ユリア水道

ユリア水道（アクア・ユリア）は、古代ローマ時代に建設された水道（ローマ水道）の一つです。この水道は、ローマ帝国の指導者マルクス・ウィプサニウス・アグリッパによって紀元前33年に建造されました。その後、初代ローマ皇帝アウグストゥス帝の治世である紀元前11年から紀元前4年にかけて、改築および拡張工事が施され、その機能と規模が強化されました。

この水道の水源は、古代ローマの主要幹線道路であるラテン街道のローマからの10マイル標石地点から、さらに右手に約2マイル（約3.2キロメートル）進んだ地点、現在のイタリアのグロッタフェッラータ近郊に位置していました。水源からローマ市内までの総延長は約22.8キロメートル（古代ローマの単位で15.4265ローマ・マイル）に及びます。

紀元1世紀末にローマ水道長官を務め、ローマ水道に関する詳細な技術書を著したセクストゥス・ユリウス・フロンティヌスの記録によると、ユリア水道の給水能力は一日あたり約48,240立方メートル（古代の単位で1,206クイナリア）に達しました。この膨大な水量は、当時のローマ市民の生活を支える上で極めて重要でした。

ユリア水道の構造的な特徴として、その総延長のうち約10.4キロメートル（7.000ローマ・マイル）が地上部分の導水渠として建設されていた点が挙げられます。特に、ローマから約7ローマ・マイルの地点からは、ほぼ全区間が地上へと姿を現しました。この地上部分のうち、約0.78キロメートル（0.528ローマ・マイル）は構築物内を通る導水渠として、残りの約9.6キロメートル（6.472ローマ・マイル）は壮大な水道橋の上部を流れる形で建設されていました。

ローマ市内への水の供給にあたっては、ユリア水道は特徴的な形で引き込まれました。既に存在していたマルキア水道およびテプラ水道の上に、新たな層としてユリア水道の導水渠が設けられ、三層構造となった巨大な水道橋を経由しました。この複合水道橋は、現在のマッジョーレ門付近にあたるティブルティーナ門まで達し、そこでユリア水道を含む各水道は最終的な配水施設（カステルム・アクアエ）へと分岐し、市内の各所に水を供給しました。

現在、ローマ市内のヴィットーリオ・エマヌエーレ2世広場近くにあるピアッツァ・グリエルモ・ペペには、かつてユリア水道のものと考えられていた配水池へ続く水道橋の一部が残っています。しかし、この遺構の導水渠の高さ（マッジョーレ門地点で約63.739メートルと推定される）が、フロンティヌスなどの記録に基づくユリア水道本来の高さ（同地点で約57.38メートル）と一致しないことがその後の調査で判明しました。この高さの矛盾から、現在ではこの配水池および関連する水道橋は、後代に建設されたクラウディア水道または新アニオ水道の一部であった可能性が高いと考えられています。真のユリア水道の遺構は、他の場所に見られる可能性があります。

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