方に関する著書を多数発表しています。2017年には扶桑社から「パリが教えてくれたボンシックな毎日」、2020年には続編となる「100歳までパリジェンヌ!」を刊行。これらの書籍では、自叙伝的な要素とともに、日々の暮らしを豊かに彩るお洒落の秘訣や、機嫌よく生きるためのヒントが語られています。そして、2025年1月には実業之日本社より「パリの86歳はなぜ、毎日が楽しそうなのか」が刊行予定。パリでの長年の生活で培われた、フランス人のマイペースさと日本人の気配りを融合させた独自の視点から、幸せに生きる秘訣が紹介されると期待されています。

ユミ・シャローは、ファッションデザイナーとして成功を収める傍ら、ジャーナリスト、画家、文筆家としても才能を発揮し、常に新しい表現を追求し続けています。日仏両国の文化を肌で感じてきた彼女の生き方や美意識は、多くの人々に影響を与えています。著作には「粋なおしゃれ」（じゃこめてい出版、1990年）や、ソニア・リキエル著『ラ・コレクション』（マガジンハウス、1990年）の翻訳などもあります。多岐にわたる分野で活躍し続けるユミ・シャローは、まさに「ボンシック」な生き方を体現する存在と言えるでしょう。

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